↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ユウ王戦記 ~三妃 七竜 十三宝 を揃えて異世界で王になるまで~  作者: しいか
第2章 神楽月(カグヅキ)内乱編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/104

戦記22「状況整理」

 最後に衝撃的展開が!(よくある煽り)

戦記22「状況整理」


 森から離れ…といっても、離れたところで緑豊かなことになんら変わりなかったが、ひとまず俺達はとある町へと辿りついた。神楽月とも鈴星とも交流を持ち、中立を表明している国に属する町だ。

 到着したころはまだぎりぎり太陽が顔をのぞかせいてが、今は完全に月が浮かんでいる。

 その間休憩していたのかというとそうではなく、俺、ボウ、舞姫、イン竜…そしてイン竜の部下達を中心とした、舞姫グループ…正統派閥とでもいうのだろうか…堅苦しいので、チーム舞姫と呼ぶとする、による作戦会議というか現状把握の会が開かれた。

 開催地は、チーム舞姫が借り切った、町の中でも比較的小さな宿屋の一角。

 当初『誰だコイツは?』という視線が俺とボウに突き刺さる非常に居心地の悪い場所であったが、舞姫とイン竜が森での一件を話すと、途端に表情が変わり快く迎えてくれた。

 歓迎してくれること自体は喜ばしいのだが、その理由をひも解くと、少々印象が変わる。どういうことかというと、俺とボウの協力ぐらいしか、明るい話題がなかったのだ。


「密偵との連絡、つかなくなりました」

「態度保留だった将軍数名、ロウ竜様支持を表明しました」

「周辺三国より、助力拒否の報告が入りました」


 新しい情報が出るたびに意気消沈していくチーム舞姫は、俺ですら痛々しく思うほどで、責任者たる舞姫たちがどれほどの重みに耐えているのか、想像するのもはばかれるほどだった。

 なにせ、例のソウ竜なる男が助力を求めて未だ駆けずり回っているのが希望に思えてくるほど。


(ま、この状況から察するに、それもうまくいってるとは思えないが…)


 なお、いずれにしろソウ竜の合流はもう少し後になるらしい。

 そして日はいつの間にか沈み切り、やがて会議に沈黙が横たわった。


「とりあえず一度ご飯にしましょう! 私、お腹空きました!」


 沈黙を払うべく、明らかな空元気でそういい、舞姫は細くなっているはずの食を無理やり開いてみせた。

 こんな状況にも関わらず付いてきた者達だけあり、姫の姿に涙するものまで出ながらも食事につくと、その後は疲れや緊張のせいか、会議はそのままお開きとなった。

 結果として、姫の空元気と食事の提案は正解だったといえる。無駄にお通夜状態を続けるよりは、休める時に休む方が建設的だ。


「二人一部屋で申ーしわけないのですが、ユウ竜様とボウさんは、こちらの部屋をお使いください」


 食事の後、イン竜はいくつかある個室に案内してくれた。

 そして自身は、何事か用事があるとかでどこかへと移動していった。その際ボウを連れ立って行ったことから察するに、何事かの情報を得たいか、従者同士で必要な相談事でもあるのだろう。


「大丈夫か?」

「おきにせず。ユウ様は先にお休みください」


 ボウとて疲れてないはずがない。ただでさえ、基本的には働き者なのだ。

 だがまぁ、その分きちんと自分の限界は弁えているはず。本人がいいといってるなら、甘えるとしよう。


「わかった。ベッドは半分開けて待ってる」

「いりません。埋め尽くしてください、床で寝ます」


 いつもより若干トーンが厳しいのは、やはり疲れているからなのだろう。

 苛立たせるのもどうかと思い、会話もそこそこに部屋へと入り、今に至る。


(―つっかれた…)


 ランプを壁にかけ、備え付けのベッドに仰向けに倒れ込む。他にあるのは、机にイス、それと小さな戸棚がある程度の簡素な部屋だが、現状を踏まえて言えば高待遇だ。


(―てーか、ドラゴニアが豪華すぎるんだよな)


