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幽閉王子と魔剣の国~魔剣に溺愛されたぼくは誰も殺さず伝説の王になる~  作者: キマモリニコ
第1章 箱入り王子は仲間をつくる~魔剣と出会うまで~
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第22話 反省会



 ぼくの娼館デビューは、散々だった。 


 みんなが帰宅するなり、椅子のたくさん並んだ総会所にぼくは座らされ、怒られてます。


「イベントの情報収集任務が目前だってのに、変な噂で集客に影響したらどうするんだ?」


 オービスにまた、ほっぺの皮を伸ばされた。 

「イアイ! ゴエンナハイー!!」


 オービスはいい人だけど握力が強すぎるのが欠点だ。イケメンのゴリラだ。


「大丈夫じゃね?リュテが帰ってすぐ、『べべちゃんに踏まれ隊』とかいう変態サークル結成してたぜ?

 一部のマニアが逆に……」 


 セイルが言い終える前に、エギルに叩かれた。


「いって!」


「お・ま・え・は、ちょっと黙っとけ」


「ギャァアー!!」

 

 セイルもオービスに、ほっぺを伸ばされてる。

 体感でぼくの二倍、伸ばされてる。


「あれだけ普段から院長に注意されていたのに、なぜ冷静に対応できなかったのです?」


 ミスリルが座った膝の上に肘をつき、ため息混じりに聞いてくる。


 ぼくは、言葉にしたくなかった。


 先生の訓練に耐えれば、氷剣の騎士を倒す力を身につけられると頑張ってきた。


 なのに、先生がぼくの仇敵その人だった。


 あの人がその気になれば今の王座だって転覆可能なはず。


 それをしないということは先生は現王の側の人間、それも忠臣ということになる。 


 ぼくを鍛えるのは何のためなの?

 先生が何を考えているのかわからない。


 実力差を見せつけてぼくの心を折り、仇の手先になって一生を過ごせって?


 それとも他に理由がある?

 手持ちの情報が少なすぎて、判断がつけられない。

 

 ぼくは、このまま、ここにいていいの?

 何より、口を開いたらなんか泣きそう。


 …………でも。


 ぼくはオービスを見た。


 オービスはいつも通りの、穏やかな顔で顎を上げてぼくを促す。


 オービスは修道院のみんなも同じように、先生に家族を殺されたと言っていた。


 ぼくは、幽閉されて、世間から隔絶されてた。

 これから知らなければいけないことが、たくさんあるんだ。


「……ぼくが七歳のとき、両親があの氷剣の、仮面の騎士に氷の像にされたんだ。……先生がその騎士だってわかって、体が勝手に動いちゃって……」


 涙と鼻水が出てうまく言葉にならなかったけど、ミスリルには伝わったみたいだ。


「……なるほど。理由はわかりました。悪いのは院長で、あなたに落ち度はない。身内を奪った相手に、あなたのような年齢の子が理性的でいられる方がおかしい。

 院長も予想した上であなたの耐性を試したのでしょうから、私から言うことはありません」


「ぼくは、みんなのことも聞きたい。先生が何を考えてるのか……知りたい。オービスは、みんなも先生に家族を殺されたって言った。

 でも恨んでる人はいないって……。

 理由を知りたいんだ、ぼく。先生は……」


「ごめん、みんな。私のせい!」


 ラキが駆け込んできた。

 

 ぼくを庇うように立って言う。


「私がお父さんに言ったの! リュテはカラムにいじめられても、我慢できる忍耐強い子だから、外でも普通に働けるって! リュテを怒らないで!」


「怒ってはない。ただ、俺たちは一蓮托生で監視つきだ。こいつがやらかせば、下手したら全員に処刑の口実を与えることになる、と自覚してほしいだけだ」

 

