第37話 妥当?適切?
いつも読んでいただきありがとうございます。
無は陸の笑みを気にすることなく問い掛けた。
無 「必要なのか。」
陸 「当たり前だ!」
「好きになったら、ひとつになる。」
「それが愛だ。」
無は静かに首を傾げる。
「No.3。」
「違った。」
「だが、愛だった。」
陸 「またNo.3か。」
「知らないけどさ、好きだからひとつになるんだ。」
「それが恋人だろ?」
無の脳裏に、No.4の女性が浮かぶ。
娘を愛し、その想いだけで10年もの時を止めた女性。
触れることも、抱き締めることも出来ない。
それでも、確かに愛だった。
無 「愛する者の為。」
「全てを止めた。」
「No.4。」
陸 「そんなの知らない。」
「触れなきゃ愛は伝わらない。」
無 「……確かに。」
触れたい。
近くにいたい。
その気持ちは理解出来た。
だが――
何かが違う。
無 「No.7。」
「それは愛じゃない。」
陸 「愛は触れてこそだ!」
「相手に触れて、ひとつになって、初めて愛なんだ!」
無 「違う。」
陸 「好きならひとつになる!」
「好きだから抱き締める!」
「好きだから触る!」
「当たり前だ!」
無 「自分だけ。」
陸 「俺だけじゃない!」
「みんなそうだ!」
「ひとつになれば、もっと好きになる!」
「触れなきゃ愛は深まらない!」
無 「相手は。」
「本当にそうか。」
陸 「やってみなきゃ分からない!」
「断るから分からないんだ!」
無 「同じ気持ちじゃない。」
「自己都合。」
陸は一瞬言葉を失う。
無 「相手が嫌なのに。」
「するのは」
「違う。」
陸 「好きなんだからいいだろ!」
「好きならする!」
「好きなら触る!」
無 「好き。」
「だから触る。」
「一緒じゃない。」
陸 「……。」
無 「好きでも。」
「嫌は」
「ある。」
陸 「好きなのに……?」
無 「ある。」
「だから聞く。」
「だから確かめる。」
陸 「……。」
無 「好き。」
「合意。」
「にはならない」
「成立しない。」
その瞬間。
陸の首筋に刻まれた『7』へ、大きな亀裂が走る。
陸 「なんで……。」
「好きは……合意じゃないのか……。」
無 「違う。」
陸 「俺は……。」
「好きって言われたら。」
「全部、受け入れてくれると思ってた。」
「俺は……。」
「相手の気持ちを。」
「聞いてなかったのか……。」
首筋の『7』が砕け散る。
光が部屋を包み込む。
陸の姿は静かに消えていった。
止まっていた太陽が動き始める。
ホテルは消え、公園には人々の笑い声が戻ってきた。
無は空を見上げ、小さく呟く。
無 「愛……。」
「性欲……。」
「必要なのか……。」
その時。
前を歩く雫と友人の声が聞こえてきた。
雫 「この前の人さ。」
「やっとけば良かったかな……。」
友人 「雫。」
「ネットで知り合った男は気を付けなよ。」
雫は苦笑いを浮かべる。
「男の人だって、したいんだろうし。」
「でも、あの人は凄い勢いだったから。」
「ちょっと引いちゃったんだよね。」
2人は笑いながら歩いて行く。
無はその背中を見送り、小さく呟いた。
「……必要だな。」
太陽だけが、静かに街を照らしていた。
今後もよろしくお願いいたします。




