第11話 信じる理由
いつも読んでいただきありがとうございます。
静寂になる。
音が消える。
紅茶の湯気も時計の針も止まる。
白い部屋。
白い机。
白い壁。
その全てがゆっくりと崩れ始めた。
無は知らない場所に立っていた。
青空、草原、風。
遠くには家々。
子供達の笑い声。
犬が走り回り、老人達が笑っている。
母親達が話をしている。
誰も泣いていない、争っていない。
No.2の理の世界だ。
「綺麗だな」
無は呟いた。
「ありがとうございます」
No.2が立っていた。
白い服。
穏やかな笑顔。
「ここが」
「私の理」
「そうか」
「皆が笑っている」
「はい」
「誰も苦しまない」
「誰も1人にならない」
男は心から嬉しそうだった。
「素敵だな」
No.2は目を見開く。
「……え?」
「素敵だ」
「うん」
「良い場所だ」
男はしばらく呆然としていた。
初めて。
泣きそうな顔で笑った。
「初めてです」
「初めて褒めてもらいました」
「皆、感謝してくれる」
「尊敬もしてくれる」
「でも」
「私を見てくれる人はいなかった」
「そうか」
「はい」
No.2は微笑む。
「無さん」
「私は間違っていますか?」
無は少し考える。
「分からない」
「そうですか」
No.2は嬉しそうだった。
「やっぱり」
「貴方は優しい」
「普通の人は」
「すぐ否定しますから」
「そうか」
男は空を見上げる。
「私は」
「皆を救いたかった」
「誰にも泣いてほしくなかった」
「だから」
「この場所を作った」
「家族を作った」
「信じれば救われる」
「それが私の理」
『2』
黒い数字が空に浮かぶ。
その時。
「代表様ー!」
笑顔の少女達。
信者達。
皆、幸せそうだった。
その中に。
あの少女もいた。
笑顔だった。
しかし。
「……」
無は気付く。
少女の手。
小さく震えていた。
その母親もいた。
笑顔だった。
だが。
目から涙が流れていた。
老人も、子供も。
信者達全員。
泣きながら笑っている。
「……」
無は黙っていた。
No.2は幸せそうに笑う。
「素晴らしいでしょう?」
「皆、家族です」
「皆、幸せです」
「そうか」
無は少女を見る。
泣いていた。
それでも。
笑っていた。
無は静かにNo.2を見る。
「聞いていいか」
「はい」
「なぜ」
「泣いている」
No.2の笑顔が止まった。
「え?」
「皆」
「泣いている」
「……」
「泣きながら笑っている」
「なぜだ」
No.2の瞳が揺れる。
「違います」
「皆、幸せなんです」
「そうか」
「うん」
無は静かに少女を見る。
「幸せなのか」
少女は笑顔で答える。
「幸せだよ!」
そして。
少女の目から涙がこぼれた。
『2』
黒い数字が。
僅かに揺れた。
No.2は気付かない。
自分の理に生まれた。
小さな亀裂に。
今後もよろしくお願い致します。




