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第63話 黄金雉の遺産



「べべちゃんの身柄については、まず院長に交渉してください。ラキと同様、院長の《《お気に入り》》なので、手放さないでしょうけど。

 すべてご存知の上で、不在時にお訪ねになった真意はなんですか?」


「失礼だなあ。まるでぼくが、団長の留守を狙ってきたみたいな言い方!」


 ミスリルは、ギョーム隊長の真意を、すでに読んでいるはずだ。あえて口に出させる意図はなんだろう。

 言質を取ろうとしてるのか、裏表が無いか確かめる気なのか。


「ラキーシャさんが持っていたのが、雷霆のジェネリック。彼女が雷霆の主を名乗ったのは、本当の主を守るため……つまりリュテ王子は生きていて、団長はその庇護者。違いますか?」


 ギョーム隊長が、犯人を追い詰める探偵みたいな目つきでぼくを見た。


 この流れ。もしかしたら、ぼくに関わった人たちも、巻き添えになってしまうんじゃ……。

 

「団長は何も言わないが、王の、魔剣や団長に対する執着は異常だ。冒険者や配下の処刑、精霊の森への迫害。その非道ぶりは目に余る。

 我が隊は、王子がいなければ全滅していた。

 ならば、拾った命を王子に預けたくなるのも、当然ではないでしょうか?

 ぼくと配下は、団長の指揮のもと、リュテ王子を擁立する覚悟があります!」

 

 まさかの前王過激派――!


「リュテ王子、どうぞぼくを配下に!

 危険も顧みずに女の子を助ける勇敢さと無謀さは、まさに王の器!

 そして、助けた女の子より可愛い女装!

 これは民に受けます!」


 ギョーム隊長が、ぼくの両手を握って離さないよ。え、なんか怖いんだけど。


 あれ……。

『前王過激派』……?


 こんな人、前にもいた気がするな?

 うまく、思い出せない。


 なんだろう、すごく大事なことだった気がするんだけど。


「ひとまず、お引き取り下さい!」

「リュテ王子の意見をお聞きしたいんだ!

 あなたのせ……」


 バキッと派手な音がして、ギョーム隊長がよろめいた。ミスリルが、彼を殴ったんだ。


 ミスリルは青ざめて少し震える手で、ぼくを後ろに隠すようにした。


 この冷静な人が暴力を振るうからには、ギョーム隊長の考えてたことは、よっぽど不快な内容だったんだろう。

 

「痛いなぁ、まったく。……でも、今ので確信しました。『べべちゃん』は、普段冷静で感情を見せない君を、こんなに熱くさせる存在だということだ。

 望んでいた回答を得られたので、今日のところは帰りましょう。それでは、皆さんご機嫌よう」


 ぼくは、叔父上と敵対するつもりはない。

 そう告げたかったけど、ミスリルが首を横に振ったから、言葉にはしなかった。


「あっ、はい。……さようなら」


 ギョーム隊長は良いものを見つけたような、ニヤリとした顔でぼくを見た。


「すごい音だったけど、骨、大丈夫か? 人を殴ったことなんかないだろうに」


 エギルはミスリルの手を心配してたけど、


「ええ、平気ですよ。ところでリュテ。私とエギルに、楽しい土産話があるのでは?」


 ミスリルは意外と図太いみたいで、もう、けろっとした顔だった。


 

             *



「これが、黄金雉の黄金ですか?」


 ぼくは、遺跡で拾った金色の石を総会所の机に置いた。


「うん。黄金雉が人を黄金に変える噂は、催眠だったよ。でも、この金塊はぼくの目にも金色に見えるんだ。

『災禍の黄金』みたいな呪い効果が他にあるのか、本物の金なのか、その眼鏡で見てくれない?」


 ミスリルは、金塊を色んな角度から凝視した。セイルもオービスも、エギルも、ミスリル以上に真剣に、その様子を見てたよ。


 ミスリルが最後にすごく残念そうにため息をついたから、みんなもがっかりした。


「本物の金みたいですね。魔法も呪いもない、ただの金です……」


「えっ、本物の金なの!?」


 でも、すごく残念そう!


「えっ、どういうことだ!? じゃあ、あの遺跡一帯の黄金の山……!?」


「ええ、普通の黄金ですよ。カラスなんかと同じで、ピカピカしたものを集める習性があるのでしょう。ああ、ゾクゾクするような呪いを期待していたのに……!」


「やったー! あれ、拾ってきたら、俺たち大金持ちだぞ!?」


「なんでおまえが喜ぶんだよ。あの土地は、院長の領地だろ?」


 修道院や教会は、貴族から土地の寄進を受けることが多い。先生はその意味では大領主だ。

 その中には、今回みたいなワケアリ物件も多いわけだけど、災い転じて福となった。


「堅いこと言うなよ。まだ誰も本物だって知らないんだし、たくさんあるんだ。院長が戻る前にこっそり拾って来ようぜ!」


「おまえなぁ……」


「いいえ、良い案だと思いますよ」


 オービスが呆れる横で、ミスリルが珍しく賛同した。


「院長は陛下をはじめ、四方八方に嫌われていますからね。ラキの件もあるし、黄金のことが知れれば、領地がいつ接収されてもおかしくない。取れるだけ取って、隠しておくのも悪くないです。魔剣作りには、資金が必要ですからね!」


「お手柄だぞ、リュテ!!」

「ああ! よくやったぞ!」


 ぼくは、セイルとオービスに頭をくしゃくしゃにされた。


「現金な奴らだな」


 といいつつ、魔剣の資金に困らなくなったエギルも嬉しそう。


 ミスリルは部屋に戻ると、自作のアイテムボックスをかき集めてきた。


 帰ってきて休む暇もなく、ぼくたちは全員で黄金採集に向かった。


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