↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/72

第61話 火山の玉座 リュテの視点



  魔術チームが、みんなの状態異常を解除した。

 

「あれ、私、黄金にされたと思ったのに!」

「俺も……!」


「はい、皆さん落ち着いて。さっきのは集団催眠です! 黄金雉の血には魔力があるようです、水魔法と浄化! 残りの黄金雉は7体!

 慎重にやれば勝てる! 耐えてくれ、皆!」


「「「「「「「「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」」」」」」」


 ギョーム隊長の檄で気力を取り戻した騎士たちは、再び統制を取って攻防に徹した。


 地面や隊員についた黄金雉の血は浄化され、気絶していた騎士たちは意識を取り戻した。

 多少の混乱はあるものの、他に異常はなさそうで良かった。


 爆炎と氷槍が、結界内で右往左往する黄金雉を追う。


「よし、1体落とした!」


 誰もが空を見上げていた。


 誰の目にも勝利は目前に見えていたし、魔法障壁は上空の強度を優先して展開されていた。


 そして、防御チームの魔力は、もう残っていなかった。


「きゃあ!!」


 闇に紛れた黒い狒々たちが、障壁の手薄なところを狙い、いくつもの岩を投げつけてきたとき、魔法障壁はバリッと音を立てて消えた。


 闇のなか、狒々たちが突入してきた。


「剣士、弓隊を守れ! まだ黄金雉がいる、前に出すぎるな!」


 狒々の投げた大岩を、剣士たちが斬る。

 砕けた岩を避けつつ、みんなが防御態勢をとるなか、反対側から駆け寄った狒々2体が、一瞬で女性騎士2人を連れ去った。


 セイルの精霊弓が狒々の脚を射抜き、オービスが別の狒々の首をはねる。


 難を逃れたかに見えた女性騎士のひとりを、黄金雉の足が鷲掴みにするのを見て、ぼくは飛び出していた。


 双剣を抜き、黄金雉の足を横薙ぎにする。


 バターを斬るような手応えのあと、蹴爪の生えた足がふたつ落ちた。


 切れ味、鋭すぎてびっくり!?


 黄金雉が剣に吸い込まれる瞬間、切り口から垂らした血飛沫が、ぼくの顔にかかる。


 エギルが作ってくれた双剣には、ミスリルが捕獲機能をつけてくれている。


 効率的に魔剣を作るため。

 そして、なるべく殺さず捕らえるためにだ。

  

 剣の性能が良すぎて、捕獲機能が働く前に対象を死なせる可能性があることは、ふたりに報告しておこう。

 まだ、改良の余地がある。

 


 ……さっきの血が少し目に入った!

 催眠は影響ないけど、視界が悪い。


 対応が遅れ、別の黄金雉が飛来して爪を伸ばすのを、ぼくは躱し切れなかった!


『あるじぃぃいい!!』


 ドン! 


 パァン!!


 ドドォォォオオン!!


 先生が張った結界が壊れた!


 トニトルスの雷撃は、一閃で黄金雉を焼きつくす。


 精霊弓の矢よりも早く飛んで、狒々たちを斬り払っていく!


 ひときわ体格の大きな狒々が裂け目に飛び込んで逃げるのを、トニトルスが追う!


「えっ!? 雷の……魔剣!?」

「なにあれ、つっよ!」

「俺たちがあんなに手こずったのを、一瞬で」

「あれって、まさか!?」


「「「「「「「「「「「「「「「「雷霆!?」」」」」」」」」」」」」」」」


「えっ、雷霆の主がここにいるってこと!?」

「それ、この前見た! ラキさん!」

「でも、ラキさんは王宮で……」

「え、どういうこと!?」


 騎士団の皆さんがザワザワしだした!


 まずい!! 助けてくれたのはありがたいけど、これはまずいよ!


 雷霆の伝説は有名すぎる! せっかくラキが囮になってくれたのに、台無しだ!!


 トニトルスが裂け目に飛び込んだ!


 裂け目のなか、火砕丘の上に狒々がいた。

『火山の玉座(バルカンズ・スローン)』と呼ばれる噴火口にマグマが冷え固まり、蓋になってるところだ。


 トニトルスが狒々を狙って突っ込む!

  

 張り切りすぎたのか、『玉座』が粉々に!


「やった、のか!?」

「えっ、やったの!?」


 ギョーム隊長はじめ、みんなが裂け目に駆け寄ろうとした。


 ドドォオン!!


