第16話 すき
いつも読んでいただきありがとうございます。
「航平くん♪」
麗奈は満面の笑みで手を振った。
「麗奈!」
航平も笑顔だった。
優しそうな青年。
数日前、スーパーで一緒にいた男。
「偶然だね!」
「うん♪」
「その人は?」
「うん!」
航平は無を見る。
「こんにちは、こないだの!」
「うん」
「彼氏だったな」
「はい」
少し照れながら笑う。
「そうか」
「えへへ♪」
麗奈は嬉しそうだった。
その時。
1人の女性が麗奈に近付いて来る。
30代くらい。
見知らぬ女性。
「麗奈さん?」
「はい?」
女性は深く頭を下げた。
「お願いです」
「弟と別れてください!」
「……え?」
「達也は私の弟なんです」
「来年、結婚予定なの」
「最近、貴方の話ばかりして……」
「お願いします」
「弟を返してください」
麗奈の顔から血の気が引いた。
「達也……?」
隣にいた航平の笑顔も消える。
「……麗奈?」
「今」
「達也って誰?」
「え?」
「誰なんだ!」
麗奈は固まる。
「ち、違うの……」
「違わないだろ」
初めて。
航平の声が低くなる。
「麗奈」
「答えてくれ」
その時。
♪♪
スマートフォン。
『達也♪』
画面に出ている。
3人の視線。
「あ……」
麗奈の顔が青くなる。
航平は画面を見ていた。
『達也♪』
女性は泣いていた。
「弟です…」
「達也は私の弟です」
「返してください……」
航平は何も言えない。
ただ。
信じられない。
そんな顔だった。
「……なんで?」
小さな声。
「俺じゃ……」
「駄目だったのか?」
麗奈は涙を浮かべる。
「違う!」
「違わない!」
「航平くんも好きなの!」
「達也くんも好き!」
「本当に好きなの!」
航平が目を見開く。
「……は?」
「何言ってるんだよ」
「好きって…」
「そんなの!」
「おかしいだろ……」
麗奈は泣き出した。
「嫌いにならないで……」
「お願い……」
「みんな好きなの……」
「みんな大切なの……」
「嫌われたくない……」
姉も泣いていた。
航平も傷付いて泣いていた。
麗奈もなぜか泣いていた。
そして。
『3』
黒い数字。
大きく脈打つ。
無は静かに見ていた。
悲しい。
胸の奥。
少し痛い。
「……」
「みんな」
「泣いている」
誰も悪人には見えなかった。
それなのに。
みんな。
傷付いていた。
「どうして……?」
麗奈は泣きながら呟く。
「好きなのに……なんで……」
『3』
数字が。
ゆっくりと。
脈打っていた。
今後もよろしくお願い致します。