 ドラゴニアの私室に比べれば遥かに質の低い部屋ではあるが、舞姫も同様の個室があてがわれていることからも、差別の類でないことは明白だ。他はほとんどがすし詰め状態の相部屋か、でなければ宿のロビーに当たるようなところで雑魚寝らしい。おそらくは、寝具すら人数分に足りていないだろう。見張りと交代で休むにしたって足りないだろう。

 ボウと二人で別の宿を探そうかとも思ったが、姫とイン竜を中心とした「姫の恩人に無礼を働くわけにはいかない」のセリフで、部屋を与えられる運びとなった。

 町には他にも宿はあるし、宿泊費がないわけではない。この部屋を俺達が使うことで、割を食うメンバーがいるのだからとも思うのだが…


(―それだけ、逃がしたくないってことの表れでもあるか)


 どれだけの価値と値踏みされているかわからないが、失って構わない戦力ではないのだろう。扱いからしてスパイとして疑われている感じはないので、断る方が気負わせるかもしれないと、好意を受けることにした。

 まぁ、それに、今から宿を探すのは正直おっくうではあった。


(―いつ寝たっけ?)


 運転してるカイ竜に謝って、飛行船で少しばかり寝た気はするが、ドラゴニアを逃げ出してからの怒涛の流れ…足はじんじんと痺れ、目には鈍い痛みがまとわりつき、耳が音を拾うのを嫌がる。そのくせ、ずっと強張らせていた体はすぐには解れず、今こうして身体を投げ出すことで、ようやく解れ始めてきている程度。

 むしろ、この程度で済んでいることのほうが奇跡かもしれないが…なにせ、死んでもおかしくないほどの状況であったわけだし。


(―湯船に浸かるのもいいかもしれないな)


 ドラゴニアのような高地では、水は貴重だ。城下町まで下りればそうでもないが、城での生活でいわゆる湯船に浸かることはあまりなかった。地下水をくみ上げるのも、組み上げた水を沸かすのもかなりの労力だからだ。故にほとんどは水浴びか、タオルで体を拭くぐらい。

 ところが、この周辺は事情が違う。大陸を南北に走る山脈の地下には地熱による温水…つまり温泉があり、神楽月をはじめこの国も、風呂といえば湯船に浸かること。この宿にも、小さいが風呂はある。時間を決めて女性陣と男性陣で分けて入ることになっているらしい。

 なお、今は女性陣の入浴タイムだ。

 宿屋、そして女性陣の入浴とくれば、もうあれだ、覗きのイベントが発生するべきと自分でも思うが…

 宣言しておこう。

 無理だ。

 ユウ竜ともあろう者がこの体たらく…しかし、ベッドに倒れたせいか、本格的に身体が重い。しかも重いのは身体だけじゃない。これからを考えるのを辞めたくなる程度には気も重い。


(―悪いとは思ってたけど、ほんと想像以上に悪かったな)


 会議と、町に着くまでの間に聞いた話をまとめると大きくは以下のようになる。


 一、舞姫とイン竜ソウ竜達は、敵に追い出されるようにして国から逃げてきた。

 おかげで、資金だとか人材だとかに乏しい。

 資金がないから小さな宿を借り上げるのが精いっぱいだったし、人が少ないからギリギリこの宿で人が収まっているという、良いんだか悪いんだかよくわからない状況である。いや、悪いんだけど。しかも今のところ、援軍や助力の情報はない。


 二、舞姫の妹である歌姫は敵の手中にあり、幽閉されている。

 すぐに殺されない理由、それは利用価値があるからだ。利用できないとなったらどうなるか分からないという意味で、ゆっくりことを構えていいわけではない状況にある。当たり前のことではあるが、見捨てていい対象ではない。別段、女の子だからという理由ではない。助けられる命なら助けるべきだと思うでしょう?


