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ユウ王戦記 ~三妃 七竜 十三宝 を揃えて異世界で王になるまで~  作者: しいか
第2章 神楽月(カグヅキ)内乱編

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戦記24「一夜明け」

 このシリーズの投稿をはじめてから、ひと月ほどが経ちました。

 季節は移ろい、物語も進んでいくというのに、作者の毎日は相変わらずかあわりばえなく、今日も部屋の中でパソコンの前にいる日々。

 たまには妄想でない異世界の住人が隣で寝てるぐらいの変化があってもいいじゃないと思いながら、一夜明けたあとのお話をどうぞ。

戦記24「一夜明け」


 翌朝、目が覚めると日はすでに頂点に近づこうとしており、隣で寝ていたはずのイン竜の姿もなかった。

 代わりに…というわけではないが、部屋の中には昨日はなかった荷物がいくつか…おそらくはボウが集めてきた道具やら何やらが置かれていた。

 いつもの事といえばいつものことだが、随分と寝ていたらしい。しかも、ボウが入ってきたのも気づかないほどに。


(―やるべきことがあるってのに、なんだかね?)


 反省しつつベッドから抜け出て、階下へと降りていくと、すぐ目に入るテーブルに、舞姫、ボウ、イン竜の三人が固まって食事を摂りつつ何やら話をしていた。

 少々ばつの悪い思いをしながらそちらに近寄ると、ほぼ三人同時にこちらに気づいた。


「ユウ竜様…」


 非難を受ける覚悟で近づいた俺に、しかし奇妙な気遣いを見せる舞姫…なお、ボウはいつもの冷たい目で、イン竜はハリボテ笑顔だ。一瞬、あの程度で寝過ごすなんてだらしない、というような笑みを見た気がしないでもないが気のせいだと思おう。昼のイン竜と夜のイン竜は別人だと解釈する。


「寝過ごしたすまない」

「いえ、こちらこそ事情も知らず勝手なお願い、申し訳ありません!」


 近寄り切る前に、あちらから駆け寄り深々と頭を下げ、謝意を表す舞姫。

 なにが? と思ったオレに、姫は教えてくれた。


「昨晩、ボウ様から聞きました…ドラゴニアでのこと」


 ボウを見ると、僅かに頷いた。隣でイン竜も同じく頷いている。

 姫様がいうには、イン竜が『どうしてユウ竜がドラゴニアの竜を辞めたのか』をボウに確認しているところに出くわし、そのままボウに事の次第を尋ねたのだという。

 というか、たぶん、そうなるように仕向けたんだろうな、イン竜が。

 で、舞姫に捕まったボウは姫に尋ねられるまま答えられることを答え、

 お付のいなくなったオレを狙ったイン竜が部屋にやってきたと。

 昨日のノックも、どうやらその話をしたくてのものだったらしい。だが寝てた(寝てないけど)ので翌朝にと思って、今に至る、と。


「そんなことになっていたと知らなかったとはいえ、死地を脱したばかりの体に鞭打つようなこと…」


 姫の言葉から察するに、ボウが説明したのはせいぜいがドラゴニアで謀反が起きて、他の竜と共闘しながら脱出してきたが、いろいろあって別れた…程度のことだろう。それ以上のこと…例えば剣姫様とのことなどいう必要もない。


「大丈夫。逃げてる間に治療はすませてあったし、きにするほどのことじゃない」

「でも…」

「こうしてゆっくり寝かせて貰えたし、死地をうんぬんというなら、姫さんだってそうでしょう?」

「わ、わたしは大丈夫です!」

「じゃぁ、俺も大丈夫だ」


 姫は「むぅ」と唸ったが、何を言ったところで堂々巡りになると察したのか、溜息にも似た深呼吸をすると、ぎこちなく微笑んで、テーブルへと招待してくれた。

 三人にとって遅い朝食なのか、早い昼食なのかわからないが、テーブルの上に取り分けられるように置かれていたパンやチーズなどを俺も頂くとする。

 てか、俺としては叶ったりなのだが、オレやボウが姫様と同席していいものなのかね? 昨日の会議にしたって幹部連中と思わしき奴らと同格の扱いだったし、他の兵に不満はないのだろうか? そんなこと言ってられないくらい状況がひっ迫してるせいと解釈しといてよいのだろうか?

 にしては妙にフレンドリーだったり、熱い視線を投げてくる奴もいるのだが、これも姫の窮地を救った英雄効果のようなものなのだろうか?


