第23話 ラキと営業さん(2)
おれはインフラIT商社の営業さんだ!
仲間が作った最高なアプリでみんなを幸せにするため、今日もガンガン売り込むぞぅ!
きょうは現場で検収。
下水道点検で実際に稼働する様子を担当さんに確認してもらうんだ!
ドローンを飛ばして古い下水道の不具合がないか探しつつ、アプリが想定どおりの仕事をし、使い勝手が仕様書どおりかをみてもらう。
RTK-GNSSとか3Dマッピングとか、聞いてもよくわかんないだろ? おれもだ!!
むずかしいことを全部すっとばして自動化した、便利なアプリがうちの主力商品のひとつ。
おれの仲間、天才だな(震え)
だから商品の自慢したい!
現場のひとの苦労が減る!
地域のみんながよろこぶ!
おれはみんなの笑顔をみるだけで、どこまでも頑張れちゃうんだ!
今日も担当さんが大喜び!
自動車事故で入院中だけど、こっそり抜け出してきた甲斐があったぜ!
さて、仕事も終えたし病院に戻ろう!
あれ、……目の前が暗くなってきた。
吐き気もする。
あっ、景色が回ってきた……
…………
……
―――――
「エイギョーさーん!!」
ぼくは叫んで飛び起きた。
ぼくの夢には、最近いつもエイギョーさんというひとが出てくる。
昨日も先生にはやっぱり勝てず、キャバクラの件も脱走の件もこってりと怒られた。
人が多いところはまだ慣れない。
ここ数日で疲れきって倒れるように寝たら、またあの夢をみたんだ。
夢の中でぼくはすごく大きい塔みたいな建物で働く人で、「エイギョーさん」ていうひとになるんだ。
「アイティーショーザイ」っていう、見えない何かと契約書を売る仕事をしてる。
今日は金属の鳥みたいなのを、水の流れる洞穴のなかで自由に飛ばしてた。
その鳥が見たすごく遠くの景色を、エイギョーさんは小さな石板に映して見てた。
なんて便利な魔法だろう!
エイギョーさんは、文明が高度に発達した国をさらに幸せにすることを考え続けてる。
すごく頭がよくて、仕事に誇りを持ってる人なんだ。
ぼくは、ああいう人が大好きだし、魔物討伐なんかよりああいう仕事がしてみたい!
呪文みたいな言葉ばかりで、完全にはわからないけど、最近はこの夢をみるのが楽しみになってきてる。
エイギョーさんの心のなかは、いつも前向きで楽しいから。
あと、いままで食べたことないほど美味しいパンを食べてるところも憧れる!
でも、いつも働きすぎだから心配なんだ。
―――――
「リュテったら、すごい寝言だったよ。エイギョーサーンてなんの呪文?」
ラキがベッドの横で笑った。
疲れてなかなか起きないぼくを心配してみにきたんだって。
「エイギョーさんはね、ぼくの憧れのひとの名前なんだ。頭がよくて仕事熱心で、とってもすてきなひとだよ。
ぼく、エイギョーさんのことが大好きで、いつも夢に出てくるのが楽しみなんだ!」
ラキはなぜか驚いたあと悲しそうな顔になり、ゴクリとつばをのんだ。
「……そのひと、わたしより美人?」
「……えっ?」
「リュテ、娼館に行きはじめてから、お姉さんのことばっかり考えてるよね?
わたしより、そのお姉さんのことが好きになっちゃったの……?」
ラキの大きな目に涙が溜まってきた。
ど、どうしよう。
「えっ? なんで急にお姉さんのはなし!?
たしかにお姉さんたちのことは心配だけど、エイギョーさんは別のひとだよ!
……あれっ、 ぼく、お姉さんの話してないと思ったけど。また、ぼくの心読んだんだ?」
ラキはハッとした顔をしてから、手をワキワキさせて、なんか開き直ったみたいに怒り出した。
「し、娼館じゃないなら、どこのひとなの? 外出許可があってもリュテが自由に歩き回れる機会なんかそんなに……」
「えっと??」
どこの?
……うん、どこの国だろうな?
エイギョーさんたちは不思議な服装をしてる。
建物もこの国とはぜんぜん違う。
たぶん文化的に近隣の国じゃない気がする。
ぼくが悩んでるあいだに、
「女性関係といえば……エギル。しょっちゅう一緒に買い出ししてるし、もしかしてエギルにへんなこと教わった……?」
ラキは小さくひとりごとを言いながら、
「ちょっとエギルに文句いってくる!」
とエギルのことを怒って、部屋を駆け出して行った。
えっ、なんでエギル?
なんで泣いちゃったの?
なんで怒ったんだ?
ぜんぜんわからないけど、ラキにはもうエイ
ギョーさんの話はしない方がよさそうだ。
☆次回、ふたたび娼館編 やらかしの予感。




