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ユウ王戦記 ~三妃 七竜 十三宝 を揃えて異世界で王になるまで~  作者: しいか
第2章 神楽月(カグヅキ)内乱編

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戦記23「大人の夜遊び」

 大人の夜遊びっていう単語にドキドキしつつ、こんな内容で大丈夫かの方がよりドキドキで壊れそう1000パーセント、アーユーレディ?

戦記23「大人の夜遊び」


 大人の夜遊びと…聞き間違いでなく、イン竜はそう言った。

 聞き間違いでない上に、タオル一枚の湯上り姿で馬乗りにされているのだから、まぁ、夜のスポーツとか、夜のコミュニケーションとか、夜の営みとか、そういう類のもので間違いはなかろう。どうでもいいが、夜のってつけるだけで、卑猥な印象を受けるよね?

 夜の舞姫、夜のボウ、夜の物語、夜の変態。

 類義語に、大人の、もある。


「何か、どーでもいーこと考えてませんか?」

「いやいや、至極文学的なことだよ、イン竜君」

「おー、最初から先生生徒設定だなんて、遊び慣れてますねユウ竜先生」

「や、そういうんじゃないから。設定とかの話じゃなくてだね?」

「設定ーじゃない…あ! 学生服来てこいってことですか!」


 違うよ。なんでこの子『閃いた!』みたいな顔してるの?


「ごめんなさい、お城に戻ればあるのですが」


 あるのかよ。


「ちなみに、どこ仕様の学生服?」


 つい食いついてしまう自分。


「えーと、ニューワールド産のブレイザー?」


 普通に答えたし。ちなみにブレザーな、なんだよブレイザーて。強そう。


「あと、晴嵐でしたっけ?」


 セーラーな、てかわざとやってるでしょ、イン竜さん?


「を、10着ずつ」

「多い!」


 合計二十着って、二日に一度使っても―月余裕じゃないですか。


「でも使うと汚れるから、洗濯を頼むでしょ? 妙な作りのせいで洗濯時間かかるから、その間に必要になったら困るでしょう?」


 どうして汚れるのかはあえて聞かないけど、その汚れ洗濯する人って、手洗いでしょ? 洗濯職人がどんな気持ちでそれ洗ってるか考えると、すごく申し訳ない気持ちになる。


「あとかわいーですしね。柄違いで選んだらそれぐらいになっちゃいました」

「まー、デザイン違うだけで、印象もかわるけどね?」

「ですよねー? 異世界人の性に対する探究心ってすごいなって思いました」

「一応言っておくけど、学生服は帰属意識や服飾業者の利権を守るためにあるもので、性のために開発されたわけじゃないからね?」

「またまたー、ユウ竜先生は冗談ばっかりー」


 おい、俺より先に来てた異世界人達、とんでもない誤解が生まれるような文化を迂闊に持ち込んだまま放置するな。


「というわけで、お城取り戻してくれたら、十着でも三十着でも汚していいので、今日は今日で、ね?」

「なぁ、今十着増えてたけど、どこからもってきた?」

「一日一回汚したら、三十は必要だなって思いまして、でも学生服ばかりだと飽きるかなという配慮から、王族衣装とかメイド服とか、なんか貝殻とか、いろいろ集めてみました」


 自慢げに胸をそらすな、揺らすな、ボウが見たら泣くぞ。

 そしてなぜ自慢げなのか、誰か俺に解説して欲しい。

 ごめん、いらない。


「で、ユウ竜様」

「なんだい、イン竜さん」

「どうして、さっきから抵抗していらっしゃるので?」


 舞姫やボウに比べれば背丈のあるイン竜だが、体形だけでみれば俺に分があるはずなのに、両脇から腿で挟むように抑えられた胴体も、手首を抑えられるようにされた腕も、解くことはおろかずらすことすらできずにいる。

 疲労が溜まってるにしても、おかしい。


「あー、ダークエルフはですね、ピュアエルフ…一般的にエルフって呼ばれてる種族と違って、たぶん、魔力を練るためのエネルギーを身体能力向上に使用しているせいで、見た目よりも力があるんですよ」


