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ユウ王戦記 ~三妃 七竜 十三宝 を揃えて異世界で王になるまで~  作者: しいか
第3章 メガロポリス分裂編

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戦記102「離反者たちと」

 全略。


 102話をどうぞ。

戦記102「離反者たちと」


「戦争…って戦争ってことよね?」


 質問の意図は良く分からないが、そう聞いてしまう姫の気持ちはわからないでもない。


「そ、戦争」


 だから短く、そして冗談とならないようはっきりと告げる。


「規模はどの程度でしょうか?」

「現状、どれだけでかくなるか予測がつかない」

「…ユウ様は、先ほどの神楽月鈴星の戦いよりも大きくなるとお考えなのですか?」

「ま、ね」

「大きいって…この前の戦争より?」


 姫のいうこの前とは、もちろん『神楽月での戦い』のこと。


「…この前のを戦争と呼ぶなら、これからのは大戦争になるかもしれない」


 この前の争いは、実質的には内乱だ。

 鈴星から王と竜が乗り込んできたが、兵士のほとんどは神楽月の兵であり、つまり国対国レベルの激突ではない。

 が、今度は違う。

 国に国がぶつかってくる。


「なにせ新生神楽月に、ドラゴニアが戦争をしかけてくるかもしれないわけだし」

「ドラ、ゴニアが…」


 驚きと緊張を隠すことのない姫やコウに、説明を始める。

 俺が会談で聞いた話を、

 これから俺達がすべきことに繋がる話を。


 ・・・・


 薄暗い室内に残響したセリフ、


「戦争、ですよ」


 紳士が口にしたセリフは、メガロポリスの解体新設と並ぶほどの衝撃を持っていた。

 なにせ戦争だ。

 それも七大国であるドラゴニアによる『戦争』である。


「…信じていただけませんか?」

「いや、十分にありえるとは思ってる」


 そもそも、ドラゴニアは戦争で大きくなった国だ。

 そして、戦うことで国力を維持してきた国だ。

 北の乏しい自然の中で生きるために、ドラゴニア周辺は戦が耐えない時期があった。

 少しでもいい土地を得るため、少しでも広い平地を手に入れるため、小国同士が争い奪いまとまり、やがてドラゴニアという国ができた。

 大きくなった国は、培った戦の技術を略奪するために使った。

 現メガロポリス北部の国や、ドラゴニア西部の隣国も幾度と無く被害にあった。

 それをメガロポリスが止めた。巨大な集団となることでドラゴニアの軍事力に対抗できるようになると同時に生産性を向上させたことで、周辺地域には余剰な食料や資源が生まれた。

 奪わなくても、どちらも必要とする分以上のものが生まれた。

 ドラゴニアは、戦って手に入れることを止めた。労力に対し、得るものが見合わなかったからだ。

 しかし、金がいる。

 奪うよりは払う方が楽とはいえ、払えなければ国は飢える。

 しかしメガロポリスのように売れるものがない。

 悩んだ当時のドラゴニア王は、思いついた。

 使わなくなった軍事力を金に変えよう、と。

 七大国の一つに数えられるだけのその軍事力を『派兵』に注ごうと。

 西に、東に、南に、島に、

 戦う相手は他の大国だったり、盗賊やならず者だったり、大量発生した魔獣だったり、大型の魔物だったりと様々だが、ようは規模のでかい傭兵団のようなことで外貨を稼いだ。異世界人を襲ったのも…俺も襲われた一人だが…これもその一環だ。

 とにかく、もう長い間ドラゴニアは侵略戦争を仕掛けていない。

 戦い大好きキョウ王様もそうだ。

 まぁあの人の場合「自分が楽しく戦いたい」気持ちを満たせればそれでよかったんだろう…戦争したいんじゃなくて戦いたいだけなので、闘技場だろうが冒険だろうがなんでもいい。一騎当千の猛者を自分の力でねじ伏せたいのであって、何千人という兵士を駆使して猛将を討ち取っても面白くない。

