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ユウ王戦記 ~三妃 七竜 十三宝 を揃えて異世界で王になるまで~  作者: しいか
第3章 メガロポリス分裂編

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戦記101「宴過ぎ」

 ヴァヴァーインパクト(グラッセ登場)で読者数の9割が吹き飛ぶと思われていたユウ王戦記。

 しかし一度は壊滅に追い込まれながらも、なんかなんやかんやいい具合にソレっぽいことが起きて、以前と同程度の読者数まで回復。

 しかし今後も作家による悪手は手をくすねて待っている!


 次回―

 違う、今回!

 『ユウ王戦記』、戦記101「宴過ぎ」!


 キミのハートに○○○○(←好きな言葉を入れてください)!!

戦記101「宴過ぎ」


 ユウ達がグラン邸で持て成しを受けている頃、


(―足りない)


 人目につかぬよう気を使いながら、母は野山を駆けていた。


(―ボウヤが死んでしまう)


 頭の中は子供のことで…今にも死にそうな子供のことで埋め尽くされ、自分の体もまた、子供と同じように朽ち果てる手前であることを一時忘れさせる。

 とはいえ、それはあくまで一時…

 駆け巡る度、

 目当てのモノを見つける度、

 思い出す。


(―口惜しや)


 母子がいたのは、もっと北。

 雪山に程近い場所。

 そこで静かに暮らしていた。

 それを脅かされた。


(―あの…竜め。ドラゴニアの竜め)


 傷つき、死に侵食され、仲間を見捨てながらも、かろうじて母子は逃げ出し、住処より南方の洞穴に隠れることができた。

 が、それが子の限界。

 もはや動かすことすら躊躇い、母は人気の少ない洞穴へ我が子を横たえると、自らは欲すべきを求め駆け出した。

 薬草の知識をかき集め、効きそうなものを片っ端から集める。

 手近な所を集めきると、少し遠くへ。そこも取り尽せばもっと遠くへ。

 一枚でも多く、一時でも早く…


(―風よ、空気よ)


 魔法で風を身に纏い時早く、空気を歪め身を隠し…

 母は集める。

 量にしても時にしても、母が間に合わなければ、子は死ぬだろう。

 そしていずれにしろ、遠からず母は死ぬだろう。


(―せめて、ボウヤの分だけでも)


 母は必死に集める。

 もはや、空高くを駆ける体力も魔力もない。

 残る気力で母は駆ける。

 時折体をぐらつかせ、地面に程近いところまで高度を落とし、


「な、なんだ今の風は!?」


 風と空気の魔法を併用した母が通ると、大気が乱れゴうぅっと風が鳴いた。

 風に煽られ建物が軋み、風の音を耳に人が心を揺らす。

 母の通り過ぎると、ある町の夜警についていた男が辺りを見渡した。


「…なんもないぞ」


 男よりも、風よりも、遥か先に母はいる。

 風を残し、母は駆ける。


(―ボウヤ、ボウヤ、ボウヤ、ボウヤ)


 その風の行く先を知る者は、まだいない。




「つっかれたー」


 客室としてユウ達一人一人に割り当てられた一室にて。

 王宮にある物よりも弾む備え付けのベッドにその身を投げ、歌姫が体を伸ばす。


「おつかれさまでした」


 カートから冷たいお茶を用意し、スフレが微笑む。

 スフレは変わらぬメイド姿だが、一方の姫は寝巻きに着替えている。それも道中で着ていたものではなく、夫人が用意したネグリジェ、と呼ばれる形状のもの。


「うー…なんか変じゃない?」

「とても似合っておいでです。さ、どうぞ」


 コップを受け取り、冷たいお茶を流し込むと、湯船に暖められた体に心地よく染み込んで行く。


「おかわりはいかがですか?」

「お願い」


 もう一杯を飲み終えると、姫は再びその体をベッドへと放り投げた。

 体の端を遠くへ押しのけるように伸ばすと、筋肉や骨が締め付けられていたのを感じる。知らず知らずのうちに緊張していたのだろう。


(―まぁ、なんか初めてのことだらけだったしね)


