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ナンバーズ  作者: アル治


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39/55

第39話  忘却

いつも読んでいただきありがとうございます。

クリームソーダの味が忘れられなかった。

無 「……美味しかった。」

気付けば、またあの喫茶店の前に立っていた。

扉を開ける。

カラン、と鈴が鳴る。

マスター 「いらっしゃいませ。」

「ご注文は?」

無 「クリームソーダ。」

マスターは少し笑いながら頷く。

「お好きなんですね。」

「かしこまりました。」

マスターがカウンターの奥でクリームソーダを作り始める。

その時、奥の席から小さな声が聞こえてきた。

愛 「……大丈夫なのかな。」

無にも聞こえていた。

だが、今はクリームソーダの方が気になっていた。

勢いよく店の扉が開く。

澪 「ごめんね!遅れちゃった!」

愛 「いいよ。」

「それより、結婚考え直した?」

澪は首を傾げる。

「結婚?」

「誰が?」

愛 「……え?」

「澪……結婚するって言ってたじゃん。」

澪は笑って首を振る。

「ないない!」

「まだ二十歳だよ?」

「もっと遊ばないと。」

愛の表情が固まる。

「……指輪は?」

澪は自分の左手を見つめる。

「指輪なんてしてないよ。」

愛 「保証人になったでしょ?」

澪 「何それ?」

愛 「300万円。」

澪 「あっ!」

「そういえば使ってないのに請求書と督促状が届いたよ。」

「詐欺だと思って放ってあるけど。」

愛 「……いくら?」

澪 「300万だったかな。」

愛は思わず立ち上がる。

「それだよ!」

「やっぱり騙されてるじゃん!」

澪は本気で困った顔をする。

「誰に?」

愛 「婚約者に!」

澪 「ねぇ……何の冗談?」

「動画でも撮ってるの?」

「いい加減にしないと怒るよ。」

その真剣な表情に、愛は言葉を失った。

店内が静まり返る。

その空気を切るように、マスターが戻ってくる。

「お待たせしました。」

「クリームソーダです。」

無は静かにグラスを手に取り、一口飲む。

「……美味しい。」

その姿を見て、マスターは思わず微笑んだ。

マスターは2人の席へ向かう。

「ご注文はお決まりですか?」

2人は顔を見合わせる。

愛 「アイスコーヒーで。」

澪 「私も。」

「かしこまりました。」

愛は立ち上がる。

「ちょっと、お手洗い行ってくる。」

澪 「うん。」

愛の姿が見えなくなり、澪が一人になった。

無は静かに口を開く。

「No.8。」

澪 「え?」

「何ですか?」

「新手の勧誘ですか?」

無はもう一度言う。

「No.8。」

「忘却。」

その言葉と同時に、澪の首筋へ黒い『8』がゆっくりと浮かび上がる。

次の瞬間。

マスターの動きが止まる。

店内の音が消える。

窓の外を歩いていた人々も、1人、また1人と姿を消していく。

喫茶店には、無と澪だけが残された。

そして空一面に、映像が映し出される。

澪が笑う姿。

泣く姿。

誰かに騙される瞬間。

そして――。

映像は突然途切れ、別の場面へ飛ぶ。

また途切れる。

また飛ぶ。

まるで大切な部分だけが切り取られたように。

無は静かに空を見上げた。

「……記憶。」

今後もよろしくお願いいたします。

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