 仮にホウ竜のあの魔力が全部身体能力向上に使われたと想像すると、今の俺程度ではびくともしないのも納得できなくもない。


「御講釈ありがとう、イン竜先生」

「あー…私が先生役でしたか。そうならそうっていってくれればよかったのに、ユウ竜君」

「いっておけば、白衣でもきてくれたの?」

「あ、それは持ってないです」


 ないのかよ。なんで学生服もってて、白衣ないんだよ。カイ竜から貰ってきてあげるから、コレクションに加えておきなさい。あとメガネ。


「で、どうして抵抗していらっしゃるので? こーゆー行為、嫌いじゃないんでしょう?」

「嫌いか好きかでいえば、好きだ」

「んー…積極的に過ぎる女子はお嫌いですか?」

「消極的な子を半ば無理やりいくのも、積極的な子と納得づくにいくのも、どちらも選び難い良さがある」

「いやー、噂には聞いてましたけど、ほんと節操ないですね。いい意味で」


 いい意味で節操がないって初めて聞いた。


「じゃ、いたしましょうか」


 そういってイン竜がこちらに顔を近づけてくる。

 あと僅かに身を任せれば、唇が触れただろう。

 それを、力づくで止める。

 ただし、腕力ではなく、能力で。


「ストップ」


 俺の発言にではなく、右手の平から角度をつけて呼び出した剣を目の前に差し込まれ、イン竜が動きを止めた。

 その反応の速さと鋭さはすさまじく、一瞬その気がないのは分かっていながら寒気を覚えるほどだった。


「…部屋の中にないなーと思っていたのですが、なるほど。姫様のおしゃっていた意味がわかりました」


 おそらくは森の中で、俺が剣を取り出したことをいっているのだろう。

 始終付けているハリボテのような笑顔を相変わらず張り付けたまま、イン竜が俺の右手と視線を凝視している。


「物質を呼び寄せる能力でしょーか?」

「いーや、格納能力だ」


 一度剣を仕舞い、再び取り出す。


「…これもいけますか?」


 自分がまとってきたバスタオルをこちらへと放り投げてくるイン竜。

 右手を伸ばしてそれを掴むと同時にしまい、すぐさま出してイン竜の頭に被せる。


「ご覧のとおり、限度はあるが、触れた物を出し入れできる」

「限度…とは?」

「正直、よくわからん」


 一応、目安のようなものは把握している。

 が、あくまで目安であり、思っていたよりもしまえる時もあれば、ダメな時もある。


「ご自分の能力なのに?」

「じゃぁお前は、ダークエルフの身体能力上昇の原理を全て解説できると?」


 イン竜は小さく笑うと、腿と手の力を抜き、俺にではなくベッドに腰掛けなおした。

 合わせてこちらも体を起こす。


「で、確認は済んだのか?」

「はーい、もう大丈夫です」

「確認したいことがあるなら、あるって言えば協力するから、する気もない夜の誘いをかけてくるな」

「あらら…怒らせちゃいましたか?」

「怒ってはいないが、面白くはない」

「だからといって、剣を突き付けたりしますか、ふつー?」

「確認で殺されかけちゃたまらない。さっさと、口の中に入れてるもの吐き出せ」

「…ばれてました?」

「あれだけ話してればな」


 イン竜は、口の中をもごもごと動かすと、舌をこちらに突き出して見せた。そこに乗っていたのは、小さな丸薬。大きさは、イクラの一粒程度だろうか? 白い球体が、赤い舌の上でころころと踊っている。