 夫人の館についただけでこれである。

 明日以降は町を案内して貰えることになっているが、はたしてどれだけの初めてと出会うことになるか…

 楽しみでありながら、やや気後れしそうにもなる中、いつもと変わらぬ様子を保ったままの男の顔を思い出す。


「ユウ達はまだかかりそう?」

「もう間もなくいらっしゃるかと」


 空は黒く、今日という日も残すところ数時間…

 昼過ぎに行われた一行の歓迎会は、なんだかんだと日暮れ頃まで続いた。ユウが到着したという知らせを聞いた町の者が後から後からやってきたからである。

 人づてに情報が広がり、その情報に触れたものから順に訪問し、訪問し終えた客から本当にユウがいることを聞いたモノがまた訪問し…そうしてまばらながらも途切れぬ客となり、いい加減お開きに…となったのだが、それでも尚人は絶えなかった。自分の店が終わってから駆けつけた面々の為である。

 そして、会は終わりなったものの、夫人の意向で別室に客達とユウが面会する場を新たに設けられ、ユウと、それに付き添うことを申し出たコウ、そしてグラッセが参加し、つい先ほど最後の客を見送りに門まで出て行ったところである。


「あいつ、顔広かったのね」


 旅の疲れ…というよりは人疲れした姫は、スフレの進言もあり、昼間の会食が終わって少ししてからあてがわれたこの部屋で心身を休めていた。

 荷解きをし、軽めの夕食を頂き、神楽月へと送る手紙をしたためたあたりで風呂に案内され、今に至る。


「グランギニオールに関してはそうですね。ドラゴニアの竜としてはもちろん、奥様やお嬢様と親しい方としても名前は通っていますので」


 ユウをお兄様と呼び、飛び込むように駆け寄った少女…フォードの姿を思い出す。

 フォードは演奏の後、ユウの側に付いて回ろうとしたが、なにやら夫人に言いつけられ、館のメイドであるトリノを従えてどこかへと姿を消した。


「フォードって子だけど…」

「はい、お嬢様が?」

「なんでユウのこと、お兄様とか呼んでるの?」


 血の繋がりがないことは夫人から聞いた。

 しかし、その理由までは聞いていない。

 ユウがご主人様と呼ばれようが旦那様と呼ばれようが、竜や王である以上違和感はない。が、お兄様となれば気にはなる。


「それは…」


 困ったように顔を曇らせるスフレ。


「…そういうプレイ?」

「プレ―ヤツネ様!?」


 顔を真っ赤にするスフレに対し、驚かれたことに驚く姫。


「え、や、だって、アイツってそういう奴でしょ?」

「ご主人様は確かにそういう人ですが、いえ、あ、そういうことではなく、ぷれ、プレ…プレィ…だなんて」

「…なんか、ごめん」


 手で自分を仰ぎ熱を逃がそうとするスフレ…

 演技ではないその反応に、姫はなんともいえないキモチで頬をかきながら眺める。


(―これも地域差…ってわけじゃないよね、たぶん)


 姉…舞姫なら同じような反応をするかもしれないなと思いつつ、自分の反省を振り返る歌姫。

 小さい頃から市井に紛れているせいで、周りが思っている以上にその手の情報を耳にしているし耐性もある。なにせ酒場や兵士の駐屯上など、少し砕けやすい場所に行けば『第○回 ユウ竜床上下論争』とかやってるような土地柄である。

