第10 帰る場所
いつも読んでいただきありがとうございます。
「お母さん……」
少女は立ち尽くしていた。
泣いているが、
笑顔だった。
周囲の者達も優しく見守っている。
「はら、お母さんが来てくれたわよ」
「良かったわね」
「代表様も喜んでくださっている」
少女は小さく頷いた。
「うん……」
女性は娘を見て泣いていた。
「会いたかった……」
「会いたかったよ……!」
少女も泣いていた。
「お母さん……」
「でも……」
母親の表情が固まる。
「私…」
「ここにいる」
「え?」
「帰らない」
周囲の信者達が微笑む。
「良かった」
「代表様の家族ですから」
「無理に引き離すなんて可哀想よ」
母親は震えていた。
「な、何を言ってるの……?」
「お家に帰ろう?」
「学校もある」
「猫のミルクも待ってるのよ」
少女の目から涙が零れる。
「ごめんなさい…」
「でも」
「代表様が悲しむから」
「みんなが悲しむから」
「私は……」
「ここに居なきゃ」
母親は崩れ落ちた。
「違う……」
「違う!」
「私は、私は…!」
「代表様じゃないの!」
「みんなじゃないの!」
「あなたのお母さんなのよ!」
少女の身体が震える。
泣いていた。
苦しそう、悲しそう。
それでも。
「ごめんなさい……」
そう言って。
母親から離れた。
無は黙って見ている。
「……」
胸の奥。
ざわつく。
分からない。
だが。
「違う」
小さく呟く。
その時。
「無さん」
No.2だった。
「少し、お話ししませんか?」
代表室。
白い部屋。
紅茶の香り。
No.2は静かに笑う。
「驚かれましたか?」
「うん」
「そうでしょうね」
男は寂しそうに微笑む。
「私は誰も縛っていません」
「皆、自分で選んでいます」
「私はただ」
「居場所を与えているだけです」
無は男を見る。
「そうか」
「はい」
「家族か」
「ええ、そうです」
「皆、大切な私の家族です」
No.2は幸せそうだった。
本当に。
心から。
「無さん」
「貴方も1人でしょう?」
「うん」
「寂しくありませんか?」
「分からない」
No.2は優しく笑った。
「なら、ここにいませんか」
「私は貴方を救いたい」
「無さん」
「貴方は特別です」
『2』
黒い数字が脈打つ。
「私は」
「貴方だけは」
「必ず救ってみせます」
無は男を見つめる。
「……」
そして。
「そうか」
「ありがとう」
No.2は嬉しそうに笑った。
しかし。
無の胸の奥。
あの少女。
泣いていた母親。
苦しそうな顔。
『代表様が悲しむから』
その言葉が。
何度も。
何度も。
頭の中で繰り返される。
「……」
「悲しい」
初めてだった。
自分の感情に。
名前をつけたのは。
その瞬間。
世界から音が消えた。
No.2の笑顔が止まる。
『2』
黒い数字が。
大きく脈打った。
男は目を見開く。
「……え?」
「まさか…」
「無さん……?」
静寂。
理の世界。
その入口が開き始めていた。
今後もよろしくお願い致します。




