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マレーン・サーガ 祝1.8万PV達成  作者: いのそらん
第17章 はじめての町
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はじめての町 その7 宿での夕食

 宿に戻ると、ジレが予め宿に伝えておいた味付けで、夕食ができあがっていた。


 マレーン文化圏では、一般の国民が2回、貴族やそれに連なる者が、その環境により2回~3回である。

 特に身分の高い貴族であれば、午後にお茶を飲む時間があり、その時にも軽食を食べることが多いため、もう1回増える。


 ジレは、旅に出てからも、この習慣をかたくなに守っていた。

 もちろん、自身がではない。


 王族であるルルテに対してである。

 また、レイレイもその習慣が身に付いているため、同じように3度の食事と1度のお茶の時間を毎日過ごしていたのだ。


 傭兵には、そんな習慣はない。食える時に喰う。それだけだ。大抵は2回。そして夜の1回は酒が入る。

 最初の1日で、食事の度に旅の歩みを止めようとする3人に、サラはイラつきを隠すことが出来なかった。

 そのため最終的には、3度の食事はサラが折れたが、1回のお茶の時間は、ガリンに不可視の結界を掛けてもらった上で、3人は風力車の上に乗ってお茶の時間を嗜むというルールとなったのだった。


 今日は、丁度お茶の時間に宿を出てしまったため、お茶を飲むことは出来ていないが、傭兵斡旋所までの行きの道すがら、露店ではちみつ掛けの焼き菓子を何枚も食べているので、それも含めれば、今日もしっかりと習慣は守られているとも言えた。


 そのため、レイレイはおやつに関わらず一定量を食べるためそうでもないが、ルルテは夕食はかなり少食だ。

 ジレも、ルルテとレイレイに合わせておやつを多少口にしてしまうことも多く、夜は食べる量は少な目だ。

 それに対して、サラやストレバウスはそうではない。この2人はかなり食べる。

 まあ、ガリンは体格としては小太りに近いとは思うのだが、食事をとる量は少ない。


 一度サラが、食事量が少ないガリンに対して、


 『そんな少ししか食べないのはどうしてだ?』


 と聞いたことがあったが、ガリンは、


 『血液中の糖分が増えると眠くなるのです。』


 と、サラにはまったく意味がわからない返答をされて、それ以上聞くのをやめたということもあった。


 とにかく、それを踏まえたうえで、ジレは店に食事量やその好みなどを伝えていたのだ。

 また、食事は最上階の空いている2部屋の内の1つで集まって食べることとなった。


 一行が宿についてその部屋に入ると、机の上には、色とりどりの食事が並べられているのだった。

机の上には、色とりどりの料理が整然と並べられていた。


 大皿には、麦と刻んだ根菜を煮込んだ淡い香りのツァイが湯気を立て、その隣には、香草と塩で軽く味付けされたダチョウ肉のローストが薄く切り分けられている。

 焼きたての小麦パンは表面が香ばしく、バターを添えるだけで十分な甘みがあった。

 さらに、山羊のミルクで煮た白いスープや、酢と果実を合わせた爽やかな香りのサラダも並んでいる。

 レイレイのためだろうか、小皿には栗とくるみを蜂蜜で和えた甘味もあった。

 旅の途中とは思えぬほど、貴族の食卓らしい彩りだった。

 

 それらの並べられた食事を見たルルテは、満足したように頷き、他の面子は、


 『さすが貴族御用達』


 と、驚くのだった。

 

 ガリン達は、王都を出てから、まず慣れない旅で疲れていた。そして、さらに慣れない3日の野営を過ごした後である。さすがに疲れが出てしまっていた。

 これはサラも同様だった。今までも、カカノーゼと長いこと過ごした傭兵団で新人の育成に関わったことはあったが、それらの新人は、傭兵としては新人でも、それなりには旅慣れていたのだ。


 それに比べ今回は、サラを除く全員が貴族位、あるいはそれに準ずる役職位を持っており、旅そのものが初めてだった。それだけではない。そもそも一般的な国民、つまり町での生活そのものの知識がほとんどないのだ。

 サラは、思わず肩を回した。3日間、気を張り続けた肩の重さがようやく自覚できるほどだった。


 幸い、ガリンが今日は自分たちが使っている4部屋全体を防護結界で守ってくれるという。あの結界なら、そう簡単に破られることはないだろう。

 ガリンとの付き合いは1力期(90日)程度しかないが、それでもそのぐらいの信頼ができるほどには、共に過ごしてきていた。だからこそ、ガリンの力を知っていた。過信しているわけではないが、ここはまだ王都から近い。兵士の数も多い。また、宿自体にも警備をしてくれている傭兵が数人いる。これなら、今日1日ぐらいはゆっくり寝ても安心というものだろう。

 サラは、久しく感じていなかった『守られている側』の感覚に、ほんの少しだけ気安さを感じていた。


 そして、死んだように眠った6人は、この日の夜は何事もなく過ぎ、朝を迎えるのだった。


 サラは、自分の部屋をノックする音で目が覚めた。普段なら、ノックの音で即座に短剣へ手が伸びる。しかし今日は、身体が重く、反応が一拍遅れた。


 サラは、綿と麻で織り込まれたギャンベゾンに、心臓を守るための胸のアーミングタブレットを付けて、ノックされた扉へ向かった。下半身は何もつけず、ギャンベゾンの裾で隠れているだけだった。傭兵団にいた頃から、朝はだいたいこんな格好だった。


 扉を開けると、燕尾服に身を包んだ宿の受付の年配の男性が頭を下げて待っていた。

昨日の受付の時に、


『何かあれば、滞在中は自分が担当のコンシェルジュである』


 と紹介された男だった。

 顔を上げた男は、サラの格好を見て一瞬だけ驚いたが、すぐに表情を穏やかなものに戻すと、


「お客様方に、2つの知らせが届いております。この場でお伝えしてもよろしいですか?」


 そう言って、再び軽く頭を下げた。


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