「なんの毒だ?」


 尋ねると、イン竜は目だけで笑うと、その丸薬を飲み込んだ。


「…内緒です」


 そしてベッドの上に倒れる。

 俺は突然倒れたイン竜を茫然と見下ろし…


「聞きたいことがあるんだが、もう聞いていいか? それとももうちょっと茶番に付き合った方がいいのか?」


 そう吐き捨てると、イン竜が上半身の筋力だけでぬそっと起き上がって見せた。

 そして例のハリボテ笑顔をこちらに向ける…が、僅かに…といっても意図的にだろうが、そのハリボテの綻びから人の悪さを溢れ出せるイン竜。


「なるほど、そっちが素のお前の顔か」

「こっちもあっちも私の顔ですよ。あなた同じ。それで、何を聞きたいのですか?」

「確認内容ってのは?」

「いくつかありますが、一番は私がアナタを殺せるかどうかですねー」

「普通、そういう言いにくいことをさらっというか?」

「まぁ、普通じゃないですから、しょーがないです」

「はいはい。で、殺せそうか?」


 質問に正直に答えるためか、数秒の沈黙を使うイン竜。

 シュミレーションでもしてるのだろう。ただ待つだけは暇なので、俺も考えてみる。

 そして互いが出した答えはというと、


「…正直難しいですね。でも、死ぬ気でやれば殺せると思いましたよ」

「奇遇だな、俺も差し違え前提なら殺される自信がある」

「私達、意外と気が合うかもしれないですね」

「で、殺すの?」

「はい、必要があれば」


 落ちたバスタオルを巻きつけながら、しかしまだ部屋から出ていく気はないらしい…こちらに背を向ける形で、窓を開けて夜風を部屋に呼び入れるイン竜。

 赤い髪がはらはらと踊り、火の粉のようなか細い、だが目を引く存在感を示す。


「…ユウ竜様は」


 声色は変わらない。

 ただ、昼間までのイン竜とは違うイン竜であろう女が、語る。


「舞姫様のこと、利用なさろーしていらっしゃいますよね」

「乱暴にいうなら、そーなるな」

「普通ここは『そんなことない。ほとばしる正義の為である』とかゆーところではないでしょーか?」

「じゃぁ、残念ながら俺も普通じゃないってことだろ」


 あてつけですか、と僅かに下を向き、再び顔を窓に向けるイン竜。


「姫様は王族ですからね。望む望まぬに関わらず、国益の為にどこかに嫁ぐのが定めでした」


 『誰か』ではなく『どこか』というあたりに、王族に生まれた者の定めをより一層感じる。

 何者かよりも、その者がどこに属するか…どんな影響力や支持者を持つかのほうが大事であるということ。


「そーなるはずの姫様の定めや考えを、アナタは変えてしまったし、今まさにそうしよーとしている」


 幼い頃から教えられてきたのだろう。いつかは、国の為どこかの誰かに嫁ぐのだと。

 それが変わったのは、ペンシルグラードでの合同会議で、俺がリン王と会ったから。

 リン王が姫に、『どこかの誰か』ではなく、『どこにいてもユウ竜』に嫁がせると…どこかの誰かではなく、個人に嫁がせるという考えを植え付けてしまった。

 

「どこかではなく、誰かと結婚しても構わないと知ってしまった姫様は、個人に興味を持ちました。おかげで、それなりに辛い恋愛をなされました。なにせ誰かの枠には、すでにアナタが…会ったこともないあなたが先約で入っていましたからねー」

「だから、諦めざるを得ない、と」

「そーです。本当に現れるのかどうかもわからないのに約束だけはさせられて、しかも」

「しかも姫の為でも国の為ではなく、リン王と俺の為に約束させられて、か」


 僅かに…特徴的な耳と片方の目だけが見える程度にこちらを振り返り、またすぐに窓の外へと目を向けるイン竜。


「今日森で出会うよりも前…国交もないドラゴニアの、この世界の人間ですらなかった男がどんな人か、調べさせて頂きました」

「調べた感想は?」

「会わずに理解できる種類の相手ではない…ですかね?」

「じゃ、実際に会ってみてのご感想は?」

「会うと尚更分からなくなる相手…ですかね?」


 イン竜がこちらを向く。

 夜風に冷えて縮んだのか、単に風に舞う髪のせいか、長い耳が小さく見える。


「常に心ここに在らずかと思いきや、急に鋭く切り込んで来たり、あげるといった大好物に手を出さなかったり、大きな罠にはかからないくせに、割と細かいものにははまったり…正直、理屈や理性で把握するのは…私には判断しきれません」