 おまけに、経費で各種衣装を集めるイン竜という名の放蕩女もいる。

 姫だ女王だと気を使われぬ姉では耳にしないことも、歌姫が耳にする機会は多い。


「で、プレ―」


 びくっと体を固まらせ、獣でもみるような目のスフレに言葉を選びなおす。


「…あいつの趣味でそう呼ばせてるわけじゃないのね?」

「はい…」

「ふぅん…」

「…気になりますか?」

「ま、ね」


 しかし姫は、


「ただまぁ」


 と繋いでから言った。


「言いにくいようなことなら、無理に聞いたりしないけどね」


 気負ったわけでも、気遣ったわけでもなく、挨拶と同じぐらいの軽さのセリフ。

 スフレはその軽さに驚き、次いで微笑み、居住まいを正した。


「もし気になるようでしたら、直接ご本人に聞いてみるのはいかがでしょうか?」

「ユウに?」

「いえ、お嬢様に」

「…聞いていいもん?」

「隠しているというわけでもありませんので。ヤツネ様になら、素直にお話して下さるかも知れませんよ」

「ふぅん…」


 周りが言いにくいことではある。が、隠すような理由ではない…か、隠せるようなことでもないのだろう。


「ま、気が向いたらね」


 ユウに駆け寄った時の嬉しそうなフォードの顔を思い浮かべながら、姫はそんな風に返した。

 それから数分と時を置かずして、部屋にノックの音が飛び込んだ。


「どうぞー」


 と、借り物とはいえ部屋の主である姫が答えると「失礼します」の声と共にコウが入ってきた。そしてその後ろからユウ。どちらも会食の時の格好のままである。


「おつかれさまー」

「お疲れ様です、ご主人様。何かお飲みになりますか?」

「いや、大丈夫」

「では、おかけ下さい」


 引かれたイスにユウが腰掛けると、スフレが背中に回り込み、肩や背中のマッサージを始めるべく手を添えた。


「スフレも疲れてるだろうし、今日はいいよ」

「お気遣いありがとうございます。でも、今夜は長い夜になりませんか?」

「あー…」


 その言葉が何をさしているのかはわからないが、それで通じるモノがあるのだろう。


「でもなぁ」

「あたしなら気にしないから、してもらったら?」


 一人マッサージを受けることに気後れしているのだろうと察した姫がいうと、ユウは苦笑いを浮べながら、スフレへと申し出た。


「…頼む」

「お任せ下さい」


 スフレによるマッサージが始まると、自然と姫がコウに話をふった。


「そっちはなんかあった?」

「そっちはとは…もしかしてヤツネ様に何か―」

「あぁ違う違うなんもない。なんもなかったから、そっちはなんかあったって?」

「あぁ、いえ。こちらも特には。ほとんどの方はユウ様へのご挨拶だけでお帰りになられましたので」

「ほとんど…ってことは、そうじゃないのも?」

「その、なんというか、独特な持て成しに誘われておいでだったというか…」


 言いにくそうにユウを見るコウの雰囲気から、後ろめたいことであることを察し…もう少し具体的にいうと、スフレが顔を赤くするような内容であることを察し、


「死ね」


 姫はとりあえずそういっておいた。


「あっちが誘ってくるんだから仕方ないと思わない?」

「思わない」


 即答。


「…その寝巻き、似合ってるね。新しい魅力に気が付いた」

「死ね」


 姫の機嫌は取れなかった。


「おかしい…港のご隠居さんから秘訣を聞いたはずなのに」

「おかしいのはアンタの頭だ」

「ダメだ、この子俺の手に余る。誰かグラッセ呼んできてくれない? 助言を求む」

「はっ! 呼んでまいります」

「ゴメン嘘、コウ呼ばないで。今日はもういい加減―」


 カチャリとドアが開くと、そこにはグラッセ。


「グラッセと語り明かしたい気分なのだがいかがお過ごしでしょう?」

「教育的指導」


 発言の方向修正を試みるも時すでに遅く、グラッセの張り手がユウを地面へとねじ伏せていた。


「あら、やっぱりよく似合ってるわ!」


 そしてそんなことを気にもせず、グラッセと共に入ってきた夫人が姫を抱きしめる。


「や、ちょ、ちょっと!?」

「ふふ、いい匂い…」

「誰かー!」

「すみませんヤツネ様」

「ごめん、ヤツネ」

「コウ! コウ! 助けて!」

「は…はっ!」

「あら、コウさんが変わりに?」

「…いえ、滅相もございません」

「薄情者! 薄情者!」


 途端に賑やかになる部屋…

 一人でいるには広過ぎる、二人でいてもどこか広々としすぎていた部屋に、人の声と共に温もりが宿る。

 その温もりが緊張をほぐしでもしたのだろうか?

