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幽閉王子と魔剣の国~魔剣に溺愛されたぼくは誰も殺さず伝説の王になる~  作者: キマモリニコ
第2章 魔剣工房の発足
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第46話 ドラゴン討伐(1)

「今日から聖騎士団の軍事演習がある。

 俺が留守の間は、留守の者におまえの実習を任せる。それぞれの戦闘スタイルを日替わりで学べ」


「はい、先生。いってらっしゃい」



 従騎士認定試験から今日で十日。


 その間にいろいろありすぎて忘れてたけど、ぼくは従騎士《スクワイア》―――聖騎士《パラディン》の見習い騎士になったんだ!


 日帰り旅行みたいで楽しみ!


 騎士修道院で先生が育てた騎士たちは、いつも王都に引き抜かれていく。


 だから、修道院は本部だというのに慢性的に人手不足が続いてる。


 今日の軍事演習では先生とセイルが出掛けるから、ぼくの指導教官はオービスになったそうだ。


          *


 

「リュテ、ちょっとこれ振ってみろ」


 エギルに呼ばれ、ぼくは訓練で愛用してるのと同じサイズ感の双剣を渡された。


「これって……」


「言ったろう。合格祝いに作るって。ギルからおまえの戦闘スタイルはだいたい聞いた。

 使いにくいところがあれば、微調整しよう」


「わあ、いいの!? ありがとうエギル!!」


「俺に二言はない」


「エギルが雷霆の複製以外にも、ぼくのために! ぼくのことを考えて、ぼくのために作ってくれた剣だ! やったあ!!」


「や、やめろ。こっちが恥ずかしくなる!」


「あはは! よかったね、リュテ!」

「ふふ、よかったですね」


 ラキとミスリルに笑われた。


 練習用の剣は大人用で大きかったけど、エギルの剣は柄がぼくの手のサイズにぴったりだ。

 

 振ってみると軽くて、風が抵抗なくスパッと斬れる感じ。


「エギル、もしかしてすごい職人さんだね?」

「気づいちゃったか?」


「エギルは王の認可状持ちの鍛冶ですからね」


 そうだった。

 エギルは、メーシェにそう言ってた。


「ありがとう。汚さないように大事にする!」

「いや、普通に使えよ」



 エギルは間違いなく素晴らしい剣を作ってくれた。

 

 でも、だから、ぼくは少し不安で戸惑っていた。


 誘拐された日、ぼくは人を傷つけることができないと気づいたからだ。


 ドラゴンは巨大。しかも知能が高くて獰猛。

 魔物の中でも最上位の討伐難易度だ。


 もしぼくが足を引っ張るようなことになれば、オービスも無事ではいられないかもしれない。


「あっ、そうだ。お父さんから預かり物。

 討伐前にピアスを一組これに変えろって!」


「これは……?」


「お父さんのと同じ対精神感応ピアス!

 半樹霊《ドライアド》がつけても効果あるやつだよ」


 ラキの手の中の包み紙には、樹霊の思念を遮断する金色の石のピアスが入ってた。


「先生がぼくのために! やったあ!」


 以前先生に付けられた、体内に滞留した魔力を吸い出すための透明な魔晶石のピアスを外し、金色のに付け替えた。


 ……違いとか、ぜんぜんわからないけど。

 でも、これでぼくも戦える!


 ベネディクタスとの一件以来、ずっと考えてたんだ。

 

 庇われるだけ、足を引っ張るだけの子供でいたくない。


 ぼくは、ぼくの存在意義を証明してみせる。


 ちゃんと、戦闘力でも役に立つところをみんなに見せなきゃならないんだ。



          *


 聖騎士の黒い騎士服をまとい、銀色の仮面を装着。腰にはエギルの双剣を帯びる。


 ここに住みはじめて修道士服《ハビット》以外の服を着るのは初めてだ。


「ドラゴンは見たことあるか?」


 ミスリルに手伝ってもらいながら旅装を整えるぼくに、オービスが聞いた。


「ないよ。でも本で読んだから知ってる」


 竜族は地面を歩く恐竜、飛竜、炎竜の順番で難易度が上がる。

 

 そして、今回討伐依頼があったのはその最高難易度の炎竜、それもツガイだった。




          *



 スミレギス王国の北、ミュスカデ帝国との間には険しい山脈が走っており、ここが竜の営巣にうってつけの繁殖地となっていた。


 つまり、修道院から歩いて二日の距離だし、山を目指す険しい道のりだ。


 普段歩き慣れてないぼくは、実はこの徒歩移動の半日だけでもう大分疲れてる。


 でも、初めての討伐見習いだからといってオービスの足を引っ張るつもりはない。


 愚痴は絶対に言わないんだ!


「山道歩き慣れてないだろ。少し休んでいくか?」


「ううん。オービスのペースに合わせる」  


 竜は大喰らいだ。

 庶民の家ほどの大きさの炎竜が村を飛び回っているのなら、被害が拡大しないうちに着かなくてはならない。


『無理は良くありませんぞ、主! この大男の背中にでも乗ればいいではありませんか!』


「ついてこないでってば。おまえがいると目立つんだよ。王さまに密告でもされたら、また役人が来ちゃうでしょ?」


『ご案じめさるな。次は役人らを丸焦げにしてやりましょう』


「絶対ダメだから。余計なこと考えなくていいから、静かに見守っててよ」


 トニトルスが無理やりついてきてしまった。


「はーい、私は少し休みたーい!」


 ラキまでついてきてしまった。


 無理やりついてきたあげく、しょっちゅう休憩したがる。


 まあ、ぼくも本当はすごく疲れてるから、ラキの甘えんぼうは、とても助かってるけど。

 

 ラキと目が合うと、彼女はにへっと笑った。

 

 甘えんぼうだけど可愛いから仕方ないよね。



 国境山脈沿いの辺境の村、イス。 

 炎竜が村を襲いだしたのは三日前からだ。


 通常のツガイならば一体が巣を守り、もう一体が食糧を狩る分担制。


 なのに、巣を捨てたのか村の上空を二体で忙しく飛び回るようになったという。


「オービスは、竜と戦ったことあるの?」


「あるよ。竜退治といえば昔から聖人や聖騎士の仕事だからな」


 オービスは、騎士修道院で一番の長身。そして、筋肉質の恵まれた体躯の持ち主だ。


 ぼくとあまり変わらないくらいの大きな剣を背中に抱えてる。


 こんなでっかい剣、素早く振れる人いるのかなってサイズだけど、鋼鎧蛇《ロリーカ》をスパスパ斬ってたの実際に見たことあるしね。




 ぼくたちは一日目の旅程を終えて、宿屋に宿泊。早朝に出発し、目的のイスには午後に到着した。


読んで下さりありがとうございます!

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