第54話 質疑応答の先に
いつも読んでいただきありがとうございます。
No.13 「少し休憩しようか。」
「頭を使うと甘いものが欲しくなる。」
「クリームソーダを飲みなさい。」
白い空間にカウンターと椅子が現れ、いつものクリームソーダが置かれる。
無は静かに席へ座り、ストローに口をつけた。
No.13はコーヒーカップを手に取り、一口飲む。
この瞬間だけは、白い空間ではなく、いつもの喫茶店に戻ったような穏やかな空気が流れていた。
しばらく静かな時間が過ぎる。
No.13は優しく微笑み、カップを置いた。
No.13 「では、続きを始めよう。」
「欲望とは。」
無 「必要。」
「強すぎるのは要らない。」
「なくてはならないもの。」
No.13 「必要だが、強すぎるのは駄目なのか。」
「なぜだ。」
無 「相手が嫌がる。」
「相手が良いなら。」
「いい。」
No.13は静かに頷く。
No.13 「なるほど。」
「欲望そのものではなく。」
「他人を巻き込むことが問題なんだな。」
「その答えも、お前らしい。」
少し間を置き、次の問いを投げる。
No.13 「では。」
「記憶とは。」
無は少し考え込み、ゆっくりと答えた。
無 「難しい。」
「必要。」
「要らない。」
「両方ある。」
No.13 「嫌な記憶は。」
「全部消えてしまえばいいのか。」
無 「違う。」
「必要。」
「でも。」
「難しい。」
No.13は優しく笑った。
No.13 「ハハハ……。」
「そうだな。」
「昔のお前なら、一つしか答えられなかった。」
「今は二つの答えを持てるようになった。」
「成長したな。」
No.13 「存在とは。」
無 「必要。」
「消してはいけない。」
「無くなると。」
「悲しい。」
No.13 「死ということかな。」
無 「違う。」
「死と生は。」
「関係ない。」
「別のもの。」
No.13は静かに頷いた。
No.13 「なるほど。」
「存在とは、生き死にだけでは測れない。」
「お前はそう考えたんだな。」
No.13 「では。」
「秩序とは。」
無 「難しい。」
「守るもの。」
「曖昧なもの。」
「なければならない。」
「一人では出来ない。」
No.13は穏やかに笑う。
No.13 「そうだな。」
「少し話したからこその答えだ。」
「では。」
「完璧な秩序を作れると思うか。」
無 「難しい。」
「完璧には出来ない。」
「判らない。」
No.13 「その通りだ。」
「秩序は一人では作れない。」
「だから、人は悩み続ける。」
No.13 「感情とは。」
無は黙り込む。
今までで、一番長い沈黙だった。
無 「判らない。」
「隠す。」
「現す。」
「判らない。」
No.13は微笑みながら言った。
No.13 「そんなに思い詰めるな。」
「無には。」
「これが一番難しい。」
「焦らなくていい。」
「判らないままでも。」
「歩いていけばいい。」
無は小さく頷いた。
No.13は静かに最後の問いを口にする。
No.13 「では。」
「最後だ。」
「因果とは。」
無 「返ってくる。」
「行っても。」
「行わなくても。」
「自分に返る。」
No.13は満足そうに目を閉じる。
そして静かに頷いた。
No.13 「なるほど。」
「よく判ったよ、無。」
「お前は答えを暗記したのではない。」
「自分で考え。」
「迷い。」
「悩み。」
「自分の言葉で答えた。」
「それで十分だ。」
No.13はゆっくりと立ち上がる。
白い空間に静かな風が吹き抜けた。
No.13 「では――。」
「今度は。」
「私の答えを伝えよう。」
次回最終回になります。




