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ユウ王戦記 ~三妃 七竜 十三宝 を揃えて異世界で王になるまで~  作者: しいか
第2章 神楽月(カグヅキ)内乱編

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戦記17「姫と竜と男達」

 いうほど書き溜めがあるわけではないのですが、残弾の続く&作り続けられる限りは毎日アップしていきたい所存。

 ここに再び、毎日のアップと戦う作者の戦いの幕が切って落とされたのだ。

 なお三分の一程度の方がスマホからご覧いただいている模様。ということは朝の移動中に読む方もいるかなと思って、だいたい7時~9時代で更新していきたいと思ってなくもない今日この頃皆様いかがお過ごしでしょうか。

戦記17「姫と竜と男達」


「ご自分の身は守れますか?」

「は、はい!」


 脇に寄ったボウの質問にしっかりと答え、構えを取る舞姫。

 ボウには見たことのない独特の構えではあったが、すぐさまとったその型と声から、答えが偽りではないと判断し、茂みの中へとその姿を潜らせた。


(―さて、お手並みは)


 ボウが姫とやり取りをしている間に、ユウ竜はすでに戦闘を始めていた。

 体毛の濃い男…おそらくは追手を率いてきた隊長格の男が、間合いに入ってきたユウ竜に向かって剣を振る。

 ユウ竜はすぐさま詰めていた間合いを開け、敵の空振りを見て剣を踏みつけた。


「ぬぐぅぁ!?」


 踏まれた剣に手を引かれるように男の姿勢が崩れるを見て、顎に蹴りを放つ。男は避けることもできず、地面に転がった。起き上がってくる様子は…ない。


(―ドラゴニアの一般兵ってとこかな?)


 新兵や非正規兵に比べれば強い。が、その程度だ。

 人との戦いに慣れた、訓練を重ねた、職業軍人であるドラゴアニの熟練の兵とは比較にならない。

 力はある、早さもある、獲物を追う目もある、だがそれは日常的に力を使う仕事―例えば、木こりや狩人のそれである。人間を殺すことに重きを置いた、知能を持った相手との駆け引きを潜って来たそれとは一線を画す。

 手にしている武器とその腕前にしてもそうだ。木々や獲物の肉を切り分けるための鉈状の剣や、細工などに使用できそうな片刃のナイフなど、生活に根差したところから発展したと思わしきものばかり。あとは弓。こちらは動く獲物を狙ってきただけあり警戒は必要だろうが…


「おっと、危ない」


 言うほど危なげなく、放たれた矢を剣で切り、二つに別れた矢先を片手で握り、背後から襲い掛かろうとしていた男の太ももに刺し込み、場所を移す。

 隊長格の男も、矢を刺し込まれた男も死んではいない。

 だが、方や意識を失い、方や喚きながら蹲り、共に戦うことはできそうにない。


「さ、お次はどなた?」


 ユウ竜が辺りを見渡すだけで委縮する男達。

 その表情には、到底自分達が敵う相手でないと察っした色があった。故に鈍る。恐怖で体がすくんだものが半分、『殺さないと』宣言したのだから下手に抵抗しない方がいいのではという利に走る者と、回りの鈍りに危機感を覚える者を合わせてもう半分。


(―敵わないと思った敵にこそ、逃げ腰になるな。多勢と戦う時は、心に迷いを与え、その隙をつけ)


 キョウ王に、剣姫に、ドラゴニアで教わった戦いのいろはを思い返し、


(―そして潰せる敵から潰すべし)


 ごく一部の、まだ戦意をたぎらせていた男達を無視し、ユウ竜は鈍った相手から順に、或いは蹴り、或いは武器を弾き飛ばし、また或いは手近な石や枝や砂利や相手の落とした武器を用いて無力化していく。


(―カイ竜の置き土産使うほどでもないか。てか下手に使うと死人が出るか)


 魔法が飛び交うわけでも、爆薬が炸裂するわけでも、一撃で百の人間が吹き飛ぶほどの大技もない。得意の力すら、最初の剣を取り出した時しか使っていない。だが、淡々と着々と、ユウ竜が動くたびに男たちが倒れていく。


「ば、ばけものか!?」

「いいや、どっちかっていうと、バカモノだよ」


 多対一の状況ですら軽口をたたくユウ竜に、恐れをなす男達…こうなったらと隠れた仲間に期待を寄せるが、その頃には麻痺性の毒を塗りつけたボウの針が、そのほとんどを無力化していた。そうとは知らず、来るはずの者が来ないことで、男たちの恐怖は増す。


(―すごい)


 構えてはいるものの、姫にまで攻撃が及ばない。

 だからこそ、つぶさにユウ竜達の動きを追え、その意味も理解できる。


(―強いんじゃない。この人達、すごく上手い)


 ユウ竜自身の動き、ボウ自身の動き、そして互いに相手の動きを利用した敵の誘導。

 ユウ竜の動きに釣られた茂みの敵をボウが打ち抜き、ボウが追い出して茂みから出てきた敵をユウ竜がなぎ倒す。

 もし自分だったら…ここまで立ち回るのは難しいだろう。自分で宣言した通り、姫自体はけして戦えないわけではなく、男達と比べて弱いかといえばそうでもないが、ユウ竜達ほど上手くはない。


(―もしかして、さっきのやり取りも伏兵の位置を探るため?)


