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『戦国姫の脳内戦略会議』  作者: れんれん


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233/243

213話 初めての里見領

海は穏やかだった。

港には多くの船が並ぶ。

和船、商船、そして背の高い異国の帆船。

南蛮船である。

その光景を見て

織田信長

は足を止めた。

港には人が溢れている。

商人。

漁師。

職人。

子供。

そして――

笑っている。

信長はそれをじっと見ていた。

(騒がしい)

(だが……)

(良い騒がしさだ)

港では荷が降ろされている。

香辛料。

薬草。

ガラス。

布。

鉄。

そして米や魚が別の船に積まれていく。

信長は呟いた。

「戦の港ではないな」

その横で案内しているのは

里見桜

そして

まな姫

だった。

桜は微笑む。

「戦の為の港ではありません」

「暮らす為の港です」

信長はその言葉を聞きながら歩く。

港の商人が頭を下げる。

だが怯えてはいない。

信長はそれに気付く。

(恐れていない)

(織田の名を聞けば)

(震える者も多い)

だがここでは違う。

ただの来客のような扱いだった。

信長の胸に奇妙な感覚が生まれる。

(これは……)

(力ではない)

桜は歩きながら説明する。

「南蛮船は月に何度か入港します」

「薬や硝子、技術書などを持ってきます」

「こちらからは銀や海産物、布を」

信長は聞いている。

だが半分は別のことを考えていた。

(戦をしなくても)

(国は豊かになる)

それは理解していた。

だが

ここまでのものを見るのは初めてだった。

港の市場を通る。

声が飛び交う。

「安いよ!」

「新しい香辛料だ!」

「薬草が入ったぞ!」

子供が走る。

魚を抱えた少年が笑っている。

信長は思う。

(戦場では)

(子供は泣く)

(ここでは)

(笑っている)

その横で

桜は信長を見ていた。

(見ている)

(ずっと)

桜は思う。

(この人は)

(全部を見ている)

建物。

人。

動き。

物の流れ。

まるで

国そのものを観察しているようだった。

桜の胸に緊張が走る。

(やっぱり凄い)

(この人は)

(戦だけの人じゃない)

まな姫も横で歩いている。

(すごい迫力)

(近くにいるだけで空気が重い)

だが同時に思う。

(でも)

(桜の話はちゃんと聞いてる)

それが少し安心だった。

三人は町を歩く。

鍛冶屋。

織物屋。

薬屋。

人が働いている。

信長が言った。

「税は?」

桜は答える。

「低くしています」

信長は眉を上げる。

「低く?」

桜は頷く。

「ですが」

「交易量が増えます」

信長の頭の中で計算が走る。

(なるほど)

(量で取る)

信長は小さく笑った。

「面白い」

桜は少し驚く。

信長は続ける。

「西では」

「城を落とす」

「土地を取る」

「金を取る」

信長は町を見渡す。

「だが」

「ここは違う」

信長の心の声。

(取っていない)

(作っている)

それが理解できた。

まな姫が言う。

「戦がないと」

「町は育つんです」

信長は黙る。

そして思う。

(西を統一した後)

(どうする)

それは最近考えていたことだった。

天下を取る。

だが

その後は?

信長の思考が動く。

(天下とは)

(戦を終わらせることか)

港に戻る。

夕日が海を染めている。

南蛮船の帆が赤く光る。

信長はその光景を見ていた。

(もし)

(西を統一した後)

(このような港を)

(十)

(いや百)

作れたなら。

国はどうなる。

信長は思う。

(天下とは)

(支配ではない)

(仕組みか)

横で桜が海を見ている。

桜の心の声。

(この人は)

(理解してくれる)

(きっと)

(戦を終わらせる力がある)

桜はまだ14歳。

だが見ていた。

歴史の分岐点を。

信長が静かに言った。

「桜」

桜が振り向く。

信長は海を見たまま言う。

「西を統一した後」

「また来る」

桜は少し驚く。

信長は続ける。

「その時」

「おぬしの話を聞こう」

桜は笑った。

「はい」

その横で

まな姫は思う。

(この二人)

(天下の話してる…)

(しかも普通に)

夕日が沈む。

その時

信長の中で

一つの考えが形になり始めていた。

戦で取る天下から

豊かさで続く天下へ

それはまだ

誰も知らない構想だった。

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