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幽閉王子と魔剣の国~魔剣に溺愛されたぼくは誰も殺さず伝説の王になる~  作者: キマモリニコ
第1章 箱入り王子は仲間をつくる~魔剣と出会うまで~
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第19話 修道院のしごと・娼館編



 修道院のしごとは、意外とたくさんある。


 まず修道院の内部では毎日数度の礼拝、聖典の写本、農作業、宿坊、薬草園の管理。


 町での仕事は魔物討伐、救貧院の施し、病院、学校、酒場などだ。

 

 修道院や教会はそもそも王公貴族からの寄進を受けた大地方領主。


 都市の収入源に絡む施設は、教会が運営し、経済圏を掌握する構造になっている。

 

 院長は騎士教会の司教を兼任してるから、必然的にぼくたちも、何らかの外界の仕事に駆り出されるんだ。


「今日はリュテ、娼館の担当だって」

「なんて……?」


 薬草園でハーブをむしってたぼくは、セイルを振り返った。


 ぼくはエギルの手伝いでよく町に行くから、知ってる。すてきなお姉さんがたくさんいるお店のことだ。


 エギルが通るたびに薄着のお姉さんたちが二階の窓から身を乗り出して、町中が大変な騒ぎになるんだ。


「ゴロツキをシメる黒服役に俺とオービス、リュテは女装してミスリルのヘルプにつけだって。あ、てか、院長呼んでたわ」


 なんだと?

 外での仕事は楽しみだけど、女装はやだよ?


 こないだミュゼに可愛いって言われたショックが、まだ癒えてない。


 頼れる兄上として、かっこよく再会したかったのに……。


「リュテ、おかえりなさい!」


 ぼくが手を洗って摘みたての薬草を食堂に持ち帰ると、ラキが窓際の席で本を読んでいた。


 先生はラキの脇に立ち、語学指導していたけど、ぼくを認めて振り返った。


 先生は珍しく黒い騎士服を着ていて、その精悍な顔には司教服や修道士服より似合うと思った。

 

「一ヶ月後の洗礼式にあわせて、教会行事がある。化粧と変装に慣れ、自然な所作を身につけておけ」


「えっ、それってどういう……?」


 真顔で何いってるの、先生?

 洗礼式のスキル鑑定で、ぼくに何させる気??


「期間中は多くの聖職者や役人、冒険者が滞在する。酒場や娼館では、多くの男は気も口も緩む。

 おまえは給仕見習いとして潜入し、院に取って有益な情報をひとつでも多く仕入れろ」


 

 ぼくの納得いかない視線に気づいたのか、先生が補足してくれた。


 

 それなら了解だ。


 ぼくは使えるものは使うよ。女顔が役に立つなら否はない。


 母上を凍らせたあの仮面騎士の情報が、手に入るかもしれないんだし。


「わかりました。でも、ぼくに女装させなくても、女の子ならラキがいるのに?」


 院長は一瞬険しい顔つきでなにか言いかけたけど、ぼくがセイルに後頭部を軽く叩かれたのを見て口を閉じた。


「馬鹿だな。ラキは女の子だぞ?娼館なんかに連れてったら危ないだろ!?」

 

 なぜか分からないけど、セイルがめちゃくちゃ怒っている。


「えっ? だって、「しょうかん」はお姉さんが沢山いるところでしょ? ぼくよりラキの方が、話が合うと思ったんだけど」


「はぁ、そうだった。幽閉《はこいり》で純粋培養の世間知らずだったな。こいつ連れてってほんとに大丈夫なの、院長? フラグしか感じないけど」

 

 セイルが困った顔をして先生を見たけど、鍛冶工房から戻ったエギルの言葉でみんな納得した。


「今のうちに色々教育しとかないと、魔物討伐に行かせる前に、絶対に誘拐とかぼったくりとかに遭うぞ。パン一個につられて」


「「あー!!」」


 セイルとオービスがうなずく。

 

 ぼったくりがなんなのか聞きたかったけど、なんかまた馬鹿にされそうだからやめた。

 

 ぼくは修道院の本を相当読んだけど、世の中にはぼくの知らないことが沢山あるんだ。


「大丈夫、リュテなら出来るわ!リュテの女装の可愛さは私が保証する! 応援してる!」 


 ラキが笑顔でガッツポーズをした。


 なんの保証? 

 ちょっと不安が増した! 



―――――



「娼館の一階は泊まり客専用の高級ラウンジバーになっています。娼館勤めの女性たちが客の相手をする酒場です」

 

 いつも通り事務的な口調でいったけど、ミスリル、女装してるからね。しかもすごい美人だからびっくりする。

 

 ぼくは女装を褒められたら、ちょっと嫌な気持ちになるから、人にも嫌がりそうなことは言わない。

 

「おわっ、ミスリルは今日も美人だな!」 


 セイル――!!


「ええ。自分でもそう思います」

 

 溢れ出る自信を感じる。

 ミスリルはなぜか、まんざらでもなさそう。


「あなたの源氏名《コードネーム》は、今日から『赤《べべ》ちゃん』です。間違って本名バレしないように気をつけて」


 そして淡々とぶっ込んでくる。


「えっ、待って? まさか修道院のみんなも、その源氏名……?」


「当然でしょう? 『鍛冶師の王(エギル)』や『金剛鉱石《ミスリル》』なんてふざけたものが、本名なわけありませんよ」


「えー!? なんか騙された感じでショックだ……っていうかなんでぼく、『赤《べべ》ちゃん』なの? みんなかっこいい響きなのに!」


「ま(・)ん(・)ま(・)じゃねーか。世間知らずで!」


『迷走野郎《セイル》』がまた爆笑してる。


「こういうとこは一般的にキャバクラって呼ばれるんだ。わからないことがあったら何でも聞けよ?」


「うん。ありがとう、オービス!」  


『監視者《オービス》』は面倒見がいい。


 彼もセイルも先生と同じ黒い騎士服だけど、筋肉質で大柄だから、やっぱりオービスも修道士服よりこっちが似合うと思う。

 

 薄暗い室内に高級そうな調度品が揃えられ、長椅子《ソファ》とテーブルがたくさん並んでいる。


 ぼくはミスリルに連れられて娼館の女将のところで、身支度を手伝ってもらう。


 厨房の前を通ると客用の酒類や食事の準備が慌ただしくされていた。


 理解した。


 ここは、すてきなお姉さんとお客さんが、仲よくおいしいものを食べるところだ!


 

☆リュテの娼館デビュー&男の娘任務は続く


 

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