「お、お水をどうぞでございます!」


 名前も分からなぬ青年がコップに水を注いで持って来てくれた。その声と眼差しからすると、けして嫌われているわけではないと思うが、なみなみ過ぎて今にもこぼれそうなコップを、がくがくと震える手で持つせいで、びちゃびちゃと俺に水がかかってるあたり、実は嫌がらせの線も捨てきれない。


「ありがとう」


 礼をいって体積の減った水を受け取ると、青年は小走りに去っていき、数人の友達? 仲間? の兵に迎え入れられ、背中を叩かれ、『おつかれさん!』『怖かったねー』『がんばったね!』などと、スポーツマンガの一場面のようなやり取りをしていた。

 俺に水を渡す選手権があるのだとしたら、青年、君のおかげでズボンが濡れて微妙に汚らしいまだらになったことは忘れない。


「それで、これからの予定は?」


 気を取り直しパンを千切りながら尋ねると、ボウがメモをテーブルの上に載せながら、説明してくれた。

 そこには大まかに、チーム舞姫の取るべき行動がまとめられていた。おそらく、俺が起きてくるまでに話し合われたものだろう。昨日の会議で出た方針に関する具体策が書かれていた。


「まずは、ペンシルグラードへの仲裁願にいくそうです」

「ペンシルグラードに?」


 俺の疑問…というよりはどうしてそんな無駄なこと? というニュアンスを察し、イン竜がいう。


「元々はですねー、ユウ竜様を頼ってドラゴニアに行くつもりだったのです」

「俺に?」

「まー、非公式とはいえ力のある許嫁ですしね? ところが実際に会うと、竜を辞めていらしたということで、国レベルでの後ろ盾は望めなくなってしまったので、ダメ元でペンシルグラードに頼ってみようかなと」

「そら申し訳ない」

「い、い、いえ、けして残念とかではなく、その、むしろ、ユウ竜様だけでもご助力頂けて、心強いというかなんというか…あ、もちろんボウ様も!」

「私はユウ様の付属物のようなものですから、気遣いは無用です」

「いいえ、滅相もありません! ユウ竜様もボウ様も、どれだけのお方か、会議の場だけでもわかりました」


 まぁ、本心なんだろう。実際俺がドラゴニアで竜をやっていたとしても、同盟国でもなんでもない神楽月にできることなどたかがしれいている。それこそ俺個人でできる範囲のことしかできないだろう…

 そういう意味では、今とあんまりかわらないのかもしれない。いや、むしろドラゴニア所属が枷になる局面もあったかもしれない。

 昨晩のイン竜との会話ではないが、個人と所属の問題はやはり根が深い。


「とはいえ、なんでペンシルグラード? あそこが、外国内の揉め事には介入しないのは知ってるだろう?」


 永世中立国…中立故に、他国に対して侵略や必要以上の介入は行わないという宣言だ。同盟国が、敵国から侵略行動を受ければ軍を派遣することもあるが、ペンシルグラードが同盟を結んでいる国同士での戦いや、謀反をはじめとする他国内の問題に対して軍事行動をとることはまずありえない。


「鈴星の侵略…という体で話を聞いて貰えないかと思ったのですが…」

「難しいだろうな。神楽月に合併を望む勢力がいるなら、それは国内の問題として捉えるだろう」

「で、ですよね…」

「それに、ペンシルグラードまでどうやっていくつもりなんだ?」


 ペンシルグラードと神楽月自体は比較的近い。少なくともドラゴニアに比べれば。が、問題は今いるこの町だ。この町があるのは、神楽月から見て南東…対してペンシルグラードは、神楽月から見て北西…つまり、神楽月を挟んでちょうど反対側にあることになる。

 最速で向かうなら今や敵地となった神楽月を通るという危険があり、迂回しようとすると時間がかかる。往復しようと思えばなおのことだ。


「それがですねー、実は近くの町にペンシルグラードの騎士団が遠征にきているのですよ」


 イン竜が地図を広げ、この町の上の方…距離でいえば一日も離れていないところにある街を指していう。


「ボウ」

「はい、間違いないようです。ドラゴニア内乱の報を受け、視察と新体制の同盟維持の確認に向かった一団だと思います。おそらく手前の街で駐留しているのは、情報収集と休息が目的でしょう」

「相変わらず行動が早い国だな…」

「さ、さすが七大国ですね…」

「騎士団さまさまってところか」


 ペンシルグラードが永世中立国でいられる地形以外の立役者、それが騎士団。自国の民全ての中から選ばれた兵士達が更にしのぎを削って辿りつく、騎士の称号にいる者たちの一団だ。


「お話ではよく出てきますけど、実際お会いしたいことはありませんが…ユウ竜様はお会いになられらことが?」

「ある。というか、手合せというか、合同演習に参加したりもした」


 それ以降、最大の特徴を述べろと言われたら、こう言うことにしている。

 『強い』。

 他国にいけば竜とはいかずとも将軍ならすぐにでも、というレベルの者がごろごろいるのが騎士団だ。そんな騎士団を擁する国が永世中立国を謳い、大陸のど真ん中にいるおかげで東西の大国が戦争しあうことは避けられている面もあるほどだ。

 東から西に、西から東へ大軍を送り込もうとすればペンシルグラードを通るしかないが、反対側の同盟国達が一斉に反対を唱えるので通れるはずもない。反対国諸共ペンシルグラードを潰そうと試みて返り討ちにあった国は歴史に名を記し、おまけにこの世から消えてきた。

