第22話 分からない
いつも読んでいただきありがとうございます。
世界が動き出す。
雑踏、車の音。
夕暮れの駅前。
止まっていた時間が動き出す。
誰も気付かない、。
ほんの数秒だったのか。
それだけの出来事だった。
無だけが立っている。
『3』
数字は砕けた、
「愛か」
小さく呟く。
答えは出ない。
好き。
愛している。
その言葉の意味も。
無にはよく分からなかった。
No.3は泣いていた。
みんなを愛していた。
本当に愛していた。
それだけは分かる。
「……」
無は歩き出す。
夕陽が長い影を作る。
駅前の人々。
笑う者。
怒る者。
急ぐ者。
手を繋ぐ恋人。
子供を抱く母親。
いつもの景色。
その中で。
男女が喧嘩していた。
「だから違うって!」
「もう知らない!」
女性が走り去って行った。
男性は頭を抱えた。
「はぁ……」
深いため息。
無は少しだけ立ち止まる。
「……」
2人とも。
悲しそうだった。
それなのに。
お互い嫌いには見えなかった。
「分からないな」
小さく呟く。
その時だった。
背筋が震える。
初めての感覚。
No.1とも。
No.2とも。
No.3とも違う。
嫌な感覚。
重い。
暗い。
冷たい。
無が顔を上げると
人混みの向こうに
立っている。
よく見えない。
顔も。
姿も。
よく分からない。
だが。
首筋だけが見える。
『4』
黒い数字。
いつの間にか。
浮かび上がっていた。
「……」
無は目を細める。
人影が笑った気がした。
次の瞬間。
見えなくなる。
人混みの中に探しに行くが、見付からない。
「No.4か」
無は静かに歩き出した。
夕陽が沈み。
長い夜が始まる。
今後もよろしくお願いいたします。