 思わず声をだしてしまうような、思わず何か反応してしまうような、そんな状況にあわぬ行動を引き起こすための何かだったとしたら? そんな、相手の先を読んでいながら、読んでないかのように思わせるほどの者だとしたら?


(―だとしたら、やはりこの人は…)


 この人はにどんな言葉が続いたのか、それはユウ竜に聞こえるはずもなく、そうこうするうちに、十何人といた追手は全員が行動不能に…それも一名の死者も出さずに倒し終えてしまった。


「なんとか殺さずに済んだかな?」


 動く者がなくなり、舞姫へと顔を向けるユウ竜。

 やや誇らしげなユウ竜の顔を見て、舞姫はドキリとした表情を見せた。

 ずっとその目でユウ竜を追っていたからこそ見えた、ユウ竜がこの戦いで初めて見せた隙らしき隙。その隙を見て、


「疾!(シッ!)」


 姫は『飛んだ』。

 いや、正確には『跳んだ』。

 小さく足を畳むように跳ねたと思いきや、すぐに何もない空中に伸ばすと、足の裏を受け止めるかのように不可視のエネルギーが集まり、トランポリンやバネの反動のように強く、しなやかで、急激な推進力を姫に与えた。

 引き絞った弓というよりは、打ち出されたボウガンのようにほぼ真横に飛んだ姫は、走り込んだら数秒はかかる距離を一瞬で詰め、身体を捻りながらユウ竜のすぐ隣へ両手で着地し、


「飛!(ヒッ!)」


 今度は手のひらにエネルギーを集め、猛スピードで上へと跳ねた。

 そして、姫の更に頭上から、煌めく何か…いや、煌めく何かを持った何者かが落ちてきた。

 ユウ竜の隙を突きその首を狙う敵が落ちてきた。


「羽!(ハッ!)」


 言葉と共に、姫の足の先には、紙一枚分の距離を保ちながら移動するエネルギーの塊が生まれる。

 エネルギーの塊に煌めく何かがぶつかり、


「ちっぃ!」


 ジィン! と、何者かの舌打ちと衝撃音が響いた。

 エネルギーが拡散し、姫の体が地面へと落ち、何者かの体は宙に跳ね上げられる。 

 その一連の流れに、辛うじて姫が隣に並んだ時から反応できたユウ竜は、舞姫とは違う女の声…舌打ちに向けて、呼び出した石を投げつけた。

 キィン! と金属がぶつかる音、そしてバサリと揺れる枝の音、身体を回転させ、足から地面へと戻ってくる舞姫。


「御無事ですか?」

「あぁ。でも今のは危なかったわ。ありがと、舞姫」

「いいえ、お助け頂いているのはこちらですから」


 油断なく構えるユウ竜と舞姫。二人が目を向けた先には、木々に溶け込むようなマダラ模様の服を来た女が、枝の上にて立っていた。

 口元まで覆うような襟巻に、目元まで覆うかのような深いフード。明らかに自分の容姿を隠そうとしている姿と、姫が行動を起こしてようやくユウ竜が気が付けた存在感などから察するに、暗躍を得意とするタイプの者と思わしき女。

