第45話 法
いつも読んでいただきありがとうございます。
俺の名前は針山。
仕事はプログラマー。 腕だけはそれなりに評価されていて、会社では主任を任されている。
主任になってから、俺はもう一つの仕事を始めた。
――世直し。
この世は悪人ばかりだ。
真面目に働くより、悪事に手を染めた方が金になる。 そんな連中が偉そうな顔をして生きている。
それが、どうしても許せなかった。
だから俺は、プログラムにバックドアを仕込む。
悪人から金を奪い、 困っている人へ配る。
それが俺の仕事だ。
プログラムは完璧。 誰にも気付かれない。
盗まれた企業は、さらに高価なセキュリティソフトを求めてくる。
もちろん、それにもバックドアを仕込んでおく。
社員 「針山主任。義賊のおかげで、うちも儲かりますね。」
針山 「そうだな。高性能なソフトほど高く売れる。」
社員 「今年のボーナス、期待しちゃいますよ。」
針山 「俺たちの努力が、やっと報われたな。」
社員 「お先に失礼します!」
針山 「おう、お疲れ。」
社員が帰ると、針山は一人、完成間近のプログラムへ静かに細工を施した。
針山 「最初は安いソフトを買うよな……。」
画面に映る会社名を見つめ、小さく笑う。
「普通の会社を装ってるが、マルチ商法なのは調べがついてる。」
「次はここから頂く。」
「保護施設に送ってやらないとな。」
「自分ではどうにもできない人が苦しみ、悪人だけが裕福になる。」
「そんな世の中、おかしいだろ。」
作業を終え、会社を後にする。
夜。
まだ遅い時間ではない。
居酒屋で軽く酒と食事を済ませ、帰路につく。
ふと、営業中の喫茶店が目に入った。
針山 「たまには、うまいコーヒーでも飲むか。」
店内には客が一人。
ナポリタンを食べながら、クリームソーダを飲んでいる青年だった。
針山 「クリームソーダも悪くないな。」
小さく呟き、カウンターへ座る。
「マスター。ホットコーヒーを。」
マスター 「かしこまりました。」
その時。
クリームソーダを飲んでいた青年が、小さく呟く。
無 「義賊。」
針山は振り向き、青年と目が合う。
動揺はない。
針山 「今、話題ですからね。」
無はクリームソーダを一口飲む。
無 「犯罪。」
針山 「違いますよ。」
「犯罪なのは、金を盗まれた連中の方です。」
その瞬間。
針山の首筋に、**『10』**が浮かび上がる。
無 「No.10。」
針山 「……何の話です?」
「義賊のあだ名ですか?」
無は静かに針山を見つめる。
そして、もう一度だけ告げた。
「No.10。」
今後もよろしくお願いいたします。




