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ナンバーズ  作者: アル治


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52/55

第52話  No.13

いつも読んでいただきありがとうございます。

いつもの喫茶店。

無はクリームソーダを飲みながら、静かに考えていた。

「命」 「信頼」 「愛」 「時間」 「尊厳」 「肉体」 「欲望」 「記憶」 「存在」 「秩序」 「感情」 「因果」

理解できたものもある。

まだ理解できないものもある。

ストローでゆっくりとクリームを崩しながら、小さく呟く。

無 「やっぱり……要らないものもある。」

カウンターの向こうからマスターが優しく微笑む。

マスター 「要らないものがあるんですか?」

無 「必要ないと思う。」

マスターは少し考え、静かに口を開いた。

マスター 「必要ないものって、何でしょうね。」

「本当に必要ないなら、生まれてくるのでしょうか。」

無は答えられない。

マスターはコーヒーカップを磨きながら続ける。

マスター 「簡単なものもあります。」

「命は無くなれば死ぬ。」

「だから奪ってはいけない。」

「愛や信頼は、1人では知ることが出来ません。」

「欲望だってそうです。」

「食欲、睡眠欲、性欲。」

「欲がなければ、人は生きることも、命を繋ぐことも出来ない。」

少しだけ微笑み、無を見る。

マスター 「私はね。」

「生まれたものに、必要ないものなんて一つも無いと思っています。」

「どう思いますか?」

「──無。」

その瞬間。

無の表情が止まる。

ゆっくりとマスターを見る。

無 「……。」

マスターは苦笑した。

マスター 「気付かなかったのも無理はありません。」

そう言って首元を少しずらす。

そこには。

黒い数字。

13。

無は何も言わず、その数字を見つめていた。

マスターは穏やかに笑う。

マスター 「そんなに構えなくていい。」

「私は理を持っていない。」

「だから、お前と戦う理由もない。」

無は静かに尋ねた。

無 「……いつから。」

マスター 「最初からだよ。」

「お前がこの店へ来ることも。」

「クリームソーダを好きになることも。」

「全部、決まっていた。」

無は少しだけクリームソーダを見る。

無 「……美味しかった。」

マスターは嬉しそうに笑った。

マスター 「だろう?」

「お前が好きな味だからな。」

「お前が少しでも立ち止まり、考えられる場所になるように。」

「私はずっと、この店で待っていた。」

無は静かに息を吐く。

今までの出来事が頭をよぎる。

No.1。

No.2。

No.3──No.12。

すべて、この店から始まっていた。

マスターは一歩前へ出る。

マスター 「そろそろ始めようか。」

その言葉と同時に、世界が静止した。

時計は止まり。

風は止み。

音も消える。

白い光が喫茶店を包み込み、景色がゆっくりと溶けていく。

気が付くと。

そこは果ての見えない真っ白な空間だった。

何もない。

ただ1つだけ。

古びた白い扉が静かに佇んでいる。

その前に立つマスター。

マスター 「ここから先は、お前1人で歩く道だ。」

「答えを教えてくれる者は、もういない。」

「私を納得させろ。」

「それが出来た時、この扉は開く。」

「私は消えない。」

「だが、お前は次のステージへ進める。」

静寂が流れる。

無はゆっくりと目を閉じた。

これまで出会った人々。

悩み。

理。

言葉。

その全てを胸の中で噛み締める。

やがて静かに目を開く。

その瞳には、No.1の頃にはなかった意志が宿っていた。

無 「……行く。」

マスターは満足そうに微笑んだ。

マスター 「さあ来い、無。」

「お前が歩いてきた道が、本物だったことを証明してみせろ。」

白い空間に、2人だけの足音が静かに響き始めた。

今後もよろしくお願いいたします。

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