 誰からというわけでもなく余分な力が抜け、それぞれは今日はじめて会った者達がいるとは思えないほど、その場になじみ合った。

 部屋の中央…壁を背にするように座るユウと、その後ろに添うスフレ。

 ユウと向き合うようにベットに腰掛ける姫と夫人。

 窓際では部屋全体と外を視界に納めるようにコウが立ち、ドアの近くには外の気配に気を配るように佇むグラッセ。


「さって…ろくに説明や相談もできないままで悪かったね」

「ほんっと。何度ひっぱたいてやろうと思ったか」

「おや、コツをお教えいたしましょうか?」

「お願い!」

「やめてくれ」

「畏まりました旦那様、それではまた後日お教えするといたします」

「もしもしグラッセさん? 俺が旦那様ってこと覚えておいでですか?」

「勿論です。そこまで耄碌しているとでも?」

「あっ、そう、です、か」

「言いたいことははっきりどうぞ旦那様」

「イエ、ナニモ?」

「ほらほらユウ君、久々のグラッセさんが嬉しいのは分かるけど、話すこと話しちゃわないと」


 夫人の仕切りで、頬をかくユウ。

 すんなりと馴染みあったのは偶然にしても、ここに集まったのは偶然ではない。

 目的は、暫くここで生活するにあたりの報告と相談をするため。


「さって、何から話すかだけど…」


 ユウは自分に注目が集まる中、頭の中を整理し、順序だてて話しだした。


「まずは結果から。予定していたよりも、滞在が長引くことになった」

「んーと、一週間ぐらい?」

「いや、二週間…場合によっては一月ぐらい」

「は?」


 旅の途中に確認していた流れでいえば、グランギニオールに到着し、知り合いなどに挨拶しつつ、連れ帰るメイドに支度をさせ、三日か五日ほどで帰路に着く予定だった。

 それが倍以上どころでなく長引くといわれれば、驚くのも無理はない。


「理由は大きく二点。一点は、グランギニオールで落ち合うはずの別働隊と今しばらく合流できないから」

「別働隊…コウのお母さん達のこと?」

「そう。ユウ君達が来るよりも早くいらしてね。その時お願いごとをしたんだけど、それがちょっと時間かかりそうってことらしいの」


 コウの実母が中心となっている囮兼外交隊の目的地もグランギニオール…ただし、別ルートを通りながら。そしてユウ達一行とだいたい同じ日程で到着し、合流。その後は襲撃に対する備えとして隊を組み替え、再度二手に分かれて鈴星・神楽月へと帰路に着く予定だった。が、


「コウさんのお母様には、信用に足る相手か…メガロポリスを組み替える同盟者となり得るか見定めに行って貰ってるの」


 この中ではその話を知らなかった者…コウ、姫、スフレが目を見開いた。


「メガロポリスの組み換え…」

「え、なに、そんな大事になってるの!?」


 驚きを隠せないコウと姫に、それが冗談などではないことを告げるように、夫人が深く頷く。


「俺も最初は面食らったけど本当。で、事は慎重に、でも急を要する。で、」

「コウさんのお母様の心を見透かす力があれば、本当に協力者となりえるかが明白になる。それを見込んでお願いしたの」

「確かに母上なら間違いはないでしょう…しかし、母上が本当に?」

「そうね…彼女とは親しいとはいえないにしろ、それなりに古い付き合いなの。それにしたって普通なら受けてくれなかったと思うわ。ただ今回は事情が事情なのよ」

「…鈴星にも関係があるのですね」

「鈴星だけじゃなくて神楽月にも…いいえ、東側諸国全域に関わることかもしれないわ」


 話の大きさに或いは息を飲み、或いは顔を曇らせる面々。


「説明する。ちなみに、ここで話すことは、基本的に他言無用で」


 ユウの言葉に顔を見合わせ頷く姫達。

 そしてユウと夫人は、宴の裏…離反者たちとの会談についてを話し始めた。


「そう遠くないうちに戦争が起きる」


 ユウの不穏過ぎる発言と共に。


 お読み頂きありがとうございます。


 小説に関して誰か先生の師事を受けたとかはなく、いくつかの技法書とかサイトとかをみてるぐらいで、あとは自己流なわけですが、そんなこともあり書けば書くほど「あぁ、なるほどなぁ」と思うことがよくあります。

 特に連載ベースでここまで長く、かつキャラを大勢出したこともなかったので、改めて他の作家さんやライターさんの思惑とか技法に感心しきりです。


 だからきっと、次の(来世)のボクはもっとうまくやってくれるでしょう。


 いつやるの? 今でしょう?

 ナンノコトダカワカリマセン。


 ではまた次回。

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