 でも、爆音と衝撃が凄まじかった。

 みんなが耳を塞いで座り込んだ。


「うわっ!?」

「きゃあ!!」

「なんだ、この揺れ!?」

「地震か!?」

「うそ、あれ!?」

「みんな、逃げて――!!」


 裂け目から、真っ赤な火柱が上がった!!

 噴火したんだ!!

 トニトルスが蓋を壊したから!!


「障壁を張りつつ退避!!」


 ドカーン!!


『うぉおお!?』


 溶岩と一緒になにかが飛び出して、トニトルスを撥ね飛ばし、こっちに飛来した!


 灼熱の溶岩の中から飛び出してきたのは、優美な細身の長剣だった。


『我は浄火、真の名はフラミゲール!

 主にお仕えしたく参上つかまつった!』


 なんか増えた……。

 やってくれたな、トニトルスっ――!?


 …………

 ……



             *



 聖騎士団の特別討伐隊の皆は、疲労困憊ながら、なんとか全員が逃げおおせた。

 セイルとオービスが助けたお姉さんふたりも、無事だ。


 裂け目から離れた崖の上。

 全員が、呆然と噴き出す溶岩の赤い柱を眺めていた。


「……ねえ、べべちゃん。『建国記』って知ってるかな?」


 ギョーム隊長が細い目を精一杯見開いて、ぼくを正面から凝視する。


「ふぁっ!? えっ、さあ……??」


「『真の王が現れて浄火の剣が主を決めた時、『火山の玉座』から火柱が立つ』という伝説があるんだ。それが、この火山遺跡で……」


「へ、へぇえ?」


『主、聞こえていますか! 我の名はフラミゲール! どうか我の名を呼び、お手に取って下さい!』


『貴様、急に出てきて図々しいぞ!? 愛剣の我でさえ握られたのは、まだ二度なのだぞ!?』


『ふ。それは、愛剣とは言わないのでは?

 こう言ってはなんだが、貴殿は武骨にして粗暴。主の華奢なお手には、我のような優美な剣がふさわしい』

『ぐんぬぅう!!』


 必死に誤魔化そうとするぼくの目の前に、トニトルスとフラミゲールが、ふわふわと浮いている。


 なんかバチバチ、ゴウゴウしてきた。


「その剣、どう見ても『雷霆』と『浄火』の言い伝えどおりだけど、君は一体、何者なわけ?」


 考えろ!

 なにか誤魔化す方法を!


「ぼ、いや、べべちゃんは……」

「君は?」


 ぼくは覚悟を決めて、トニトルスとフラミゲールを掴んだ。


「魔剣工房の営業さんです!

 これは、良くできた複製魔剣で、この遺跡のロケーションを最大限に利用した売り込み戦略の一環でして! うふふ! 

 聖騎士団で、大量注文してくれると嬉しいな!」


 なにを言ってるんだ、ぼくは――!!


 騎士団の皆さんは、当然納得していない。

 むしろ、ぼくが剣を握った瞬間に、驚愕と納得の表情を見せた。

 まずい! 墓穴だった!


「ほほう、実に興味深い! じゃあその複製、ちょっと貸して……」

「駄目です! 死ぬ気ですか!?」

「商品なんでしょ?」

「と、盗難防止機能ですよ! 契約が済んでないから駄目です!」


 謎の機能が足されてしまった!

 ジェネリックに搭載可能かミスリルに聞いてみよう!


「ふぅん? ま、そういうことにしておきましょうか」


 ふう、なんとかやり過ごしたぞ。


 でも、ギョーム隊長は静かに寄ってきて、誰にも聞こえないように耳打ちしたんだ。


「ところでリュテくん、グラミス……いや、今はミスリルだったかな。彼は元気ですか?」 

「うん、元気だよ!」


 ぼくは、ミスリルの本名を知ってる人がいたのが嬉しくて、元気に答えてしまった。


 セイルは噴き出すのを必死でこらえ、オービスは切ない表情で顔を覆った!


 あっ、これ引っかけだ!

 本名バレしちゃった!!


 どうしよう!

 心理戦には気をつけろって、訓練で散々言われてたのに!

 また先生に首を絞められちゃう!!

 

☆トニトルスの相棒、フラミゲールがついに復活。

リュテを王位につけたがる数々の伝承から、彼は逃げ切れるのか?


読んでくださりありがとうございます!


おもしろい! と思ったら★レビューやブックマークで応援してください!作者が執筆するためのモチベーションになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。