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ナンバーズ  作者: アル治


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50/55

第50話  毒上司

いつも読んでいただきありがとうございます。

数日後――。

岩佐は会議室に社員を集めた。

しかし、集まったのは奥村ただ1人。

他の社員は全員、外回りの予定を入れていた。

岩佐は眉をひそめる。

岩佐 「会議は大切なことを話す場ですよ。」

「みんな欠席なんて、おかしいじゃないですか。」

奥村は何も言わなかった。

──違う。

"おかしい"のは、あなたなんだ。

そう思いながらも言葉を飲み込む。

本来なら自分も外回りを入れたかった。

だが今月中締切の仕事を抱えているため、今回は呼ばれないだろうと考えていた。

それが甘かった。

岩佐は1人で話し続ける。

岩佐 「ちゃんと仕事をしてもらわないと困ります。」

奥村は心の中でため息をつく。

(誰もいないなら会議を中止にすればいいだろ……。)

(予定だからって、1人で始めるなよ……。)

沈黙に耐えきれず、奥村が口を開く。

奥村 「……で、どうするんですか?」

「会議、続けるんですか?」

岩佐は手元の資料を見ながら答えた。

岩佐 「来月までに終わらせなければならない案件があるんですが……。」

奥村 「はっきり言います。」

「俺には無理ですよ。」

岩佐は少し困った顔をする。

岩佐 「そうですよね……。」

「私も他の仕事がありますので……。」

「今回は上司に相談して、納期を延ばしてもらいます。」

奥村 「それがいいと思います。」

岩佐は頷く。

岩佐 「奥村さんにお願いしている案件はどうですか?」

奥村 「今月中には終わります。」

岩佐 「分かりました。」

一枚の書類を差し出した。

岩佐 「熱中症対策シートと感染症対策シートを作成しました。」

「皆さんに確認をもらって、私に提出してください。」

奥村は思わず聞き返す。

奥村 「……俺がやるんですか?」

岩佐 「他に人がいませんので。」

奥村 「岩佐さんがやってください。」

岩佐は当然のように答える。

岩佐 「私は仕事がありますので。」

奥村は言葉を失った。

(仕事は……。)

(みんなあるんだよ。)

岩佐は悪びれる様子もない。

岩佐 「まぁ、今回は私がやります。」

「ただ、次からは奥村さんに任せますので、そのつもりで。」

その一言で会議は終わった。

喫煙室。

奥村は乱暴にタバコへ火をつける。

煙を吐きながら、小さく呟いた。

奥村 「あいつ……。」

「マジで居なくなってくれないかな。」

その日の午後。

岩佐は体調不良を理由に早退した。

帰宅前にスーパーへ立ち寄り、夕食の買い物を済ませる。

一人で歩きながら、何かをぶつぶつ呟いている。

その声に反応し、近くを歩いていた無が振り返った。

首筋に浮かぶ黒い数字。

12。

無は静かに岩佐の後を追う。

会計を済ませ、駐車場へ出たところで声を掛けた。

無 「どうした。」

岩佐は少し驚いた表情を見せる。

岩佐 「……私ですか?」

「体調が悪くて、帰るところです。」

「あなたは?」

無 「仕事は。」

岩佐 「私以外にも出来る人はいますからね。」

無は一歩近付く。

無 「任せた。」

岩佐は少し笑って答えた。

岩佐 「ええ、任せました。」

「部下を信頼するのも、課長の仕事ですから。」

その瞬間――。

首筋の12が、ゆっくりと黒く、太く染まっていく。

無は静かに呟く。

無 「No.12。」

岩佐は眉をひそめた。

岩佐 「……何ですか?」

無 「No.12。」

その言葉と同時に、世界が静まり返る。

風が止まり。

人の気配が消え。

駐車場の景色がゆっくりと歪み始めた。

岩佐は初めて表情を曇らせる。

岩佐 「……なんだ、これは。」

無は岩佐を真っ直ぐ見つめる。

無 「因果。」

世界は、静かに理の空間へと姿を変えていった。

今後もよろしくお願いいたします。

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