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第62話 独占契約



 噴火が収まると、魔力が強いこの裂け目遺跡には魔術チームにより新たな結界が張られた。

 これで討伐隊の仕事はほぼ完了し、撤収することになった。


 ぼくは、ギョーム隊長にお願いして、遺跡の周辺に雑然と積み上がった黄金の石を、研究のために持ち帰ることにした。


「なあ、それ持ち帰って、本当に大丈夫か?」

 

 セイルとオービスが疑わしそうにぼくを見ている。


「大丈夫だよ。隊長にサンプル採取の許可は取ったし!」


 ぼくは、ミスリルが作った布袋に、拳ほどの大きさの金塊をひとつ拾って詰めた。袋の中はアイテムボックスと同じで、収納空間になってるんだ。


「いや、そういう意味じゃなくて。魔力で催眠効果あったり弊害はないのか?」


「それをミスリルに調べてもらうんだ。この金塊はぼくの目にも、ちゃんと金塊に見える。本物なのか、精霊眼を誤魔化すほどの力を持った何かなのか調べたい。仕組みを解明して、本物の金を作り出せたらいいと思わない?」


「錬金術ですか……おもしろい! ぜひ見てみたいものだね!」


「うわあっ!!」


 ギョーム隊長が、いつの間にか後ろにいた!


「討伐も終わったことだし、ミスリル君に聞きたいこともあるから、このまま騎士修道院にお邪魔しちゃおうかなぁ?」


「「「えっ!?」」」


(リュテ! おまえのせいだぞ、毎度毎度、問題ばっかり起こしやがって!)


(えっ!? ぼくじゃない、トニトルスが!)


(ふたりとも声がでかい! 丸聞こえだぞ!)


 結局、ギョーム隊長はぼくたちと一緒に騎士修道院へついてきてしまった。



          *


 修道院に帰ったぼくは、早速ミスリルとエギルに報告に行った。


 ラキが雷霆ジェネリックを持ち去ったこと。

 王さまの不興を買って吊るされたのは、本物ではないこと。

 これは大切なことだから、先にふたりを呼んで総会所で話した。


「……そうか。おまえの身代わりになることで、王の注意を逸らしたな」

「ええ。まだやることがあるというなら、待ちましょう。頭のいい子ですから、心配はいりませんよ」

「……うん」


 ふたりは、ぼくを責めたりしなかった。


 ぼくがもっと慎重だったら、ラキとは今もここで一緒に笑い合えたはずなのに。


 そして、ふたりの割りきり方が早いのは、ラキへの信頼の裏返しだ。


 ふたりの言葉を信じよう。


 ラキは、きっとここに帰ってくる。


 


 そこに、ノックと同時にドアを開けて入ってきた人がいる。


「お久しぶり、ミスリル君。べべちゃんの『雷霆ジェネリック』の話に興味が湧いてね! 無理に同行させてもらったわけだよ!」


 エギルとミスリルがはっとして顔を見合わせ、ぼくを睨んだ。


 ギョーム隊長だ。


 ミスリルは、何事も無いような顔をして商品説明をはじめた。


「ああ。お久しぶりです、ギョームさん。

 あれは、まだ試作品でしてね。この子とラキが勝手に売り込みに行ったんですよ。

 ご存知でしょう、うちの院長は金の亡者なので、下の者にも悪影響が出てしまうんです」


「なるほど……」


 ギョーム隊長は、細い目を見開いた。


 彼がこの表情をしたときは、面倒な突っ込みの予備動作だよ、ミスリル!


 ミスリルがぼくに頷く。


 精神感応薬を飲んでるんだ。

 ぼくの思念を読み取ってくれている。


「討伐でのあの活躍は見事なものだった! 一騎当千とはあのことでしょうな。我々聖騎士団の精鋭が苦戦した黄金雉たちを一撃で粉砕してくれた。ジェネリックとべべちゃんがいなければ、部隊は全滅していたでしょう。

 完成したらぜひ、購入させて頂きたい。それも、独占契約で」


「大変ありがたいお申し出ですけど、それは、困りますね。これは自慢なのですが、先日の討伐でも、『雷霆ジェネリック』は竜2体を一刀で屠る大活躍を見せたのですよ。

 あの伝説の雷霆さまをモデルにしたのですから、当然なのですけど!

 ああいった僻地での討伐でこそ、ジェネリックは真価を発揮すると思います。まずは冒険者への流通で、騎士団への独占販売はありません」


 なんか、途中でトニトルスを讃えながらドヤったよ。


 でも、あまりお利口じゃないトニトルスは、


『この裏切り眼鏡め! その目は節穴か! 

 あれは複製ではない! 本物の我だ!』


と、ミスリルの意図を読めずに怒ってる。


『主よ、お望みとあらばこの者の口を封じてみせましょう。灰になれば余計なことは申せませぬぞ』


 フラミゲールが、すいっとギョームさんの前に飛び出した!


「それは駄目だっ!」


 場が静まり返った。


 あっ!? 


 ……ぼく、また、やっちゃったな。



「……駄目とは、何についてかな? 

 文脈からすると、騎士団にも、ジェネリックを売って頂ける感じで?」


「べべちゃんのヒステリーですよ。大人の話に混ざりたいのは分かりますが、演習で疲れたでしょうから、部屋で休みなさい」


 ぼく、ヒステリー持ちなんだ。

 ……気をつけよう。


「ちょっと待ってミスリル君。ぼくは、個人的にべべちゃんにも、とても興味があるんだ。

 あの精霊眼と双剣の技量は素晴らしい。ぼくの隊に是非とも欲しいんだけどね?」


 なんだって――!?

☆ギョーム隊長の思惑とは――

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