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『戦国姫の脳内戦略会議』  作者: れんれん


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208話 鉄の海 ― 信長の決断

敗報が届いた。

第一次木津川口の戦い。

織田水軍は、瀬戸内の覇者である 村上水軍 と

毛利氏 の連合艦隊に敗れ、

石山本願寺 への兵糧輸送を許した。

安土城。

報告を聞き終えた

織田信長は、しばらく黙っていた。

家臣たちは沈黙する。

海戦での敗北は珍しいことではない。

だが、この敗北は戦略上大きかった。

やがて信長は口を開く。

「海の戦は、あやつらの土俵ということか」

誰も答えない。

瀬戸内海での戦いは、長年海を支配してきた村上水軍の独壇場だった。

船の操り、潮の読み、接舷戦――。

どれも織田側は経験が浅い。

だが。

信長は静かに笑った。

「ならば」

「土俵ごと変える」

家臣たちが顔を上げる。

信長は一言だけ命じた。

「鉄で船を覆え」

その場の空気が凍りつく。

前代未聞の軍船

命を受けたのは、織田水軍の将。

九鬼嘉隆。

彼は一瞬、言葉を失った。

鉄で船を覆う――

そんな船は聞いたことがない。

しかし嘉隆は頭を下げた。

「御意」

信長は続ける。

「火矢は効かぬ」

「銃も効かぬ」

「矢も通らぬ」

「そんな船を作れ」

「そして大砲を積め」

それは、戦国の海の常識を覆す命令だった。

伊勢の造船

船の建造は伊勢で始まった。

巨大な船体。

厚い木材。

そしてその外側に張られる――

鉄板。

鍛冶職人が集められる。

木工職人。

船大工。

鉄を打つ音が昼夜響いた。

職人たちは最初、半信半疑だった。

「船に鉄?」

「沈むのでは?」

だが設計を重ね、重量を分散させ、

巨大な安定した船体が形になっていく。

やがて完成した船は――

六隻。

巨大な戦艦。

後に「鉄甲船」と呼ばれる。

信長の視察

完成の報せを聞いた信長は自ら港へ向かった。

海に浮かぶ黒い巨船。

船体には鉄板。

矢は弾かれる。

火矢も燃えない。

家臣が言う。

「殿」

「まるで動く城です」

信長は船を見上げながら言った。

「城ではない」

「海の覇者だ」

そして九鬼嘉隆に命じる。

「出せ」

「毛利水軍を叩く」

再び木津川口

1578年。

再び戦場となるのは

木津川口。

毛利水軍は再び本願寺へ兵糧を運ぼうとしていた。

船団が大阪湾へ入る。

そこに現れた。

黒い巨大船。

毛利水軍はざわめく。

「あれは何だ」

近づく。

そして矢を放つ。

だが――

弾かれる。

火矢。

燃えない。

その瞬間。

轟音が響いた。

大砲。

鉄甲船から砲撃が放たれる。

毛利の船が吹き飛ぶ。

村上水軍は初めて理解した。

「近づけぬ」

接舷戦ができない。

砲撃で船が沈む。

毛利水軍は崩れた。

兵糧船は突破できない。

織田水軍の勝利。

これが

第二次木津川口の戦い。

本願寺の補給は完全に断たれた。

信長の戦争

勝報が安土に届く。

家臣たちは興奮していた。

「海を制しました!」

信長はただ一言。

「当然だ」

そして西を指差す。

「次は毛利だ」

その頃、中国地方では

豊臣秀吉

が毛利を追い詰めていた。

戦国最大の戦争は、

ついに終盤へと向かい始める。

その報せを聞く桜

里見領。

桜は南蛮船の甲板で報告を聞いていた。

(鉄の船)

(信長らしい)

海の覇権。

交易。

兵糧。

桜の脳内戦略会議が動く。

(これで西の戦は)

(さらに加速する)

(問題は)

その視線は東へ向く。

(戦が終わる前に)

(平和の形を作れるか)

桜は静かに呟いた。

「時間がない」

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