 対して、ゴウ王は違う。俺が思うにゴウ王は、勝つことが好き…というか、負けるのが大嫌いな奴だ。それは個人の戦いだろうと戦争だろうと同じ。

 そして強い。個人戦だろうと集団戦だろうと。

 そんな王が国民の不満を宥め、国力を回復するために戦争をする。

 無い話ではない。

 ただ…ケンカは1人じゃできない。相手が問題だ。


「一番ぶん殴ってやりたいのは俺のいる神楽月と鈴星だろうけど…」


 しかし旨味が少ない。

 飛空挺が十分に無い今、部隊を遠征するには陸路しかなく、実行するには莫大な金がかかる。攻めるには兵が必要で、兵を維持するには食料そのほか諸々必要で、遠ければ遠いだけかかるのは当たり前のこと。今新生神楽月がドラゴニアと戦争になったら、十中八九ドラゴニアが勝つが、そうまでして勝ったところで得られるものはたいしてない。

 商業国でもないのでたいして外貨は無いし、飛空挺建造に必要な鉄鋼が手に入るわけでも、飛空挺を浮かすための魔法に長けた人物が集まっているわけでもない。上質な樹はあるがメガロポリスで代替は効くし、今は不足してる薬草だってそのうちちゃんと出回るようになるので、長期的にはやっぱり損だ。

 となるとありえるのは、


「西の隣国?」


 毒竜が革命直後にちょっかいを出したせいで一触即発の状態だとは聞いている。長年いがみ合ってきた国だし、きっかけは何であれ決着を付けようとしてもおかしくはない。旨味という点では作物も育ちにくい北側の土地だけあり微妙だが、攻め落とせるならマイナスにはならないだろう。

 が、


「こちらの資料をご覧下さい」


 紳士は俺の質問の答えとして、追加の資料を差し出してきた。

 それはドラゴニアとは別の、とある国との商取引をまとめた資料。

 その国の名前は、


「鉱山国家、金壌カナヅチ


 神楽月の目と鼻の先にある国だ。


「無論ご存知ですね?」

「周辺各国から職を探して集まった人達が集ってできた多民族国家。西の山脈から掘り出す石材や鉱石で成長した比較的新しい国。で、近年金鉱脈が見つかったことで、一気に国力が増加…ってことぐらいでいいなら」


 地図でいうと、神楽月から北に一つ国を挟んだところ。国土として隣接していないこともあり、先の争いでは敵にも味方にもならなかった国だ。メガロポリスには所属しておらず、地域分類で言えば神楽月や鈴星などの文化圏に属する。

 

「それだけでは不十分です。そちらの資料を見れば納得して頂けると思いますが…狙っていますよ。神楽月周辺の盟主の座を」


 金壌には行ったことも、国の代表と会った事もない…が、変な噂を聞いたことも無い。


「初耳です」

「でしょうな。正直なところ、私どもも裏づけはとれておりません。しかし」

「取引は雄弁に物語っている、と」


 金壌は、国土でいえば神楽月の半分もないほどの小国だ。なのに、非常用の備蓄にしてはおかしな種類の商品を買い付けている。武器や防具、薬に保存食…それこそ、戦争が起きても困らないほどに。

 だからといってそれだけで神楽月を狙っている…という証拠にはならない。

 極端な量ではあるが『情勢が不安定だから自衛の為に買い揃えた』と言われれば、それ自体は納得できなくもない。

 が、金壌が買っているのはそれだけではない。

 目に付いたのは人身売買…奴隷の項目。


「…購入の目的は?」

「鉱山奴隷、ということになっています」


 国ごとの独自性を認め合うから成り立っているメガロポリスには、奴隷売買を許可している国もある。そして買われた者の多くはなんらかの労働力として使われることが多い。

 重労働や家事手伝い、あとは娼婦なんかもか…鉱山の国が工夫として奴隷を買い付けることは少なくない。

 が、その数が異様だ。

 となれば、先ほどの武器防具の量とあいまって、


「本当の狙いは…奴隷兵士」


 そう判断できる。

 侵略戦争は、防衛戦よりもよっぽど人員が必要となる。

 守る側は基本自分の国だけを守っていればいいが、攻めるほうは相手を攻める兵と自国を守る兵、両方を置かねばならない。攻めている間には他の国に攻められては元も子もないのだから。

 だから、奴隷を買った。

 兵士として使用するために。

 では、その奴隷兵士を向ける先はどこか?

