第45話 魔剣複製機
「こんな箱で、ほんとうに俺の剣が複製できるのか?」
エギルは不信感丸出しで、いつも通り捨て犬のような目つきで装置を見てる。
無理もない。鍛冶師が七日七晩かけて打った銘剣を魔法とはいえ即座にコピーするなんて、鍛冶の沽券にも関わることだろう。
「なにごとも試してみないと分かりませんね」
ミスリルの作った複製機は、上が開く大きな箱の形をしていた。
剣の長さよりやや小ぶりな箱の中に、ミスリルが雷霆の複製を入れて蓋を閉じる。見かけよりも中が広いんだ。
中にはアイテムボックスと同じ原理の空間拡張や、『元素組成解読と生成を自動化させた』とかいう、ぼくには良くわからない魔法の仕組みが詰まってるらしい。
箱と蓋の隙間から一瞬、黄緑の光が漏れた。
ミスリルが箱からエギルが打った雷霆そっくりの複製を取り出した。
「成功ですね。完璧に複製できたと思います」
「ああ!? ちょっと見せてみろよ!」
エギルがキレ気味にミスリルの手から剣を取り上げる。
鞘から剣身を抜き、光にかざしたり裏を見たりじっくりと検分した結果。
「くそ、なんでだ。本当に良くできてる……」
エギルが肩を落として椅子に座り込んだ。
「すごいよ、ミスリル! ほんとに天才だ!」
「ええ、自分でもそう思います」
つきあってみて分かったけど、ミスリルは自己肯定感がとても高い。でも本心からそう思ってるから嫌みに感じない。
「あとは雷霆さまから計測した雷撃系の魔法攻撃を付与した法陣と……」
パアン!!
大きな音を立て、複製機が内側から弾け飛んだ。トニトルスが箱の中に入り、雷撃で壊したんだ!
「トニトルス!! おまえ、なんてことを!
ミスリルに謝れ!!」
『主が悪いのですぞ。新しいだけで何もできない魔剣もどきを作り、用済みとばかりに我を捨てようとするからです!!』
「えっ?」
「どういうことだ?」
ミスリルとエギルが責めるような目でぼくを見る。
「トニトルスは我儘すぎる。こいつがいたら、絶対いつかみんなに危害を及ぼす。……レプリカができたら捨てようと思ってたんだ」
「なにを考えてるんだ。雷霆さまは王権の象徴だぞ!? みすみす手放してどうする!」
「そうです、まずは話し合いで解決を。ね?
複製機なんて、また作り直せば済むことですし!」
トニトルスめ。ふたりが自分の信奉者で止めてくれると分かってて、チクったな!
『ふふん。謝るなら今のうちですぞ主!
今は雌伏の時でも、主が王位に返り咲く暁には、絶対に我の力が必要になるのですから!』
「いまの、なんの音!? まさか雷霆さん、またリュテを困らせてたの!?」
『ぐっ、あのときの美少女!!』
雷撃の音をききつけてラキが駆け込んできた。
彼女を見つけた途端、トニトルスが急にしどろもどろになった。
「うっ、これは、いや、その……っ」
「リュテの邪魔しないでって、私、言ったよね? ……お仕置き足りなかったのかな?」
『えっ、いやその、はっ、すみませぬ……』
女の人が大好きなくせに、いざ可愛い女の子の前に出ると急に恥ずかしくなったのかもしれない。
営業さんの知識によれば、『イキリDT』とかいうやつだ。
『ぷっぷー雷霆かっこわるぅ!』
『……くっ』
ポケット番長のミゼリにとどめを刺されてトニトルスが黙った。
『ねえ主、雷霆に催眠かけて黙らそうか?』
左耳から、平穏が口をはさむ。
「そんなことできるの? 魔剣相手なのに?」
『できるよ。魂を束縛すればいいんだもん。人間も魔剣も変わらないよ』
いいことを聞いた。それなら試してみたいことがある。
「じゃあ、エウテルペ。ちょっと近いうちに頼みたいことがあるんだ……」
『いいわよ。なんでも言って』
「リュテいるか?」
今度はオービスが駆け込んできた。
「うん。どうしたの?」
「院長から伝言だ。おまえの討伐実習が決まったぞ。俺と一緒に、ドラゴン退治だ」
まだ魔剣の複製できてないのに……!
急展開すぎない!?
☆リュテ、討伐デビュー!




