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ナンバーズ  作者: アル治


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4/10

第4話  命

いつも読んでいただきありがとうございます。

『1』

亀裂の入った数字が熱を帯びる。

男は首を押さえた。

苦しい。

熱い。

痛い。

何より。

分からない。

「どうして……」

老人。

女。

学生。

子供。

静かに立ち尽くす影。

誰も責めない。

誰も怒らない。

ただ見ている。

男は震えていた。

「私は……」

「落ち着きたかっただけです」

答えは返ってこない。

「悪い人間ではなかった」

「真面目に働いて」

「税金も払って」

「挨拶もして」

「人並みに生きてきた」

男は頭を抱えた。

「なのに……」

「なぜこんなに苦しい」

無は何も言わない。

男は膝をつく。

「最初は……」

「一人だった」

ぽつりと呟いた。

「会社で怒鳴られて」

「妻にも呆れられて」

「何もかも嫌になった」

「腹が立った」

「だから……」

男の身体が震える。

「殺した」

「通りすがりの人を」

沈黙。

「すると」

「少しだけ」

「少しだけ楽になった」

男の声が震える。

「だから続けた」

「もっと楽になれると思った」

「もっと」

「もっと」

「もっと……」

男は顔を覆う。

「違う」

「違う」

「違う……」

影たちが近づく。

老人。

女。

学生。

子供。

男は涙を流していた。

「私は……」

「楽になりたかったんじゃない」

無は静かに見つめる。

「私は……」

「怖かった」

「苦しかった」

「逃げたかった」

「誰かに」

「助けてほしかった……」

「それは成立しない」

「……」

「お前の理は」

「他人の命は、お前を落ち着かせるためにある」

「違う」

「お前は落ち着いていなかった」

「だから」

「成立しない」

『1』

ぱきり。

数字の亀裂が広がる。

男は影たちを見る。

初めてだった。

彼らの顔を。

目を逸らさず見たのは。

「……申し訳」

声が震える。

「申し訳……ありません……」

深く。

深く。

頭を下げる。

いつものように。

誰よりも丁寧に。

「申し訳……ありませんでした……」

その瞬間。

『1』

ぱりん。

数字が砕け散る。

男の身体が光に包まれる。

男は驚いたように自分の手を見つめた。

「これは……」

そして。

少しだけ。

安心したように笑った。

「そうですか」

「私は……」

「疲れていたのですね」

影たちが男を囲む。

誰も恨まない。

誰も怒らない。

ただ。

男を連れて行くように。

静かに。

夕陽の中へ消えていった。

無だけが残る。

静寂。

やがて世界に音が戻る。

車の音。

人々の声。

夕暮れの商店街。

何事もなかったように。

無は立ち尽くしていた。

そして。

小さく呟く。

「……安心」

それが何という感情なのか。

無には分からなかった。

ただ。

胸の奥が少しだけ温かかった。

その時だった。

頭に激しい痛みが走る。

知らない景色。

誰かの声。

『――13……』

そこで記憶は途切れた。

無はゆっくり顔を上げる。

夕陽が赤く街を染めていた。

そして。

次の数字は。

『2』

無の瞳に。

黒い数字が映った。

今後もよろしくお願い致します。

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