 まさかお前の国が欲しいからお前の国の武器を寄越せ、などといわれてほいほい売るほどお花畑な商人はいないだろう。

 金壌に武器や奴隷を売りつけたメガロポリスの商人は、自分達が襲われないという情報があったから売ったのだ。

 では、自分達じゃない…メガロポリスではない国とはどこか?

 いくつか候補はでてくるが…国王が死に、内乱で疲弊した神楽月…そして鈴星。

 確かに金壌からなら、新生神楽月を落とした際の旨味はある。派兵費用はドラゴニアより安くなる。鉱山地域では取れないものも手に入る。

 間に一国挟まっている以上、即座に狙えるわけではないが…盟主の座が欲しいなら、来るだろう。金を手に入れた人間の次の目標は地位や名誉になるのはよくあることだ。

 そして、そこにドラゴニアが一枚噛んだ、と。


「飛空挺建造用の鉄鋼を金壌が譲り、その見返りにドラゴニアが派兵する…か」

「私どもはそう考えております」


 ということは、商品売買のデータは手に入れているけど、金壌とドラゴニアが手を結んだっていう情報は手に入れてない、と。


「確かにそれなら、憎い俺をぶん殴れる上に財布も温まるしでいいこと尽くめだけど…一応、根拠をお聞きしても?」

「私の国が資材を取り扱っているのはユウ様もご存知だと思いますが、ドラゴニア革命の後暫くして、飛空挺再建用と思われる資材の購入を持ちかけられました」

「売ったの?」

「こちらにも立場がありましたので…」

「失礼、責めてるわけじゃない」

「いえ…私の過ちといってもよいでしょう」


 『自分の責任』とまで言った紳士と同様、苦い顔をする代表者が何人か…


「私は思ったのです。ドラゴニア革命で大量の飛空挺を失った今こそ、メガロポリスの組み換えを行う好機であると」

「いや、それは正しくいってくれ。アンタたけじゃない。俺達のほとんどがそう思った」


 そういって同罪であると名乗り出たのは、酒の国の代表と他数名。


「このチャンスを逃しちゃなんねーと、オレ達はドラゴニアへの資材の販売に制限をかけて貰ったんだ。量が量だけに集めるには少し時間がかかる、ってな」

「あー、なるほど」


 そうやって資材の納入を遅らせることで、表立って敵対しないながらもドラゴニアの軍事力を…脅威となる力を落としているうちにメガロポリスの分裂と再編をやりきってしまおうとした。が、


「そこに金壌が登場したわけか」


 頷く紳士と他一同。


「…見積もりが甘かったとしか言いようがありません」


 金壌は文化圏的にみてドラゴニアからは遠い国だ。外交を担当していたドラゴニアの竜である行ったことも会ったこともない…つまり、国交のない国だ。

 外交や内政に無頓着といっていいゴウ王が、そんな縁遠い国と短期間で手を結ぶとは考えにくかったのだろう。

 しかし、実際手を結ばれるとピタリとくる組み合わせでもある。

 金と金属はあるが、国土の狭さと歴史の浅さから人手と戦争経験の無い金壌。

 一方、飛空挺を壊されたとはいえ、兵数自体は激減したわけでもない歴戦のドラゴニア。

 互いに足りないものと足りるものを補完しあう形となったわけだ。


(―ゴウが動いたにしては的確に過ぎるし…誰か優秀な側近がいるのか?)


