第53話 問いと答え
いつも読んでいただきありがとうございます。
No.13 「では始めようか。」
「私を納得させることが出来れば、この扉を抜けなさい。」
無 「判った。」
No.13 「そんなに構えなくてもいい。」
「納得といっても、私と話すだけだ。」
無は1度目を閉じ、ゆっくりと息を吐く。
肩の力を抜き、静かにNo.13を見つめた。
No.13 「無よ。」
「命とは。」
無 「奪ってはいけないもの。」
「助けなければならない。」
No.13 「奪ってはいけないのか。」
「では、助けられなかった時は。」
「お前が命を奪ったことになるのか。」
無は静かに俯く。
無 「……。」
「そうだ。」
「いや。」
「判らない。」
No.13は優しく微笑んだ。
No.13 「そうか。」
「お前は、そうやって命を見てきたんだな。」
「答えを言っているようで。」
「お前自身を話している。」
「私は、その答えが好きだ。」
No.13 「では。」
「信頼とは。」
無 「1人では出来ない。」
「1人にならないこと。」
「相手が決めること。」
No.13は静かに頷く。
No.13 「なるほど。」
「なかなか良い答えだ。」
「私も好きだよ。」
「では。」
「愛とは。」
無 「1人では出来ない。」
「複数に向けてはならない……かもしれない。」
「子供には愛。」
No.13 「ほう。」
「複数は駄目なのか。」
無 「判らない。」
No.13 「子供を愛したら。」
「子供だけなのか。」
無 「違う。」
「まだ判らない。」
「複数は。」
「悲しみを生む。」
No.13は静かに目を閉じる。
No.13 「そうか。」
「まだ判らないか。」
「それでいい。」
「判らない、と答えられた。」
「それも1つの答えだ。」
「知らないことを、知らないと言える。」
「それは弱さではない。」
「成長だ。」
No.13 「では。」
「時間とは。」
無 「止めてはいけない。」
「変わらないものもある。」
「でも。」
「進まなければならない。」
「悲しくても。」
No.13 「悲しくても。」
「進めるのか。」
「辛くはないのか。」
無は少しだけ俯き、小さく息を吐いた。
無 「辛い。」
「それでも。」
「進まなければならない。」
「時間は。」
「止めてはいけない。」
No.13はゆっくり頷く。
No.13 「そうか。」
「そこだけは譲らないんだな。」
「お前は時間が止まる悲しさを知った。」
「だから、その答えになった。」
「私は、その答えも好きだ。」
No.13 「では。」
「尊厳とは。」
無 「他人が踏みにじってはいけない。」
「自分で守らなければならないもの。」
No.13 「なるほど。」
「では。」
「自分自身なら。」
「踏みにじってもいいのか。」
無は答えようとして言葉を止める。
長い沈黙。
無 「……駄目。」
「いや。」
「判らない。」
No.13は静かに微笑んだ。
No.13 「そうか。」
「また判らないと答えた。」
「いい。」
「答えを決めつけなかった。」
「お前は少しずつ、自分で考えられるようになってきた。」
No.13
「肉体とは。」
無 「傷付けてはいけない。」
「虐待。」
「これは。」
「要らない。」
No.13は静かに目を閉じる。
No.13 「虐待だけは言い切るのか。」
「この世に生まれたものなのに。」
無 「生まれても。」
「あってはならない。」
「傷付けるために。」
「命は生まれない。」
No.13はゆっくりと頷いた。
No.13 「そうか。」
「生まれたから必要なのではない。」
「生まれても。」
「あってはならないものがある。」
「お前は、そう考えるんだな。」
無は静かに頷く。
No.13は優しく微笑んだ。
No.13 「答えは、1つではない。」
「人それぞれ違う。」
「だが。」
「お前は誰かの答えではなく。」
「自分で考え。」
「自分の言葉で答えた。」
「それで十分だ。」
白い空間に静かな風が吹き抜ける。
無は目を閉じる。
昔なら「判らない」で終わっていた。
だが今は違う。
判らないから考える。
判らないから経験する。
判らないから前へ進む。
今後もよろしくお願いいたします。