 三、敵に王の証を抑えられている。

 行方不明となった王が所持していたはずの神楽月の国宝を、敵が手に入れているらしい。神楽月においては、その国宝を所持していることが王の証でもあるらしく、国民の前で国宝の所持式…戴冠式のようなものだろう…が行われようものなら、現状中立の兵ですら、敵側に傾く恐れすらあるらしい。

 そしてそんな国宝を敵がもっているということは、おそらく行方不明の王はすでに…

 行方不明となってどれだけの時が経ったのかは正確には聞いていないが、けして短くはないはずだ。だからもちろん姫も覚悟はしてないのだろうが、その話を聞いた時の青ざめた顔はなんともいえない悲壮感に溢れていた。


 これら三つでも十分以上に旗色が悪いのだが、何より頭が痛いのは、敵そのものである。

 敵の大将は、神楽月と長く友好を育んできた国、鈴星の現国王。名前はリン王。代々の神楽月の王もリン王を名乗っているのだが、これはけして偶然ではない。神楽月と鈴星は、元は一つの国であり、ある第の兄弟王が、政治的理由で二つの国に別れ、それぞれがリン王を名乗ったという歴史があるそうだ。

 その理由とやらは定かではないらしいが、ケンカ別れというわけではなかったらしく、それ以後も、神楽月のリン王を支える形で、鈴星のリン王との仲は続いてきたらしい。

 で、その鈴星のリン王は、別れていた神楽月と鈴星を再び一つの国とし、唯一のリン王となることを目的としているらしい。

 欲に目がくらんだのか、夢があったのか、それとも別の何かか…現状、なぜそう思い至ったのかまではわからないが、とにかく行動は起きた。鈴星でも意見がまとまりきらないながらも決行してみせた。

 そしてそれに賛同した鈴星の竜は、二名。他は竜の名を捨て、ただの民に戻ったらしい。


 と、ここまでだけなら話はまだ簡単だった。元は一つの国であろうと、列記とした侵略であり、姫たちは一丸となって敵国に抗えばよかったのだ。

 が、神楽月の竜に、合併を良しとする勢力がいた。

 しかも、自国の王や姫ではなく、鈴星のリン王を王とすべしという勢力だ。

 それが、ロウ竜。

 聞くところによると、先先代…舞姫の祖父にあたる王の時代からいる古株の竜で、戦歴も人脈も人望もあり個人の強さも去ることながら隊を動かせばなお強いという、ロウ竜一人いれば他の国の三竜に匹敵するとまで言われた傑物であるらしい。

 そんな竜が、姫ではなく敵であるはずの鈴星の王についた。

 それが、問題。

 古くから国を支えてきた、ともすれば王よりも発言力があるかもしれない竜に、姫は三行半を突き付けられた状況である。

 しかし、王が行方不明になってから国を支えていたのは、舞姫である。無論、敵になったロウ竜も支えてはいただろうが、舞姫は表向きには『行方不明となった父王の代わりに国を守る麗しの姫君』である。国民からの人気や信頼がないではない。

 おかげで神楽月の官僚も民も迷うはめになっている。

 はたして正しいのは舞姫達か、それともロウ竜と鈴星のリン王か。


(―しかもその後ろに、お姉さんを送り込んできた国まで絡んでるしね)


 神楽月と鈴星が一つとなって喜ぶどこかの国か、国を立ち上げる見返りに何かを欲している国か、こちらに関しては情報が少なすぎて、本当の姿をみつけだすことすらできていない。

 とうとう、情報を整理すればするほど、劣勢であることを突き付けられる。

 だけど、


(―まだ、決定打はでてない)


 劣勢なだけ。

 全部を一度に考えようとするから、無理に見えるだけ。


(―資金と人材は…なんとかなる)


 ドラゴニアから出てくる時に退職金がわりにもらってきたものを使えば、ここら辺は比較的簡単にクリアーできる。


(―歌姫さんは、早まらない限りまだ時間はある)


