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幽閉王子と魔剣の国~魔剣に溺愛されたぼくは誰も殺さず伝説の王になる~  作者: キマモリニコ
第1章 箱入り王子は仲間をつくる~魔剣と出会うまで~
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第5話 セイルとオービスの視点(2) 



 翌日。


 セイルとオービスが次にリュテを見かけたのは、夕食準備のさなかの食堂だった。

 

 リュテは、カラムからラキをかばって蹴られていた。倒れてもまたかばい、また蹴られる。

 

 絶対に暴力をふるわず、抵抗もしない。

 

 院長の言葉に二人は納得した。


 鋼鎧蛇を倒す力があるのに要領が悪く、ラキを庇って逃げられずにいる。早死にしそうなタイプである。


「最近、あいつ、よく絡まれてるな」

 

 もちろん、カラムの意図的な釣(・)り(・)である。リュテをいじめれば、忠義に篤い前王派を炙り出せる、といったところだ。


(安直な男め。そんな罠に引っ掛かる奴が、聖騎士団にいるわけがなかろう)

 

 腕組みしたままカラムを鼻で笑うオービスの横から、


「ラキが危ない!アピールのチャンス!!

 ほっとけねーしな、王子いい奴そうだし!」


セイルが飛び出してしまった!


「本音出ちゃってるぞ、セイルー!」

 

 突っ込みどころが多すぎるセイルに、オービスもやや混乱している。

 

 セイルがカラムにパンを投げつけた。カラムの後頭部を直撃して跳ね返ったパンでガラスが割れる。


 ラキが焼いたパンは酵母を使わないので硬くて重い。殺傷能力が高い投擲武器《とうてきぶき》である。


「パンを無駄にするなー!!」

 

(とにかく、カラムは気絶させよう!) 


 オービスが神速のパンチでカラムを吹っ飛ばす。


「大丈夫かラキ!? そしてついでの王子様、えっと名前なんだっけ?」


「本音ぜんぶ出てるって!!」

 

 ラキはセイルが暴走し、オービスが突っ込むスタイルに慣れている。


 笑いながらも厳しめに突っ込む。


「ありがとうセイル、オービス。助かったわ。

 でもパンは投げちゃダメよ。今日セイルのぶんのパンないから!」


「えっ!? 助かったのに!?」

 

 リュテへ振り向いたセイルの目線が、


(助けてやっただろ。ラキの前でかっこいい俺をほめろ!)


といっている。


「う、うん!? ええと、ふたりとも、朝も助けてくれてありがとう。でも、ぼくと話したら謀反《むほん》を疑われるから……」

 

 リュテは空気を読み、礼を言って去ろうとした。

 

 いつも食堂や礼拝堂ですれ違っても空気のように扱われることが多い。知らない人との緊張もあいまって会話が続かないのだ。


「大丈夫だろ、監視寝てるし!」


「……ねっ、寝てるね(!?)」


 能天気と豪胆を兼ね備えたセイルに、リュテは少し引き気味だ。


「寝てるし、じゃないだろ。誰のせいだと思ってる。あと、おまえも片付けろよ。ああ、もう、ガラス高いのに! 院長になんて言い訳すればいいんだ!!」

 

(セイル、おもしろい。オービスは弟の尻拭いに慣れたお兄さんタイプっぽいな)


(カラムにはいつもやられてるから、静かになったのは、ちょっと爽快かもしれない)


 リュテは二人に感謝した。


「俺、セイル! いじめられそうになったら俺に言えよ。今まであんまり話したことないけど、長いこと一緒に住んでて兄弟みたいなものだし。これからは仲良くしようぜ!」


「俺はオービス。セイルが面倒を起こしそうな時は、俺に言え」

 

 セイルの単独行動ならまだしも、リュテが巻き添えになっては可哀相だと、オービスは腹を括った。


「よろしくね。ぼく、リュテだよ」


 リュテは十二歳になるはずだが、ストレスか栄養状態が悪いのか、小柄で年齢よりも幼く見える。

 

 謀反で親と引き離され幽閉された、幼い王子。不遇なはずなのに無邪気で愛らしい笑顔が、見る者に健気さを感じさせる。


 皆で床に散らばったガラス片を掃除中、リュテはラキが汚れたパンを片付けるのを名残惜しそうに見ていた。


「ねえ、あのパン、まだ食べれると思う? 捨てるなら、もらってこようかな!」


「えっ、食うの!?」


「危ないからやめとけ。ガラスの粉が口に刺さると痛いぞ。足りないなら俺のを分けてやるから」


 セイルとオービスはリュテを止めようとしたが、


「食べるよ。せっかくラキが早起きして焼いたパンだし、材料が勿体ないもの。


 それに、ガラスは強い酸には溶ける性質があるんだ。ぼくはつねに腹ペコで胃酸が強いから、余裕で消化できる!」


 もちろん、ガラスが胃酸で溶けることなどない。食い意地と貧乏性である。

 

「いや、えっと、……そうなのか?」 


 リュテの謎理論に、珍しくセイルが押し切られた。


(なあ、妖精王子の中身ワイルドすぎね?)

(ワイルドというか可愛いのに残念だな?)

 

 この日、二人のなかで悲劇の幽閉王子という概念は刷新された。



             *



「はじめてのご友人、大変めでとうございます、主!! ……いや、待て。よく考えると我よりも先に主に名乗るとは、嫉妬が止まらぬ!

 ぐぬうぅぁあ! 早く呼んでくだされ主!」



             *



(……あっ。地下牢のおじさんがまた騒いでる) 



 リュテが聞く野太い声は地下から響いて来る。


 ただし、そこは地下牢ではない。 


 この国の神話時代の魔剣が眠る、聖器庫からだ。


「我は雷霆《らいてい》! 

 ミレグラディアトニトルス! 

 早く我が名をお呼びくだされ、あるじぃぃぃぃぃいい!!」


☆次回、夕食回。また新たな仲間が?



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― 新着の感想 ―
最初から読み直し中です(リライト工事中とのことで) すごく読みやすい、そして吸引力が増してます! この話、設定次第だと暗くなると思いますが、リュテくんが何せ天然妖精王子さま。 復讐は誓うけど、何処…
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