第13話 はじめての外出(3) 畑は楽しい!
ぼくは野菜畑で、ラキとエギルに合流した。
地下の一件でぼくはまだ、少しドキドキしている。
でも、大抵の見えない何かは明るい日差しの下には来ない。
落ち着け、大丈夫。
「リュテ、こっちこっち!」
「ラキ!今日エギルにすごくおいしい白パン買ってもらった!あとパン屋のおばさんにも、おまけ貰っちゃった!ふたつも!
ふたりともすごく気前がいいよ!今まで取られることはあっても、ラキ以外の人にもらったことなかった!
なんか怖い人かと思ってたけど、パンをくれる人に悪いひとはいないと思うんだ!
一個はラキにあげるから、おやつにして。もう一個はカラムに取られたとき用の保存食にする!」
ラキの手伝いでエギルと農機具運びをしながら、ぼくは今日の出来事を報告した。
「おまえ、誘拐とかほんと気をつけろよ。パンにつられて知らない人について行くんじゃないぞ?」
「えっ?誘拐ってなに?」
「子供をさらって売り飛ばす悪いやつが、外にはたくさんいるんだよ」
エギルがハァ、とため息をついた。
困った顔をして怒るから不安になる。
気をつけよう。
「ありがとう。すごく楽しそうだね。エギルとすっかり打ち解けたみたいでよかった。
でも、リュテのパンへの執着すごいよね。ほんとにもらっていいの?」
「うん。すごいよ! ずっとほぼ具なしスープで生きてきた男だからね! もらったとき、まずラキにあげようと思ったんだ。遠慮なくどうぞ」
「そんな悲しいこと笑顔で言われたら、もらいにくいだろう……」
「あはは! リュテらしいよ」
森の奥から小鳥の声がして、日差しが暑い。
修道院の南側の日当たりのいい一角に畑があって、冬越し用の人参やじゃがいも、玉ねぎなんかが植えられているらしい。
野菜や薬草の種類は図鑑見て知ってるけど、実物を比べるの初めてかも。
土や草の匂いを嗅いでるだけで楽しい!
だって、ぜんぶ初めての体験だ!
「まずはハーブとじゃがいもの収穫だよ。リュテは畑仕事はじめてだよね。わたしのやり方みてちゃんと覚えてよ?」
「うん!」
ラキ先生とまずハーブ摘みをした。
「マンネンロウは肉にも卵にも合うし臭みも消えて、なんでも美味しくするハーブなの。
修道院ではあまり肉料理メインてことはなくて、スープの風味付けがほとんどだけど。あるのと無いのじゃ幸福感がちがうんだから」
独特の爽やかでツンとした匂いが、摘むたびに辺りに広がる。指にもついちゃった。
本の知識としては知ってたよ。
マンネンロウは別名でローズマリー。
止血や消炎剤に使われる薬草で、料理の風味付けにも使える。
でも、匂いは図鑑では分からないからね!
夏の空気は爽やかで、いい匂いがした。
次はじゃがいもの畑。
あれっ?
本で見たのとだいぶ違うな?
図鑑だとフサフサ繁った株元にジャガイモの束がぶら下がってる感じだったけど?
「……枯れかけた葉っぱしかないけど?」
「ふふふ、見ててよ。えいっ!」
ラキが木のスコップで枯れ草の株元を掘ると、なんか丸いのがたくさん出てきた!
枯れて何もないかと思ったら、ちゃんと土の下にいた!
掘るたびに土の匂いがする。
「なんか宝探しみたい。ぼくにもやらせて!」
ゴロゴロ出てくる!
たくさん入ってる!
おもしろくて止められない!
「ははっ、ほどほどにな」
エギルが苦笑しながら拾うの手伝ってくれた。
「夏の採れたてじゃがいもは、瑞々しいの。まだ皮が薄くて柔らかいから皮つきポテトの揚げ焼きにしようか」
よくわからないけど、柔らかいときと固くなる時があるんだな。おぼえたぞ。
最後に鶏小屋で卵を分けてもらう。
「鶏はさすがに知ってるよ!」
って言いたかったけど、ぼくの知ってる図鑑の絵とも鶏料理とも違った!
茶色い毛みたいなのに包まれた、小型の魔物感あるやつが、小屋の中にうごめいてた!
どこまでも追いかけてきて、くちばしで刺す。
……怖いからもう入りたくない。
☆修道院にはモンスターが溢れてる