 じゃぁペンシルグラードを通らずいけばいいではないかとなるが、南北に走る山脈…北は雪山、南は活火山という連峰を越えて戦争できるほど生き物は頑丈にできていない。


「さて、ここで問題。そんな騎士団ですが、実はちょっとした弱点があります。それはなんでしょう?」

「え、えぇ!?」

「ほらほら、答えて答えて」

「えーと、えぇー…お腹が空きやすい?」

「…どうしてそういう答えになったのですか?」

「え、えーと、強い人ってたくさん動いたり、体が大きかったりするので、おなかすきやすいかなーと」


 どうしよう、正解か不正解か判断しきれない回答がきた。しかも一応理由もあった。


「ボウ」

「はい、今度調べておきます」


 疑問を持つのは良いことだし、型にはまらない答えにも価値がある。

 本当に騎士団が大飯ぐらいの集まりだったら、その情報が何かに使えるときだってあるかもしれない。


「でもまぁ、今は一般的にいわれている騎士団の弱点を教えましょうね」

「お、お願いします」

「騎士団の弱点、それは、人数が少ないこと、です」

「…あ」


 あえて理由はいわなかったのだが、姫様はちゃんと理由に思い立ったらしい。


「選んでるからですか?」

「正解」


 そう、選び抜いた兵士の中からさらに選りすぐっているのだから当たり前だが、致命的といえば致命的な弱点である。守るには十分だが、攻めるには足りぬといった感じ。実際、過去の歴史を振り返っても、ペンシルグラードが反撃で他国を滅ぼした時、必ず同盟国から少なくない兵が派遣されている。

 そんな騎士団の、しかも視察団…ただでさえ少ない人数から更に数人選んで送りこんでいるわけで、そもそも手伝ってくれるか分からないが、手伝ってくれたとしても数人か多くて十数人だろう。そんな人数でできることなんてせいぜいが…


「あー…戦力ではなく仲裁役を狙ってるのか?」

「え?」


 目を丸く開き、きょとんとする舞姫。


「違うの?」

「いや、そーですよ。ユウ竜様正解」


 イン竜とボウの様子を見るに、元々イン竜のアイディアだったのだろう。

 斥候…スカウトや情報収拾が主任務といっていたし、そのあたりの政治的な判断ができるのはまぁ確かにイン竜の職業柄といえなくもない。ボウも同じような仕事を任せていることもあり、この二人の間では特に説明もいらず、納得いってたのだろう。

 一方舞姫は、素直に増援を引き受けてくれると思っていた…と。


「よいかね、舞姫さんや」


 なぜか老人口調になりつつ舞姫の名を呼ぶと、姫が背筋をピンと伸ばしてこちらを見た。


「ペンシルグラードは、外国内で起きた軍事的争いに、基本的には介入しない。それが国の方針だから。だけど、例えば災害救助や、和平交渉の仲介役、停戦条約の執行人など、平和活動に関しては騎士団を派遣することもあるのは知ってる?」

「は、い。知ってます」

「だからイン竜とボウの…インボウコンビが頼もうとしてるのは、戦争の後の話」

「後…ですか?」


 まったくピンときていない舞姫の純粋すぎる表情を見るのがいろんな意味で辛く、イン竜にじと眼を送る。

 イン竜がウィンクして返してくる。

 お前と姫のあり方はそれでよいのかと小一時間ほど問い詰めてやりたい。あとリン王。


「あのね、戦争に勝っただけで全てが終わるのは、物語の中だけ。戦争で勝って国を取り戻しても、まだやることはたくさんあるの」


 姫は慌てながらも、熱心に耳を傾けてくれた。

 賠償、

 人事、

 喧伝、

 法制、

 今回は場合によっては、王位継承も…


「そういった諸々を円滑に行うためにも、この戦争はどちらが悪いとか、どちらが勝ったとか、お詫びとして誰が何をするとか、負けた側が腹いせに行う略奪行為を止めるだとかをしなくちゃいけないのね?」

「その部分をお願いする…んですか?」

「そ。正確には、その監視役。戦争そのものは自分達で決着をつける。その後の交渉の場に立ち会って貰う。立ち会ったということはそこでした約束はウソではないという証になり、後々問題になるようなら、ペンシルグラードがそれを証明してくれる…だけなら、やってくれる可能性はなくもない」


 そうすることで、ペンシルグラードは他国にとって重要な国であり続け、いくつもの証拠を握られている頭の上がらない国としていることができる。


「地形、軍事力、そして政治力…いくつもの力を高めることで、ペンシルグラードは永世中立国で居続けることができてるというわけでした」


 とはいっても普通なら、来てくれるかもしれないレベルの話だ。

 視察目的の一隊が、本国の了解もなく仲裁役を引き受けてくれる可能性は、本来限りなく低い。が、ボウが行動を止めなかったということは、本来と違い、引き受けてくれる可能性が高いということで…


「筆姫様が直接出て来てるのか?」

「御明察です」


 お読みいただき、ありがとうございました。

 そろそろ新キャラ達がアップをはじめました。

 次々回あたりから出てくるでしょうか…あなたのお気に入りがみつかってくれれば幸い。

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