表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マレーン・サーガ 祝20000PV達成  作者: いのそらん
第17章 はじめての町
264/266

はじめての町 その28 ミルシアとニャ族

 サラも明らかにミルシアの話を聞いて、一層顔をしかめるのだった。


 確かに、マレーン王国は、一夫多妻制や、めったにないが一妻多夫制も認められている。

 ただ、限度はある。実際には、いかに公爵家とはいっても、正妻が1人で、他に数人の側室、お手付きになった妾が1、2人が限度である。

 外聞も悪いし、また子供が増えすぎてしまって跡目争いも激しくなってしまう。相手が妾であれば、庶子も増えていってしまうことであろう。

 それは、統治する者としては問題となってしまう。


 それを、屋敷が女人ばかりで、しかもそのほとんどがそういう関係にあると・・・。

 常識という枠を超えて、既に異常である。

 それでも、同衾、あるいは褥を共にしない者には、1日に3回も時間をかけて口説いているという。


 幼い頃にオルレンに会った時、すでに生理的に受け付けることができなかったが、ミルシアの話を聞くほどに、


『やはりあの男は無理だ』


 と、ルルテは背筋に冷たいものが走るのを感じた。


「しかし、全員を囲っているのでしょう?それなら良いところもあるのではなくて?まあ、『気持ち悪い』というのはその通りでしょうけど・・・。」


 ルルテが、ミルシアの真意を再び問う。

 言葉は完全に素に戻ってしまっていた。


 確かに、異常な男に付き合うのは気持ち悪い部分もあるかもしれないが、それでも将来は公爵の当主を約束されている男だ。

 適当にこなして、将来的に安定した生活を手に入れることもできるだろう。

 そんな思いからの問いだ。


 ただ、ガリンとの関係がまったく進んでいないにも関わらず、こういう話題だけは妙に詳しい自分に、ほんのわずかに頬が熱くなる。

 貴族の子女は大抵は耳年増だが、自分もそうであるとの自意識が、胸の奥で熱をもったのだ。


 隣のサラが、そんなルルテを見て、呆れたように頬を引きつらせていた。

 サラには、やはりどうしても理解できない世界のようである。


「王女殿下。わたしは、『ニャ族』でございます。名前も、ミルシア・ニャーンでございます。『ニャ族』には掟がございます。優秀な子種以外には興味はありません。」


 いろんな意味で、ルルテ、サラ、ガリン、ストレバウスが固まった。


「『ニャ族』とはなんさね?」


 サラが、引きつり気味の顔のまま尋ねる。


「わたしたち猫系の獣人は、本来は言葉の語尾に『にゃ』をつけるのが掟なのです。」


「は?」


 サラが聞き返す。


「わかり難いですよね。たとえば、


『わたしの名前は、ミルシアにゃん』


 とかですね。

 これは、語尾が『にゃ』から『にゃん』に変化した語尾にゃ活用となります。」


 ルルテは、王女として冷静であろうとしたが、

 あまりの衝撃に思考が一瞬止まり、どう反応すべきか迷う。口調もすっかり崩れてしまう、今だ素の少女のままだ。


「え?ミルシア、それは本当なの?何かの冗談ではなくて?」


「何言ってるにゃ?大真面目にゃん。」


 再び場が固まる。いや、既に凍り付いている。


「で、ミルシア殿。言葉遣いも随分ぞんざいな言葉遣いになっていますが、それは?」


 ガリンも、ルルテとサラに制止されていたのを忘れて口をひらいた。


「『にゃ』をつけることで、もう十分に丁寧で、洗練されていると『ニャ族』では考えているのです。」


 ミルシアの口調が元に戻る。


「でも、今ミルシア殿は、『にゃ』?止めましたね。いいのですか?」


「いえ、その、わたしは、ちょっとこの『にゃ』が恥ずかしくて・・・。」


「そうですか?わたしは、猫という動物そのものに興味がありますが。」


 ミルシアの目が輝く。

 自分の種族に興味を持ってくれる者がいるという嬉しさが、表情から零れ落ちそうである。


「わたしは、ニャ族の初代様と同じ、『純和風三毛猫』の流れを汲んでおります。もっとも正統な血筋と言われております。」


 そして、いつのまにか顔をあげていた。

 その頭には、先程までなかった、右が白と左が黒の小さな耳のようなものがついており、こめかみの上の人としての耳は消えていた。

 また、膝をついて後ろに突き出すようになっていた臀部には、茶褐色と黒の縞になった尻尾が揺れているのだった。


「!?」


 ルルテが、それを見て小さく声をあげた。


「あなた・・・耳と尻尾が生えているわよ!?」


 まだ、ルルテの王女らしい口調は戻っていない。


「ルルテ、レイレイも覚醒していれば出し入れができるのです。他の種族でもできるのは、それほど驚く必要はないのかもしれませんね。」


 ガリンの冷静で落ち着いた考察が語られる。


「いや、ガリン。あんた何言ってるさね。竜と他の種族は違うさね。そもそも猫ってどんな種族なんさね。ニャ族なんか、辺境でも聞いたことないさね。」


 ミルシアがサラを幾分厳しい視線で凝視する。


「あきらかに人族ではない人には言われたくありませんが、由緒正しい種族ですので、卑下するのはやめて欲しいです。」


「ちっ・・・。」


 サラが舌打ちをする。

 ルルテは、一瞬だけサラに視線を向けたが、何事もなかったかのようにミルシアに再び向かい合い、咳ばらいをした。


「で、そなたは、優秀なこ、こ、子種と申したが、それは優秀な伴侶をという意味で合っているのか?」


 多少噛んでいるが、ルルテの口調が王女のものに戻った。


 ミルシアは、ルルテの言葉に大きく頷いた。


「そうです。オルレン様は、確かに性癖はどうかとは思いますが、悪い主人ではありませんでした。しかし、伴侶とできるかというと、やはり・・・。」


「うむ。まあ、アレだしな・・・。」


 なぜか、ここでルルテとミルシアが同期する。


「しかし、ミルシア殿。先程の貴女の話では、獣人は同種族としか子を為せないのでは?そもそもオルレン殿は、そもそも対象外ではないのですか?」


 ミルシアが不思議そうな顔で、ガリンを見返す。


「先程まで、この部屋にいたドラゴニュートは、あなたと竜の子ではないのですか?遺伝子融合で子を為すのは普通ですよ?」


「えぇ?」


 珍しくガリンが、ミルシアの言葉に動揺して言葉を詰まらせた。

 胸の奥では、


『まさか、ここで遺伝子融合の技術が・・・。』


 という抑えきれない興味が静かに膨らんでいた。


 もちろん、好奇心に支配されたガリンを放置すれば、ミルシアが口にした『遺伝子融合』の話を掘り下げ始めてしまう。

 それは、この場でする話ではないし、またルルテもそんな話は聞きたくない。

 もちろん、同席しているサラにしても、ストレバウスも同じ気持ちのはずだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