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ナンバーズ  作者: アル治


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第49話  因果

いつも読んでいただきありがとうございます。

無はクリームソーダを飲みながら、一人考え込んでいた。

無 「感情……」 「愛情……信頼……怒り……悲しみ……」 「判らない……どうすれば……」

カウンターの向こうで、マスターが穏やかに笑う。

マスター 「難しいね。それが全部判ったら、多分、争いも悲しいことも何も起こらないんだろうな。」

無 「何故?」

マスター 「感情があるから、人は怒ったり、憎んだり、復讐したりするんだ。」

「もし感情がそこまで無ければ、自然界と同じさ。負けた者は去るだけ。」

「復讐も執着もない。ただ弱肉強食という理だけの世界になるのかもしれないね。」

無 「なるほど。」 「必要だが……要らない。」 「難解。」

マスターは思わず笑った。

マスター 「はははっ!論文でも書くのかい?」

無 「書かない。」 「判らないだけ。」

マスター 「そうですか。ごゆっくりどうぞ。」

無は再びクリームソーダを口に運んだ。

その頃、オフィス街の一角。

とある会社の会議室では、月例会議が行われていた。

岩佐課長 「この案件は川口さん、来月までに資料をお願いします。」

川口 「今からですか?」 「どこまで進んでいますか?」

岩佐 「私が担当だったんだが、他の仕事が重なってしまってね。」

「一切手を付けられていない。」

川口 「……全部ですか?」

岩佐 「そうなるね。」

「仕事だから、よろしく。」

川口は言葉を失った。

岩佐は続ける。

岩佐 「それから、この案件は奥村さん。」

奥村 「申し訳ありません。今月中締切のプロジェクトを担当しています。」

岩佐 「大丈夫。そっちは再来月までで構わない。」

「他に質問がなければ会議を終わります。」

誰も口を開かなかった。

いや――開けなかった。

岩佐 「それでは終了します。担当になった方は期日厳守でお願いします。」

会議終了後。

喫煙室。

川口は深いため息をつき、タバコに火をつけた。

川口 「はぁ……また始まりましたね。」

奥村 「いつものことだ。」

「自分で抱えて、締切直前になると全部丸投げ。」

川口 「どうして毎回なんですか……。」

奥村 「だから皆、会議の日は外回りを入れるんだよ。」

「担当にされたら地獄だからな。」

川口 「俺も入れたかったんですけど……。」

奥村 「俺もだ。」

2人は苦笑いするしかなかった。

数週間後。

川口と奥村は残業、早朝出勤、休日出勤を繰り返し、何とか資料を完成させた。

岩佐は満足そうに頷く。

岩佐 「ちゃんと間に合ったね。」

「ご苦労様。」

2人は疲れ切った表情で小さく頭を下げた。

その時、岩佐のスマートフォンが鳴る。

岩佐 「はい、岩佐です。」

電話の相手は部長だった。

部長 「資料、良く出来ていたよ。」

「もう1件あるから、また頼む。」

岩佐 「ありがとうございます。」

「何とか間に合わせることが出来ました。」

部長 「流石だな。」

「これからも期待しているよ。」

岩佐 「はい、お任せください。」

「必ず間に合わせます。」

電話が切れる。

川口と奥村は顔を見合わせた。

部下の名前は、一度も出なかった。

再び喫煙室。

川口 「……もしかして、岩佐課長だけの手柄になってます?」

奥村 「そうだよ。」

「だから皆、外回りに逃げる。」

川口 「上に報告すればいいんじゃ……。」

奥村 「無駄だ。」

「上は『仕事が間に合った』って結果しか見てない。」

「誰がやったかなんて評価には関係ない。」

川口 「じゃあ、岩佐課長だけ評価されるんですか……。」

奥村 「される。」

「課長として結果を出したことになるから。」

川口は拳を握り締めた。

川口 「納得できません……。」

奥村 「だから次からは、会議の日に外回りを入れろ。」

「それしか自分を守る方法がない。」

川口 「……はい。」

その頃、岩佐は1人、自席で満足そうにパソコンを開いていた。

岩佐 「また本社案件をクリアできた。」

「間に合って良かった。」

画面には、新しい依頼書が表示される。

岩佐 「これも来月までか……。」

少し考えると、小さく笑った。

岩佐 「来週、会議予定のメールを送るか。」

そして、新規メールを開きながら呟く。

岩佐 「……今回は誰に振るかな。」

今後もよろしくお願いいたします。

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