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ナンバーズ  作者: アル治


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30/45

第30話  主観と客観

いつも読んでいただきありがとうございます。

男は胸を張り、鼻で笑った。

「当たり前だ。」

「俺が上だ。」

その顔には、迷いなど一切なかった。

無は静かに男を見つめる。

「違う。」

男は眉をひそめた。

「何を言っている。」

両手を広げ、オフィスを見渡す。

「見ろ、この状況を。」

「何でも思い通りだ。」

「俺の命令で部下は働く。」

「椅子も、お茶も、思った通りに現れる。」

「どう見ても俺が上だ。」

無は静かに尋ねる。

「何のため。」

男はため息をついた。

「何度も言わせるな。」

「会社のためだ。」

無は繰り返す。

「会社のため。」

そして、男を見つめた。

「お前の会社なのか。」

男の表情が曇る。

「……俺の会社じゃない。」

少し間を置き、強く言い返した。

「だが、会社は俺を評価している!」

「だから俺はここにいる!」

無は静かに頷く。

「なら。」

「会社が上だ。」

男の表情が固まる。

「お前より上。」

首筋の『5』に、小さなヒビが走った。

男は首元へ手を当てる。

「俺より……上。」

無は静かに続けた。

「そうだ。」

「お前は、一番上ではない。」

ヒビはさらに大きく広がる。

男は首を振り、叫んだ。

「違う!」

「俺には価値がある!」

無は問い掛ける。

「誰が決めた。」

男は迷わず答えた。

「周りだ!」

「会社だ!」

「だから俺はここにいる!」

無は静かに言う。

「昔は。」

男は言い返す。

「昔も今も同じだ!」

無は首を横に振った。

「違う。」

「今のお前を決めるのは。」

「お前の上だ。」

男の顔から笑みが消える。

無は続けた。

「上は。」

「お前に価値があると思っていない。」

男は声を荒げた。

「なんでそんなことがお前に分かる!」

「俺は価値がある!」

無は静かに男を見つめる。

「お前が選別した。」

「上も選別する。」

男は言葉を失う。

「……。」

無は短く告げた。

「上も同じだ。」

少しの沈黙。

そして――。

「成立しない。」

その瞬間。

首筋の『5』が、音を立てて砕け散った。

男は膝をつく。

「俺は……。」

「会社のために働いてきた。」

「その俺が……。」

言葉は最後まで続かなかった。

男の身体は静かに光となり、少しずつ消えていく。

止まっていた世界が動き出す。

風が吹く。

人々の足音が戻る。

夕陽がゆっくりと沈み始めた。

無は空を見上げる。

「支配。」

少しだけ考えるように目を閉じる。

「……理解できない。」

無はそれ以上何も言わず、静かに歩き出した。

今後もよろしくお願いいたします。

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