第44話 義賊
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お気に入りになったクリームソーダがテーブルに置かれる。
無はストローをくわえながら考えていた。
無 「愛……。」
「存在……。」
「家族……。」
どれも無には、まだ答えが出ない。
静かな店内に、後ろのテーブルから笑い声が聞こえてくる。
客A 「俺の口座にも振り込まれないかな。」
客B 「お前、そんなに困ってたか?」
客A 「生活は苦しいぞ。」
「義賊って困ってる人に金を配るんだろ?」
客B 「まあ、そうらしいな。」
客A 「じゃあ俺にも来てもいいじゃん。」
客B 「ハハハッ。」
「宝くじじゃないんだから。」
2人は笑い合っていた。
無には何が面白いのか判らない。
不思議そうに見ていると、マスターが静かに口を開く。
マスター 「義賊の話だね。」
無 「義賊。」
マスター 「悪い人間からお金を盗んで、困っている人や児童施設、保護団体なんかへ送っているらしい。」
無 「盗み。」
マスター 「そう。」
「助かっている人が居るのも事実。」
「でも、盗みは盗み。」
「犯罪なんだ。」
少しだけコーヒーカップを磨く手を止める。
マスター 「それにね。」
「誰かが決めた正義は。」
「誰かにとって悪になることもある。」
無 「難しい。」
マスター 「そうだね。」
「良いことをしているように見えても、使えば共犯になるかもしれない。」
「実際、お金が振り込まれても警察へ届ける人が多いらしいよ。」
「助かる人も居れば、困る人も居る。」
「だから難しいんだ。」
無はクリームソーダを飲み干し、店を後にした。
街へ出ると、電気店のテレビには義賊のニュースが映し出されていた。
ニュースキャスター 「義賊を名乗る人物によるハッキング事件は本日で13件目。」
「盗まれた総額はおよそ2億円。」
「送金先は児童養護施設や保護団体など複数に及び、送り主はいまだ不明です。」
解説者 「現時点では善意に見えます。」
「使って良いのか、使ったら共犯でしょうからね」
「しかし犯罪であることに変わりありません。」
「もし抵抗する者が現れれば、殺人事件へ発展する可能性も否定できません。」
無は黙ってテレビを見つめていた。
無 「正義。」
「悪。」
「同じ。」
今後もよろしくお願いいたします。