 なんでも、敵さんがすでに所有している国宝とは別に、歌姫さんが持ってる国宝も、王と認めてもらうために必要らしい。神楽月の運営に必要なのが、敵が持っている国宝。王の象徴として必要なのが、歌姫の国宝。そういう感じ。

 で、歌姫の持つ国宝を扱えるのは、現状歌姫だけで、その扱い方を敵が把握するまでは殺されることはないだろうというのが、イン竜の見解だ。


(―ロウ竜さんとやら筆頭に中々手ごわそうだけど、絶対に勝てない敵なんていやしない)


 勝てない勝負を挑むから、勝てないのだ。勝てる勝負に…せめて、勝てる可能性のある勝負に引き込むことさえできれば、不可能ではなくなる。


(―であれば、問題は何をもってして勝ちとなるか)


 そしてもう一つ、


(―どうやって、俺の勝ちをそこに盛り込むか)


 つまり、王となるための…王と認めてもらうための条件をどう組み込むか?


(―カギになるのは、二つの国宝と、二人の姫、そしてリン王と竜達。そしてもちろん忘れちゃいけない国民のみなさん)


 パズルを組み立てるというよりは、小説や台本を組み立てるように…現実と物語の境界が曖昧になるぐらいまで、仮定の世界に思考を落とす。

 描き出したい現実のために、どんな物語が必要かを組み立てる。

 いくつも、

 いくつも、

 即物的な案から情緒的な案まで、詳細な案から大雑把な案まで、

 そして見えてくる。

 何をすべきか、

 何が足りないか、

 何を求めるべきか、

 何を削るべきか、


(―まぁ…どれだけ想像したところで、現実ってやつはあっというまに想定を打ち崩してくれるんだけどね?)


 そして今夜もまた、この世界はやすやすと俺の想定を打ち崩しにかかる。


(―ボウが戻って来たか?)


 ノックの音がするでもなく、扉が開く。体を起こすのもおっくうで、開くがまま、閉じるがままの音を聞く。そして狭い室内に僅かながら小さな足音が―


(―しない)


 ボウなら、わざわざ足音を消すような入り方はしない。

 こんな床板の悪い宿屋で、足音なしに歩くなんて芸当できない。

 急ぎ体を起こそうとする…が、足音を立てない侵入者の方が早かった。

 上半身を押さえつけるように跨り、両手を取られる。

 瞬間、力が抜けた。

 いや、まぁ『力を抜いた』が正しいのだが、力を抜かざるを得ないような状況に追い込まれた、という意味では力抜けた、と表現してもよいと思う。

 体全体を使ってベッドに押し付けるようにした侵入者の体を覆っていた布が…バスタオルらしきものがはらりとほどけ、隠していた色の濃い肌にランプの明かりがぬるりの乗る。


「こんばんわー、ユウ竜様」

「こんばんわ、イン竜。やけにまた挑発的な恰好ですね?」


 風呂上り…なのだろう。汗とは違う湿気や、温もりを感じる。であれば、まぁ、服どころか下着すらつけていないのも納得…していいのだろうか? やはりサラシか何かで締め付けていたらしく、昼間感じた胸よりもダイナミックな印象がある。

 おそらく、四ボウ…いや、五ボウクラスの存在力があると見える。


「で、この状況は何事で?」

「あえてゆーなら、色事とか?」


 なにうまいこといってんだ、こいつ。

 などと何事か俺が口を開くよりも先に、イン竜は茶目っ気のある笑顔で言った。


「とゆーわけで、ユウ竜様…大人の夜遊びにまいりました」

 お読みいただきありがとうございます。

 次回、大人の夜遊びがはじまってしまうのか!?

 それとも思わせぶりなだけで何もしないのか!?

 なお、いずれにしても描写はしない模様。

 これ、18禁のお話じゃなしね…いや、別に残念なわけじゃないですよ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。