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ナンバーズ  作者: アル治


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40/49

第40話  試行錯誤

いつも読んでいただきありがとうございます。

澪 「これが私の幸せよ。」

「嫌なことも、辛いことも、悲しいことも何もない。」

「楽しいことだけが残る世界。」

無 「幸せ。」

澪 「そうよ。」

「見て。」

「みんな笑ってる。」

「笑顔しかないの。」

「こんな幸せなことはないわ。」

無 「そうか。」

「消えた記憶。」

澪 「必要ないわ。」

「消した記憶に幸せなんてないもの。」

「要らないものは消しちゃえばいいのよ。」

無 「記憶がなければ。」

「幸せ。」

澪 「そう。」

「記憶になければ痛みもない。」

「覚えてないんだから。」

無 「違う。」

「記憶になくても。」

「傷は残る。」

澪 「傷があっても理由が分からなければ辛くない。」

「記憶があれば傷を見るたび思い出す。」

「また苦しくなる。」

「でも記憶がなければ傷だけ。」

「心は痛まない。」

「心は壊れない。」

無 「痛みがない。」

「だから。」

「成長がない。」

澪 「幸せなら成長なんて要らない!」

「私が幸せなら、それでいいの!」

無 「同じ失敗。」

「繰り返す。」

「幸せじゃない。」

澪 「幸せよ!」

「覚えてないんだから!」

無 「傷が増える。」

澪 「……。」

無 「傷だらけ。」

「幸せ。」

澪 「……し、幸せよ。」

無 「忘れても。」

「自分だけ。」

「傷は消えない。」

「幸せ。」

澪の瞳から、一筋の涙が零れ落ちる。

首筋の『8』に、小さな亀裂が走った。

澪 「……辛くて。」

「忘れなきゃ生きていけなかった。」

「覚えていたくなかったのよ……。」

「覚えていて何がいいの?」

「忘れなきゃいけないのよ!」

無 「判る。」

「忘れる。」

「学ぶ。」

「それから。」

「忘れる。」

澪 「簡単に言わないで!」

「私がどんな目に遭ったか知らないくせに!」

無 「今。」

「幸せ。」

「成立しない。」

その瞬間。

首筋の『8』が、音を立てて砕け散る。

澪は静かに涙を流しながら笑った。

「ねぇ……。」

「幸せって何よ。」

「ずっとこれが幸せだと思ってた。」

「でも……違ったね。」

「幸せって難しいね。」

「愛……。」

「ありがとう。」

「ごめんね。」

言葉と共に、澪の姿は光に包まれていく。

空一面に映し出されていた記憶の映像も、一つ、また一つと消えていく。

止まっていた時間が動き出した。

マスターがアイスコーヒーを淹れ始める。

店の外では、人々が何事もなかったように行き交っていた。

愛がトイレから戻ってくる。

愛 「えっ?」

「澪?」

辺りを見回し、不安そうな表情で無を見る。

「すみません。」

「連れを見ませんでしたか?」

無 「判らない。」

「……ありがとう。」

「ごめんね。」

「言っていた。」

愛は意味が分からず戸惑う。

それでもテーブルにお金を置き、慌てて店を飛び出した。

スマートフォンを握りしめ、澪の名前を呼びながら走っていく。

無は静かにクリームソーダを飲み干し。

席を立ち、喫茶店を後にする。

歩きながら、小さく呟いた。

無 「忘却。」

「必要。」

「だが。」

「難しい。」

「……判らない。」

無は空を見上げた。

人間は、忘れることで救われることもある。

忘れないことで、前へ進めることもある。

その答えは、まだ無には分からなかった。

今後もよろしくお願いいたします。

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