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ナンバーズ  作者: アル治


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38/49

第38話  人間は忘れる生き物

いつも読んでいただきありがとうございます。

歩きながら、無は考えていた。

愛とは何なのか。

性欲は必要なのか。

愛が先なのか、性欲が先なのか。

無 「判らない。」

必要だと思っているだけなのかもしれない。

本当に必要なのか。

無 「……判らない。」

考え続けているうちに疲れたのか、無は近くの喫茶店へ入った。

マスター 「いらっしゃいませ。ご注文は?」

無 「クリームソーダ。」

マスター 「かしこまりました。」

無は1人、窓際のテーブルへ座る。

すると、後ろの席から若い女性2人の話し声が聞こえてきた。

愛 「澪……絶対騙されてるよ。」

澪 「騙されてないよ。」

「見て、この指輪。」

「すごく高いんだから。」

愛 「澪は昔から騙されやすいんだよ……。」

澪 「私が?」

「騙された?」

「覚えてないけど。」

愛 「高校の時だって何回も騙されて泣いてたじゃん。」

澪 「そうだった?」

「忘れちゃった。」

愛 「2年前だよ。」

「私たちまだ二十歳なんだよ?」

澪 「覚えてないものは覚えてないよ。」

その時、マスターがクリームソーダを運んできた。

マスター 「お待たせしました。」

「クリームソーダです。」

無は静かにストローを口へ運びながら、二人の会話を聞いていた。

愛 「結婚詐欺だよ、澪。」

「このままだと人生終わっちゃうよ。」

澪 「なんで詐欺なの?」

愛 「保証人になってるでしょ。」

澪 「うん。」

「300万円くらいかな。」

愛 「300万も!?」

「高校の時だって男に騙されて、お金取られて、バイト2つ掛け持ちして返してたじゃん!」

澪 「そうだった?」

「忘れちゃった。」

愛 「あんなにつらい思いしたのに?」

澪は少し笑いながら答える。

「人は忘れなきゃ、生きていけないから。」

その笑顔とは対照的に、愛の表情はどんどん曇っていく。

愛 「……もういい。」

「好きにしなよ。」

「どうなっても知らない。」

澪 「大丈夫!」

愛 「中学のことも覚えてないの?」

澪 「昔すぎるよ。」

愛の顔色が変わる。

澪 「ちょっとトイレ行ってくるね。」

澪が席を立つ。

姿が見えなくなったところで、愛は小さく呟いた。

愛 「高校であれだけ何度も騙されて……。」

「男たちに酷いことまでされたのに。」

「全部忘れたなんて……あり得ないよ。」

無は静かにクリームソーダを飲み終える。

席を立ち、店を出ようとした時だった。

トイレから戻ってきた澪とすれ違う。

無は一瞬だけ、その首筋を見る。

そこには黒く滲む数字。

『8』。

無は立ち止まる。

「……8。」

小さく呟く。

しかし、

「判らない。」

そう言って、そのまま店を後にした。

店内では、愛が心配そうに澪を見つめていた。

愛 「澪……。」

「お願いだから気を付けて。」

「私は、本当に澪が心配なの。」

「いっぱいつらい思いしてきたんだから……。」

「今度こそ、幸せになってほしい。」

澪は満面の笑みを浮かべる。

「うん!」

「任せて!」

「私、幸せになるよ!」

そう言って笑顔のまま、喫茶店を後にした。

今後もよろしくお願いいたします。

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