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ナンバーズ  作者: アル治


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42/49

第42話  存在

いつも読んでいただきありがとうございます。

数日間、無は交差点へ通っていた。


女性は毎日そこへ来ては、凍矢の話をした。


同じ話を何度も繰り返した。


それでも少しずつ涙は減り、声も落ち着きを取り戻していく。


女性 「明日はね……」


「凍矢のお父さんとお母さんと一緒に、お墓へ行くの。」


「だから明日は来ないね。」


無 「判った。」


女性は交差点に供えていた花束を手に取り、缶コーヒーや凍矢の好きだった飲み物も袋へしまい始めた。


無 「何故。」


女性 「私だって、そのままにしておきたいよ。」


「でも……他の人に迷惑になっちゃうから。」


「花や飲み物を置いたままだと、虫や鳥が集まって荒らしちゃうの。」


「だから……片付けるの。」


無 「そうか。」


女性は最後に交差点へ向かって深く頭を下げる。


そして静かに歩いて行った。


無は、その後ろ姿を見送った。


その翌日。


交差点へ1人の男性が歩いてくる。


顔には事故の火傷を隠すように包帯が巻かれていた。


今は――風雅と名乗っている。


風雅 「あの事故以来……全部順調だ。」


「風雅には悪いけど。」


「俺が生きていても仕方なかった。」


「これからは俺が風雅として生きる。」


「風雅の人生は……俺が歩む。」


自分に言い聞かせるように呟きながら交差点へ向かう。


しかし。


そこには何もなかった。


花も。


飲み物も。


手を合わせる人も。


風雅 「思った通りだ。」


「何もない。」


「予想はしてたけど……。」


「実際に見ると少し寂しいな。」


その時。


無と目が合った。


無 「どうした。」


風雅 「少し前、この交差点で事故があったんだけど……知ってる?」


無 「知ってる。」


風雅 「運転を誤って標識に突っ込んだ。」


「俺もその車に乗ってた。」


「何とか助かったけど……友達が死んだ。」


無は何も尋ねていない。


それでも風雅は話し続けた。


誰かに聞いてほしかったのだろう。


無 「お前が。」


風雅 「ん?」


「何か知ってるのか?」


無 「女性。」


「毎日泣いている。」


風雅は首を横に振った。


風雅 「何の話だ。」


「凍矢に泣いてくれる女なんて居ない。」


「誰も悲しんでない。」


「誰も覚えてない。」


無 「そんなことない。」


風雅 「現に見ろ。」


「花1つ残ってない。」


「誰も来ない。」


「もう忘れられてる。」


「凍矢が死んで良かったんだ。」


無 「友達なのに。」


風雅は少しだけ笑った。


その笑顔は、どこか寂しかった。


風雅 「だからだよ。」


「友達だから判る。」


「凍矢は……俺より価値がなかった。」


無 「違う。」


風雅 「違わない。」


「俺が死ぬより。」


「凍矢が死んだ方が良かった。」


「……そうじゃないと。」


「俺は生きていけない。」


無 「忘れてない。」


「1人には。」


風雅 「何を言ってる。」


「事故からまだそんなに経ってない。」


「それなのに誰も来ない。」


「これが現実だ。」


「凍矢はもう存在しない。」


その瞬間。


風雅の首筋に、黒い『9』がはっきりと浮かび上がる。


無 「No.9。」


風雅 「なんだ?」


「突然、何を言ってる。」


無 「存在。」


風雅 「忘れられた者は存在しない。」


「誰も覚えていない。」


「だから凍矢は存在しない。」


無 「違う。」


「忘れられてない。」


「1人には。」


風雅 「しつこいな。」


「この状況が答えだ。」


「他に方法はなかった。」


「凍矢はもう――存在しない!」


その瞬間。


夕陽が止まる。


車の音が消え。


信号は赤のまま動かなくなる。


世界から色が抜けるように、人々の姿が消えていく。


気が付くと。


無は運転席に座っていた。


風雅は助手席。


車は止まっている。


しかしフロントガラスの向こうだけが映像のように流れ始める。


事故当日の景色が――ゆっくりと映し出されていく。

今後もよろしくお願いいたします。

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