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幽閉王子と魔剣の国~魔剣に溺愛されたぼくは誰も殺さず伝説の王になる~  作者: キマモリニコ
第2章 魔剣工房の発足
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第43話 水魔ディルヴィウム



 ぼくの私室で魔剣の持ち込み研究がはじまって、2日目。


「裏返すなよ、ミスリル。いまそこ、模写してるんだから。俺のノルマ100本だぞ。譲れよ」


「模写なら鞘《さや》だけ持っていけばいいじゃないですか。私は雷霆さまの魔力の放出機構を調べて再現しなければならないのです。そっちは後にしてください」


 いつもつるんでる2人の仲が、どんどん険悪になってく。

 

『主よ、ご覧ください!これがモテですぞ!!

 主も我の奪い合いに加わって良いのですぞ!』


 ……この剣めんどくさい。


「あー、えーと。雷霆を取り合うより、ほかの剣も研究してみない? 『水魔』とか『災禍の黄金』興味あるんだけど」


 ぼくは聖器庫で新たに契約した水魔をベッドにドサリと置いた。


 ぼくとしては母上を取り戻すため、氷河を研究したいけど、この話題は先生の機嫌を損ねる。


 氷河もぼくと来たがるけど、先生のそばに無いのを現王派に見つかればいろいろ厄介なことになりそうだ。


『アルジタベタイアルジタベタイアルジタベタイアルジタベタイアルジタベタイアル……』


「「えっ?」」


 二人が同時にベッドを見たのでぼくも振り返る。


「えっ!?」


「アルジタベタイアルジタベタイアルジ……」



『水魔』ディルヴィウムは、いつもぼくを食べたがっている。それは気づいてた。


 水魔からヨダレみたいに水が染み出したと思ったら、川の氾濫みたいにどんどん溢れ出してくる!


 鞘の真ん中から獣のような口が縦に開き……。


 ドザバァァァアアアアアアアアアア!!




 津波が飛び出したぁぁああ――――!! 



「「「うわぁぁあ!!」」」


 ぼくの部屋のガラスを割り、大きな波と一緒に僕たちは外に投げ出された!


 そこに、怒ったトニトルスが飛んできた。

 小さなパチパチと紫電を立てている。


 これはまずい!


「ダメだ! 雷撃はまずい、トニトルス!!」


『否! 二度も主を襲うとは万死あるのみ!!』


 パアン!!


 身構えたぼくは、薄目を開けて確認する。


 感電するかと思ったけど、無事だった……!


 エギルは咄嗟にぼくを抱えてくれてたし、ミスリルが杖を構えて雷撃を中和したんだ。


「トニトルス、危ないだろ!! なんでぼくの制止を聞かないんだ! 主、主と口ではいうけど、いつもぼくのいうこと無視する!」


「そやつが悪いのです! 主を溺れさせて食おうとした! 仕置きはせねばなりませぬ!!」


「怒ってくれるのはいいけど、周りを良く見てぼくの話を聞いてって言ってるんだ!」


 トニトルスは、ぼくに似てる。

 衝動的で、抑制が効かないところが。


 だから余計、腹が立つのかもしれない。

 

「確かに水魔は凶悪ですね。水利の力は是非欲しいですが、余りにも危険すぎます……」

 

「そうだな。水を出す便利な機能だけコピーして、また聖器庫に戻って貰うとか?」


「ぼく、いいこと思いついた!」


 ――――


 建国記の伝承によれば、水魔は水害をおこし溺死者の魂を食らう魔剣。


 他の魔剣と違い知性が低く食欲全振りで、ずっとヨダレを垂らしてる不気味な剣だ。


 そのヨダレが利用できないか試さなきゃ。



 ぼくは修道院の南にある畑にいき、ニンジン畑の畝の真ん中に水魔を突き立てる。


 じわじわとヨダレみたいに水が溢れ出て、土に黒く染み込んでいく。


「なるほど。ニンジンは湿った土の方が生育が良いし、灌水装置にちょうどいいな」


「でしょ? じゃ、水やり頼むね水魔!」


「ニンジンキライ! アルジタベタイィィイ!」


 ぶつぶつ文句を言う水魔を畑に放置。


 水浸しの部屋や割れたガラスをなんとかしないと、先生に怒られちゃう。


「ねえミスリル、ぼくの部屋の掃除と修理と乾燥。ミスリルの魔法でなんとか頼める?」


「……そうですね。さっと済ませてしまいましょう……」

 

 ミスリルが明らかにシュンとした。


「ふふん、残念だったなミスリル。雷霆さまは俺がお預かりしておく!」


「くっ」


「エギル大人げないよ……」 


 いい年して子供みたいな人たちだ。

 ぼくはこういう恥ずかしい大人にならないように気をつけよう。



「さあ雷霆さま、俺の番ですよ。隅から隅までじっくり拝見させて頂きます」


『これもひとえに我の魅力の成せる技ですぞ。

 我をイケメンに横取りされるのがいやなら、奪いに来てくださいあるじぃいい!!』


 トニトルスがヒロイン気取りだ。どんどん調子にのってくる。ちょっとウザイ。




 ぼくは困惑していた。


 トニトルスは出会った時から、主のいうことを全く聞かない剣だった。


 彼の威力は強大すぎる。


 カラムたちは先生が蘇生してくれたから良かったものの、トニトルスはぼくの為なら誰でも殺してしまう気がする。


 制御できない魔剣を身近におけば、今みたいにぼくの大切な人たちを危険に晒すことになる。


 複製が出来たら……捨てるしかない。


 ……どこがいいかな。


 みんなにバレずに、トニトルスが絶対に戻ってこれないところ。


『不燃ゴミの日に出すといいわ!』

 ポケットで『慈悲《ミゼリ》』が叫ぶ。


『祝福とまとめて火山にポイでよくない?』

 左耳で『平穏《エウテルペ》』がささやく。


 無慈悲で不穏な魔剣女子たちが団結している。ぼくも覚悟を決めるしか、ないようだ。


 

☆護国九剣は厄介な魔剣しかいない。  

 その圧倒的王者が雷霆トニトルスである。

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