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ナンバーズ  作者: アル治


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29/43

第29話  領域

いつも読んでいただきありがとうございます。

翌日。

無は再びビジネス街を訪れた。

昨日と同じ場所で、あの男を待つ。

しばらくすると、大きな怒鳴り声が聞こえてきた。

「アイツは俺の言うことだけ聞いてればいいんだ!」

「なんでそれが出来ない!」

男は今日も部下を引き連れ、大声で歩いている。

無は静かに男を見つめた。

男は無に気付き、不機嫌そうに眉をひそめる。

「また、お前か。」

「いい加減にしろ。」

無は静かに尋ねた。

「嬉しい?」

男は鼻で笑う。

「嬉しいわけないだろ。」

「部下は仕事をしない。」

「その上、お前みたいな変な奴に話しかけられる。」

無は男の首を見つめた。

「首。」

男は勘違いして笑う。

「ああ、クビか。」

「クビにしたい気分だよ。」

「あれだけ目を掛けてやってるのに、まるで成長しない。」

「俺は会社のために身を粉にして働いてるんだ。」

無は静かに言った。

「違う。」

男の笑顔が消える。

「何が違う。」

「俺が働いてないとでも言うのか!」


「そうだ。」

男は怒鳴った。

「なんなんだ、お前!」

「失礼にも程がある!」

「俺は何十年も会社のために働いてきたんだ!」

その瞬間。

男の首筋に浮かぶ『5』が、黒く脈打ち始める。

無は静かに呟いた。

「No.5。」


「なんだって?」

「No……?」

『5』はさらに強く脈打つ。

無は男を見つめた。

「支配。」

男は笑った。

「上の者が下を支配して何が悪い。」

「俺は導いてやってるんだ。」


「違う。」


「違わない!」

男は叫ぶ。

「俺がいなければ、アイツらはただの肉の塊だ!」

「俺が価値を与えている!」

その言葉が響いた瞬間。

夕陽が止まる。

風が止まる。

人の流れが消えた。

気付けば2人は、静まり返ったオフィスに立っていた。

無は静かに呟く。

「No.5。」

男は鼻で笑う。

「何度も言うな。」

「1度言えば分かる。」

「椅子。」

その言葉と共に、高級そうな椅子が現れる。

男は高級そうな椅子に腰かける。

「お茶。」

机に湯気の立つ湯飲みが置かれる。

「タバコ。」

灰皿とタバコが現れた。

男は満足そうに笑った。

「見たか。」

「ここは俺のオフィスだ。」

「俺が言えば、その通りになる。」

「みんな働け。」

「会社のために。」

無は小さく繰り返す。

「会社のため。」

男は誇らしげに頷く。

「そうだ。」

「会社の利益のため。」

「部下に仕事を与え、育てる。」

「それが俺の仕事だ。」

「俺の言うことは絶対だ。」

無は静かに首を横へ振る。

「間違っている。」

男は笑う。

「何を言ってる。」

「この部署は成果も出している。」

「会社からも評価されている。」

「何1つ間違っていない。」

男は勝ち誇ったように笑った。

無は静かに問い掛ける。

「お前は……上なのか。」

男の表情が、初めて変わった。

今後もよろしくお願いいたします。

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