「いやいや、付き合ってみれば意外と分かり易い性格ですよ、自分でいうのもなんだけど」


 言いながらイン竜に近寄り、窓を閉める。

 風に遊ばれていた髪はあるべき流れに沿って頬に、耳にかかる。


「私は、姫様を信じることにします」


 隣から、柔らかくも芯のある声がする。


「姫様は私と違う目で、人や物をみます。そしてそれは正しいと思ってます」

「だから舞姫を信じると」

「そーです」

「…イン竜も、姫様に選ばれた口なわけね?」


 イン竜を見ると、にこやかに…ハリボテではなく、無表情に近い笑みを浮かべた。透き通った朝日のようなそれではなく、染み渡った夜のような笑み。

 光を従えて進む姫のため、闇を集めて付き従うことを決めた女の笑み。

 俺とボウのそれとはまた違う、主人と従者の関係を持つ女の笑み。


「姫様が認め受け入れるなら、私もあなたを認め受け入れます。だから、姫様を裏切らないでください。姫様を…姫様の愛する神楽月を見捨てないでください」


 さて、なんというべきか…

 冗談のように言うか、まじめくさっていうか、それとも…

 なんというべきか数瞬悩み、そして


「姫も国も国宝も見捨てない。欲しいものは、貰ってく」


 そう、言い切った。


「…欲張りな王ですね」

「まだ王じゃない」

「欲張りな竜ですか?」

「今は竜でもないんだなーこれが」

「じゃー」


 とイン竜はわずかに悩むそぶりをしてから、


「欲張りな男の子ですね?」

「そこは、欲張りな男でよくないか?」


 そして、イン竜をベッドに引き倒す。

 バスタオルの結び目がほどけ、白の布地の上に、イン竜の深い肌の色が乗る。

 ランプが作った俺の影がイン竜に乗る。

 イン竜の肌が濃く濃く陰り、刻々と時計の針の音がする。


「あー…えーっと、この流れで? さすがの私もちょっと驚きを隠せないのですけど?」

「どの流れも何も最初の流れに戻っただけだし、さっき欲しいものは貰ってくといっただろ」

「…その中に自分が入ってるとはしょーしょー、意外」

「なぜ?」

「私のよーな女はお嫌いかと思ってたもので」

「昼間まではな」

「今は違うと?」

「イヤだというなら無理強いはしない」

「そういいながら、すでに右手が動き始めてるのは、私のきのせーでしょうか?」

「これも言ったと思うが、なし崩し的に致すのも嫌いじゃない」


 ダメだコイツと、いうニュアンスの溜息をつくイン竜。

 そこに、コンコン、と控えめなノックが入る。

 扉の向こうから、くぐもった「あの」という、舞姫の声がする。

 そして再度ノック、そして遠ざかる足音。

 その音が聞こえなくなるのを待ってから、俺とイン竜は顔を見合わせ、そしてほぼ同時に息を吐いた。


「…満足させる自身はおありですか、ユーリュー君?」

「そんなものは相性次第だから、なんともいえんね、インリューさん」

「下手に『ある』っていわれるのも嫌だなーと思ってましたけど、そのセリフはそれ以上に腹立たしーですね」

「話ながらするのがお好きで?」

「…姫様に聞かれるのは避けたいので、お静かにお願いしますね、節操なしさん」


 『お前だって、そーゆーやつじゃないか』という目で顔を近づけ、

 『ばれなきゃいーんですよ』という目で迎え入れられ、

 そして夜は更け、

 そして翌日、全身のだるさに、夜遊びもほどほどにするべきかと若干反省するに至る俺とイン竜であった。

 なお、どちらが先生で生徒ということはなかったと追記しておく。

 あと、シーツごめんなさい。

 お読みいただきありがとうございました。

 このレベルのシチュエーションをいれるトップバッターが、剣姫でも舞姫でもボウでもヨウでもカイでもなく、インになるとは思ってもみませんでした。

 まぁ、これぐらいの描写ならきっと年齢制限的には大丈夫…ですよね? 『 T 〇 L 〇 V E る(一部伏字)』の方がひゃっはーしてますし…大丈夫だといいなと思いつつ、次回に続きます。



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