 その女めがけて、茂みに隠れたボウの針が襲い掛かる。が、女が手を振ると、高い音と共に針が切り落とされた。女が握っていたのは、厚手で両刃の短剣…ダガー。


「その程度で隠れたつもり?」

「まぁ、あなたと違って隠密が本職ではありませんからね」


 しれっといいながら茂みから姿を現すボウ。と同時に、周りの茂みに隠れいてた敵の排除が終わったことなどをハンドサインでユウ竜に伝える。


「さて、これで三対一と」

「だとしたら?」

「少しお喋りでもしません?」

「つまらぬ話はしないと決めている」

「じゃぁ、飽きないうちに本題でに…いきなり本気で命取りに来るとか、お姉さん何者?」

「無論、姫を狙う者に決まっているだろ?」

「ま、そりゃそーだ。で、姫を狙う理由は?」


 女は次に出すべき台詞をいくつか思い浮かべてから一つに絞り、


「そういうお前こそ、何の訳があってその女を守る?」


 ユウ竜もまた、台詞をいくつか思い浮かべてから、一つにして返した。


「どっかで隠れて、聞いてたんじゃないの? 何度もお嫁さんだからって言ってるでしょ?」

「ち、違います! 断じて違います! わ、私の旦那様が、ユウ竜様なわけがありません!」

「…そこまで言われるとちょっと凹む」


 『ライトノベルのタイトルみたいだな』と思う余裕がある程度の凹みではあるが、ユウ竜の声色に申し訳なさげに焦る舞姫。


「え、あ、う、ご、ごめんなさい…」

「いいえこちらこそ、弱いうえに不細工なくせに調子に乗ってごめんなさい。お詫びに死にます。そのうち」

「へ!? いえ! あの、十分お強いですし、その、美形ではないかもしれませんが、愛嬌がおありの顔立ちだと思いますので、死などというのは―」

「じゃぁ、どっちかっていうと好き? 嫌い?」

「ど、どちらかなら、き、嫌いじゃないというかなんというか…」

「じゃぁ、好きなんだね?」

「どちらかならでいうなら、そ、そうなりますでしょうか…」

「じゃぁ、どっちかっていうとお嫁さんでいいね?」

「は、はい、どっちかっていうとお嫁さんで―だめです! だめですよ!」

「惜しい!」


 二人のやりとりは言葉を変えつつも中身は変わらず、結果平行線を辿るまま、あと数回は繰り返された。

 その間、枝の上の女は『おい、お前の仲間だろなんとかしろ』という目でボウを見、ボウはボウで『あなた敵でしょ、何かしてください』と目だけで返した。


「そんなことより今は目の前の敵だ! この問題はあとできっちり話そう!」

「わかりました! …え? 後で?」

「よし、言質はとった!」

「あ、ちょ、卑怯! 卑怯です、今の!」

「大丈夫、話すだけだから」

「ほ、ほんとですよ! 話すだけですよ!」

「うん、話すだけ話すだけ」


 そのセリフのあとには『まぁ話が終わるまでは話し続けてもらうけど』という言葉が続くのだが、さすがのユウ竜もいい加減、敵の相手をすることにした。


「で、お姉さんどこの竜なの?」


 突然の本題に、枝の上の女が僅かに表情を変えた。

 舞姫も驚きの顔を見せた後、警戒の色を露わにする。

 女は言い逃れようとでも思ったのか逡巡したあと、しかし何かの意図があったのか、正直に返した。


「竜…となぜわかった?」

「元とはいえ、こっちも竜なもんでね。わかる時はなんとなく分かる」

「お前が竜?」


 嘲りを交えつつじっとユウ竜を見る女。


「…にわかには信じがたいな」

「だよねぇ、我ながら竜というには力不足だしねぇ?」

「見た目にはな。しかし、実際目の当たりにすれば、信じざるを得ない部分もある、か」

「信じてくれるの?」

「信じるとして、お前はどこの竜だ? いや、元といったか? ユウ竜といえばどこぞの国で聞き覚えがあるが…ドラゴニアだったか?」


 ドラゴニア、と聞き僅かに反応を示したのは、ユウ竜ではなく舞姫。


(―ドラゴニアのユウ竜様?)


 そんな反応に気づいているのかいないのか、ユウ竜はほぼ間髪入れずに女に返す。


「こっちが答えたら、そっちも教えてくれるの?」

「いずれにしろ、そちらが答えずに答えるとでも?」

「おーけー。ドラゴニアの元竜で名前は、ユウ。訳あって家出してきて職探し中。で、そちらはどこの?」

「どこも何も神楽月の竜に決まっているだろ?」

「違います! あんな竜は、私の国にはいません!」


 割って入った舞姫に、神楽月の竜を名乗った女は、ユウ竜に向けていたものよりも更に嘲りのある笑いで返した。


「お前の神楽月にはな。私は新しい神楽月の竜だ」


 舞姫が唇をかむように険しい表情を浮かべ、何かの動作を取ろうとした。

 ユウ竜はその動作が始まる前に姫の頭に手を置き、それを制止する。


「俺、この辺りに来たばかりで事情が呑み込めてないんだけど、新しい神楽月とやらはもうできたの? それとも現状はまだ、姫様の国なの?」

「答える義務はないな」

「あ、そ。じゃぁ、もう一度聞くけど、お姉さんどこの竜…って聞くと同じか。じゃぁ…」


 ユウ竜は一度息を吸い直し、たっぷりと尋ねた


「おねーさん、どこの国から来た竜なの?」

 お読み頂きありがとうございます。

 新章に入って雰囲気が変わるということもなく、相変わらずな主人公及びその他のみなさん。

 とはいえ、ツンデレ風剣姫さんとか、合法ロリ枠ヨウ竜とか、バカ可愛いカイ竜とか、おっさんとか、クソババァなど、個人的に好きだったキャラに会いにくくなるのは少しさびしいなぁとも思いつつ、そのぶん舞姫筆頭に新規参入キャラやボウが受け入れて貰えることを祈る今日この頃。

 ゴウ王? 知らんな。


 それではまた次回。

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