 ぼくの心臓はぎゅっとなった。

 そこまで、考える余裕がなかった。


「ごめんね、リュテ! お父さんの代わりに謝るわ。それに私が余計なこと言ったから……」


 ラキがぼくの首に抱きついてきて、また泣き出してしまった。


 共感能力の強い子だから、今のぼくに触れたらつらいと思うのに。


「ラキは何も悪くないよ……」


 ぼくはただラキの頭を撫でるだけで他に言葉も出てこなかった。


「……そうですね。私も似た境遇でしたよ。でも、院長の思惑はともかく、命を救われたことには感謝しています。あなたもいずれ、知る機会があるでしょう。

 人の多いところに行って今日は疲れたでしょうし、もう休みなさい」


 二人の言うことはもっともだ。

 反論の余地もない。……反省しかない。


「うん。ごめんね、みんな。ぼく、これからは気をつけるよ。みんなのこと好きだから!」

 

 みんな何も言わなかったけどセイルは笑ってたし、オービスは頭を掻きながら照れ臭そうにしてる。


 エギルとミスリルは顔を見合わせて、

「しょうがないな」って顔をぼくに向けた。

 

 みんながぼくを受け入れて許してくれたのが、とても嬉しかった。


 …………でも、先生のことは……。

 

 ……ぼくだって気づいてた。


 先生はやり方は酷いけど、言葉や行動の端々からずっと感じてたよ。


 ぼくが生き延びられるよう、ぼくがあとあと困らないように、知識と技術を教え込もうとしてるって。


 だから余計に混乱するんだ。

 ただの非情な敵なら割りきって憎めたのに。


 ぼくの中にはもう、先生への信頼が確かに存在してる。それが今後どう影響するのか怖くもあった。   


「おかえり、お父さん」 


 先生が帰ってきた。

 

 ラキが駆け寄って抱きつく。


「小僧。処罰はしないがおまえは当分謹慎だ。その腹立たしい顔を俺に見せるな」


 先生は騎士服の詰襟を外しながら少し苛ついた様子でそれだけ言うと、足早に部屋を出ようとする。


「……ぼくの可愛さは、お金になります!!」

 

 ぼくは食い下がった。


 剣技では一生敵わない。

 でも、ぼくは諦めない。


「今日だってぼくの賭け金(ベット)で儲かったでしょ? ぼくをそんなに休ませてもいいの?」

 

 先生のことは、今は理解できなくてもいい。


 この人を跪かせて、氷剣はぼくがもらう!

 どんな手を使ってもだ!


「……では、謹慎は二日。客に取り入る手管でも学んでおけ」


 先生が振り向きざまに一瞥して自室に戻ると、ラキがぼくに囁いた。


「通訳するね。たぶんお父さんは、『いじめてごめん。人が多いところで疲れたろうから休んでいいからね!』って、言ってると思うの」


「えっ!?」 

 

 ぼくの混乱は増していく。



「お父さん、お仕事の時は私に心を読まれないように耐精神感応《アンチエアボーン》の制御ピアスつけてるから、確実じゃないけどね。

 血が繋がってるから、強い感情はなんとなくわかる。分かりにくいけど優しいの」


「みんな知ってるよ。ツンデレのツンの方がカンストして、デレは殆《ほと》んど出さねーの院長は」


「まあ、極悪人に見えるけど、いいところも無くはない人ですよ。お金には汚いですけど」

 

 優しい人がぼくみたいないたいけな子供に、あんな地獄の特訓できる!?


 ……ツンガカンストって何語? 

 ミスリル、四捨五入したら極悪人じゃない?

 

 ぼくはいろいろ聞きたかったけど、またばかにされそうでやめた。

 

 首輪さえなければ、ラキみたいに精神感応《エアボーン》か接触感応《ワイドウェブ》で心を聞けるのに、もどかしい!

 

「しっ!」


 エギルがみんなを制した。

 

 カラムが入り口に立ってぼくを見つめていた。

 

 監守なんだから、話の盗み聞きも仕事のうちだろう。


 でも、その目はいつものぼくへの蔑みじゃなく、妙な熱を帯びた目でこちらを見つめていて、ぼくは身震いした。

 

 でも、みんなに怒られたしぼくの禊(みそぎ)は終わった! 

 

 ラキと一緒におみやげのフルーツを食べよう!




 洗礼式が近づいてる。


 ぼくも参加予定だ。どんな適性とスキルがあるのか、楽しみだ!




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