第6話 仲間との夕食
ラキの夕食仕込みの手伝いを終え、ぼくはみんなと同じ食卓についた。
いつもは先生とラキと同じ小さな食卓で、ラキがいないときなんかは、先生と二人きりで無言で食べてた。
先生がいるときは、カラムにパンを取られないから、それはそれでありがたいんだけどね。
『渡した本を読んだか確かめる』って、突然クイズが始まるから落ち着いて食べられないんだよ。
……クイズが大好きなのに、顔が怖くてみんなに相手してもらえないのかも。
でも!
ここに来て五年になるけど、みんなと食事するなんてはじめてだ!
うれしい!
セイルがメインの大きな食卓で、修道院の仲間と役職を教えてくれた。
「オービスはみんなの兄貴的な存在だ。優しいけど怒らすと怖いから気をつけろよ?」
「おまえが一番気をつけろよ?」
うん。オービスは、ぼくが何度やってもダメだった鋼鎧蛇を力技でぶったぎったパワー系の人だ。絶対に怒らせてはいけない。
セイルは蜂蜜みたいな金茶の目と髪のいたずらっ子。オービスは赤い髪の大男。
関係性でいうとオービスは、セイルのつっこみとブレーキ担当っぽい。
「ミスリルは科学者で魔術師。訓練での魔法サポートで会ってるよな?」
ミスリルは長い紅茶色の髪に、眼鏡をかけた青年。目が合うと会釈をしてくれた。
ぼくが訓練で気絶した時、先生の邪魔にならない絶妙な角度から水をかけてくれる人です。
「で、水色髪のイケメンが、刀匠のエギル……あれ?」
紹介中なのにエギルは立ち上がり、パンとスープ皿をもって、どこかに行ってしまった。
前王派の子息なら、王子のぼくに恨みをぶつけたい人だっているのかも。
しかたないけど、あまり感じはよくない。
「エギルは王族嫌いなんだ。リュテとは関係なくて、王家に恋人を取られたっぽい!
気にすんな。おまえがいい奴だってわかれば、向こうからグイグイくるって!」
「……うん、ありがとう」
セイルは話しながら、隣のテーブルで後片付けするラキの方をチラチラ意識して落ち着かない。
エギルが立ったあとに別の修道士が座ったのも気にせず、ラキを手伝いに行ってしまった。
セイルの気持ちは常にダダ漏れみたいだ。
修道院のみんなは、セイルをやんちゃな末っ子のように温かく見守っている。
うん。ラキは可愛いから、大好きになっちゃうのはわかるよ。
でも、ふたりを見るとなんかちょっと、胸がザワザワするな。
ぼくの正面に座った人は、灰色の修道士服を着た他の修道騎士とはちがい、着古した焦げ茶色の粗末な服を着たおじさん。
「ええと、あなたは……?」
「ベネディクタス!」
目が合うと、ベネディクタスは、
「お目にかかれて光栄です、我が主」
と微笑んだ。
主はまずい!
謀反を疑われてしまう!
知らない人なのに、とっさに口をふさいじゃったよ。
だって、先生に聞かれたら殺される。
修道院で問題が起きたら、先生の落ち度になってしまうから。
……たまにいるんだ。ぼくを担ぎ上げて前の王家を再建しようとする人。
そういう人は、いつも先生に見つかって、いなくなっちゃうけど。
嫌なんだ。
ぼくのせいで、人が巻き添えになるのは。
だから、極力人と関わらず、話さないように気をつけてきた。
ベネディクタスが前王過激派なら厄介だけど、話しかけられたら無視できない。
幽閉歴が長いから、人に話しかけられると嬉しくて反応しちゃうんだ。
……まあ。
今日は監視のカラムも寝てるからいいか。
彼は窓辺で熟睡してる。窓が壊れたから蚊に刺され放題で、ちょっと可哀相。
「よろしくね。ベネディクタスは、みんなと服がちがうけど、なんで?」
「私は騎士でなく、あなたのお世話をするために使わされた者です。困ったことがあればなんなりとお申し付けください」
修道院の新しい世話係かな。
……くらいに、この時は思ってた。
ぼくは、まだ知らなかったんだ。
ベネディクタスとの出会いが国の根幹を揺るがし、ぼくの命を脅かす大災難を招くなんて。
*
今日も地下から声がしてる。
「……我は埃まみれで泣き暮らしているというのに、いいご身分ですな、あるじぃぃいい!!
我は嫉妬で狂い死にしそうです……っ!」
……とうとう泣き出しちゃった。
地下牢に閉じ込めた院長のこと、めっちゃ恨んでるみたいだね?
☆次回、ついにあの男に天罰……?




