第43話 真相
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無 「車。」
風雅 「そうだ。」
「事故当日だ。」
「ここで凍矢は死んだ。」
「忘れられて、存在も消えた。」
無 「忘れられてない。」
風雅 「まだ言うか。」
「凍矢には親しかいない。」
「親だって、事故を起こした息子なんて要らない。」
「だから存在しないんだ。」
無 「違う。」
風雅 「何が違う?」
「誰も凍矢を覚えてない。」
「厄介者だったんだよ。」
無 「女性。」
「親。」
「忘れてない。」
風雅 「それは、お前がそう思いたいだけだ。」
「お前は凍矢の何なんだ?」
無 「関係はない。」
風雅 「なら、どうしてそこまで凍矢にこだわる?」
「友達も。」
「親も。」
「恋人も。」
「誰も覚えていない。」
「存在しない人間を、なんでそこまで庇う?」
無は静かに答える。
無 「泣いていた。」
「毎日。」
「辛そうだった。」
「謝っていた。」
「ずっと。」
風雅の表情が揺らぐ。
風雅 「泣いていた……?」
「謝っていた……?」
「舞はそんな女じゃない!」
「弱くもない。」
「謝るような女でもない!」
無 「真実。」
「泣いていた。」
「後悔していた。」
その瞬間。
風雅の首筋に刻まれた『9』へ、小さなヒビが走る。
風雅 「そ……そんなはずない!」
「毎日ケンカして。」
「口を開けば文句ばかりだった!」
「そんなこと……信じられるか!」
無 「離れなかった。」
「ずっと隣に居た。」
首筋の『9』が大きく軋み、さらに深いヒビが入る。
風雅 「そうだ……。」
「ケンカしても。」
「文句を言われても。」
「舞は……必ず俺の隣に居た。」
「嫌なら別れれば良かった。」
「嫌がらせで一緒に居るんだと思ってた。」
「でも……。」
「そんな訳ない。」
「舞に得なんて何もない……。」
風雅は震えながら自分の胸を押さえる。
風雅 「俺は……。」
「俺は舞を裏切った。」
「自分に絶望して。」
「風雅に憧れて。」
「事故で顔が分からなくなったことを利用して。」
「俺は風雅になった。」
「自分の存在を……自分で消した。」
無 「忘れてない。」
「存在している。」
「成立しない。」
その瞬間。
首筋の『9』が砕け散る。
同時にフロントガラスへ映る景色が変わる。
事故当日の映像。
運転席には風雅。
助手席には凍矢。
激しい衝撃。
車は標識へ突っ込み、炎に包まれる。
凍矢は顔を強く打ち、そのまま炎に呑まれていく。
風雅は、その光景を黙って見つめていた。
やがて静かに笑う。
風雅 「そうか……。」
「俺が馬鹿だった。」
「そのまま凍矢として、生きれば良かった。」
涙が一筋流れる。
風雅 「舞……。」
「ごめんな。」
「ダメな彼氏で。」
「幸せになってくれ。」
その言葉と共に。
風雅――いや、凍矢の身体は光となって消えていく。
止まっていた太陽が動き始める。
走っていた車が再び行き交う。
世界は元に戻っていた。
無は一人、交差点を見つめる。
無 「存在。」
「必要。」
少しだけ間を置いて。
自分に問いかけるように呟く。
無 「俺の存在……。」
無は空を見上げた。
その横顔は、どこか少しだけ寂しそうだった。
今後もよろしくお願いいたします。