 一瞬、キョウ王と二人で俺のことを殴りまくってくれたオッサンの顔が頭に浮かぶ。

 あのオッサンのフットワークの軽さと政治的な強引さがあればやりかねないとも思った。が、もし本当にオッサンが噛んでるのだとすれば、そもそも国内不満を収めるための手段に『戦争』を持ち出すこと自体がおかしい。別に平和主義者というわけではないが、根本的な解決にならないような手段で問題をうやむやにするようなことは嫌うだろう。やろうとしていることは、相手の不満を金で黙らせるようなものなのだから。

 が、もしそうだとしたらそれはそれで変だ。

 あのオッサンが気に食わない政治手法を容認するとは思えない。ということは、容認せざるをえない状況に追い込まれたか…この短期間であのおっさんを? もしくは物理的に口も手も出せない状況に追いやられたか…竜姫と親交深いあのオッサンが?


(―ダメだ、イメージつかん)


 ドラゴニアとやり合うにしてももう少し先だと思っていて蔑ろにしていたが、新体制の情報を早急に手に入れないといけなそうだ。


「それにしても…早まったことしたね、この奴隷やら武器売った国」


 取引額だけ見れば破格だ。

 さすが勢いのある国だけあり、かなりの高値で取引されてる。どの項目をとっても、神楽月ではこの値段は出せない。

 売りたくなるのも分かる。それが自分のところに向かない、という情報もあったのだから。だけど、少し考えれば分かること。


「これ、神楽月が取られたら次はメガロポリスでしょうに」


 紳士を含めて、何人かが大きく頷く。

 メガロポリスは、連なることで大きくなっている。

 繋がりがなければ、ほとんどは中規模にも満たない小国がほとんど。

 そして、奴隷を売買している店を有する国は、その小国だ。

 自分で売った奴隷が自分達に牙を向ける…その時、メガロポリスに属する他国がどれだけ助けてくれるというのだろう?

 むしろ、ドラゴニアと金壌が手を組んで、北と西からメガロポリスを侵略することだって考えられる。

 そんなことも思いつかないほど、メガロポリスの商人は鈍くないと思っていたのだが…


(―ここらへんも何か理由がありそうだな)


 裏づけをとらないといけないことが多くてイヤになるね、まったく。


「状況は、理解していただけましたか?」


 思考を取り合えず脇に置き、頷き、返す。


「貴重な情報を頂けて非常にありがたい。で、確認したい。この戦争…いつ頃起きると予想してます?」


 どっちもまだ準備段階…といったところだろう。

 金壌でいえば奴隷を兵士として動けるように訓練する期間や、ドラゴニアだって先に隣国との小競り合いに決着をつけないといけない。


「あくまで私達の予想ではありますが…順当にいけば三ヵ月後に」

「…ま、妥当なところか」


 俺がドラゴニア側にいても、それぐらいを狙うだろう。

 神楽月と鈴星が本当の意味で一つの国となる前を狙うだろう。

 一ヵ月後に、舞姫の即位式、

 二ヵ月後に、神楽月と鈴星の合併調印式、

 三ヵ月後に、両国の正式合併、

 その間を狙う。まだ政治も軍事も統率の取れていない時期を狙う。

 が、事前にその情報を得ることができた。ここにいる、メガロポリスの離反者たちのおかげで…


「…持ちつ持たれつとはいえ、でかい借りを作らされたなぁ」


 紳士を含む何人かが苦笑する。

 彼らは分かっている。

 今回の一件は…この場とこの戦争にまつわる情報は、俺から利益を搾取するためのモノではなく、自分たちの不始末の侘びであることを。

 一方で俺も分かっている。だからといって彼らが何の利益や打算も無く、俺に情報を売り渡すことも、他国の敵になることもないことを。

 これは商談。

 得たのであれば、払わねばならない。

 彼らは商人。

 転んでもタダでは起きない。

 だから…


「…正直、戦々恐々としてますが、そろそろ聞きましょうか」


 問う。


「皆さんは…メガロポリスの離反者の皆さんは、俺に何をお求めで?」


 その問いに、向かいの席に座る夫人が、よく通るあの声でいった。


「英雄を」


 と。

 お読みいただき、ありがとうございます。


 振り返ってみると10話以上も続いている最初の夜もそろそろ終わり…の前にもう少しだけユウに用事のある子がいるようです。

 果たしてそれは誰か…

 まぁ…あの子ですよね…

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