第8話 疑う者
いつも読んでいただきありがとうございます。
部屋に戻る時にまた、あの少女に会う、
「さっきの変なの」
少女はそう言って笑った。
無は首を傾げる。
「そうか?」
「うん」
少女は嬉しそうだった。
「みんなね」
「信じてるの」
「代表様のこと」
「そうか…」
「でも、お兄ちゃんは違う!」
「違うのか?」
「うん!」
「だから、変なの」
少女はまた笑った。
翌朝。
無はみんなと掃除をしていた。
「無さん、ありがとうございます、」
「助かります!」
「代表様も喜びますよ」
皆、笑顔。
本当に優しい。
本当に感謝している。
無にはそれが、嘘に見えなかった。
昼食の時に
1人の老人が苦しそうにして倒れた。
「大丈夫ですか!?」
「誰か!」
「代表様を!」
その場の人が叫ぶ。
周囲が騒いでいると、
No.2がゆっくり歩いてきた。
「慌てないでください」
たった一言、
周囲の者達はその一言で落ち着いた。
無も一言
「救急車を」
誰も聞いてない。
「代表様……」
「お願いします……」
「助けてください……」
No.2は困ったように笑った。
「私は医者ではありませんよ…」
誰も電話を掛けようとしない。
「信じています!」
「代表様なら!」
「代表様なら……」
無が立ち上がり。
スマートフォンを取り出し電話を掛ける。
「119」
周囲の視線が集まる。
「何をしているのですか?」
1人の女性が驚きながら聞いてきた。
「救急車」
「でも代表様が!」
「医者じゃない」
無は短く答えた。
No.2は目を細める。
そして。
優しく笑った。
「その通りですよ」
「無さん」
「ありがとうございます」
救急車が到着し、
老人は運ばれていった。
命に別状はなかった。
周囲の人達は安心していた。
しかし。
1人の男が呟く。
「代表様を信じればよかったのに……」
「そうだ!」
「なぜ救急車を……」
「代表様を疑ったのか?」
無は男を見る。
「疑っていない」
「え?」
「医者じゃない」
男は言葉を失っていた。
No.2は静かに無を見つめていた。
その日の夜。
代表室。
部屋の中は白かった。
No.2は1人でお茶を飲んでいた。
笑みを浮かべる。
「面白い人だ」
「信じていないわけではないが」
「信じ切ってもいない」
『2』
黒い数字が首で脈打つ。
「初めてです」
「私を疑わない人は」
「ですが」
「私を、信じもしない人は…」
男は少しだけ寂しそうに笑った。
「救いたくなってしまいますね」
その頃。
無はベッドの上で天井を見ていた。
「疑う」
「信じる」
「違いは何だ」
答えは無には分からない。
その時。
部屋の扉が少しだけ開いた。
朝の少女だった。
「お兄ちゃん…」
「どうした」
少女は小さな声で言った。
「誰にも言わない?」
「たぶん」
「たぶん?」
「分からない」
少女は笑う。
そして。
その笑顔は消えて言う、
「ねぇ…」
「外に帰りたい」
無の目が静かに開かれる。
少女は泣いている。
「でもね…」
「みんな怒るの…」
「代表様を悲しませるって」
「だから…」
「言っちゃダメなんだって……」
無は黙って少女を見つめていた。
そして。
胸の奥に生まれた違和感が、
大きくなるのを感じた。
今後もよろしくお願い致します。




