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マレーン・サーガ 祝1.8万PV達成  作者: いのそらん
第15章 王都出発
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王都出発 その3 2回目の初日の出


 ようやくガリンにとっては辛い晩餐の時間が終わり、ルルテはガリンに、今年はレイレイと3人で初日の出を見ることを提案したのだった。


 本来はセルやジレも誘いたかったらしいが、これだけ食べ散らかした後である。どうしても後片付けもあり、参加は出来ないとのことだったらしい。その代わり、初日の出を見る頃にお茶をもって来てくれることを約束してくれたとのことで、ルルテも上機嫌になっていたのだった。


 去年はルルテの部屋で、窓辺に2人で立って初日の出を見た。今年は、庭の円卓の周囲を冷気を完全に遮断する結界を張った上で、庭のテラスで初日の出を見ることになったのだ。


 去年は2人だったが、今年はレイレイを入れて3人。セルやジレがお茶を持ってきて、少し一緒に初日の出を見れるかもしれない、というルルテからの話もあり、大人数が座れる場所にしたのだ。


 離れとはいえ城内に大規模の結界を張ることもあって、先程レンに意伝石を使って連絡をし、許可をもらったのだ。レンには、


 「初日の出を見るために、そんな大規模な結界を張るなんて話、初めて聞いたわい・・・。」


 と、呆れられたがルルテが一度決めてしまえば、簡単には説得するのは難しい。そのことはレンも知っていたため、許可に関してはすぐに戻ってきたのだった。そもそも、おそらく王国にいる晶角士で、単独で範囲結界を張れるのはガリンが唯一だろう。


 ガリンは、多くの文様術を扱うことができるが、その中でも得意としている文様術の1つがこの結界術なのだ。酒場でカカノーゼの斧を砕いたのも、防御結界の1つである。結界術とは、空間造成の1つであり次元接合門の管理にも通ずる技術で、もっとも単独で発動するのが難しい術の1つである。それを、文様と意思を放出するときの呪のみで最大効率で実行しているのだ。この呪が特殊らしく、レンでも聞き取れない言語で構成されているとのことだった。ガリンは古代語と言っていたが、少なくとも文献に残っているレベルの古代語ではないことは間違いなかった。


 結界を張る瞬間、ガリンはいつも、空気そのものが薄い膜となって張り詰めるような感覚を覚える。静かに、しかし確かに世界が形を変える一瞬だ。見えない壁が円卓を包み込むように広がっていった。


 結界術と合わせて得意なのが『変容』である。変容という言葉だけ聞くとなんのことだかわかり難いが、簡単にいうと『意思の力を別の形に変える』というものになる。基本、元力石に彫られた文様は、意思の力を物理法則の補助に使われることが多い。剣を振るときの速度を早くしたり、物質の質量を軽くしたりがそれだ。


 剣速の加速は、方向として定められたベクトルに対してより加重を掛けて時間当たりの移動量を増やすという物理法則を利用し、剣そのものを軽くするのは、剣の周囲に局所的な結界を張り真空状態を創り出している。実際に剣の重さが軽くなるわけではなく、単に剣の周囲に重力の影響を受けない結界を1つ、剣を持っている手の周囲に真空状態に影響を受けない防護の結界をもう1つ張っているに過ぎない。これは、空間造成の技術の応用である。


 他にも変容とは、大気中の酸素の結合を変容させて水としたり、大気を圧縮して運動エネルギーを増加させ熱を生み出し、それを空気中の塵を固体化したものを発火させる、先史文明でいうところの化学に通ずるものでもある。ルルテの前で見せたことはないが、ガリンはそれらの文様を彫った元力石を使用した射杖を使っての攻撃も得意であったのだ。以前、学院でそれらの実験をして、実験場を灰にしたことがあり、それ以降はレンに厳しく禁止されていたのではあったが。


 今回、レンが大規模と言った理由は、1つは基本的には1人の晶角士では一定範囲の冷気を遮断するような結界は発動そのものが出来ないこと。もう1つは、自分の意思が放射できる範囲の結界と違い、数人が入ることを前提とした範囲結界は、複数の元力石を配置して発動しなければならず、簡単に彫ることができるような単純なものではないという2つの理由からだった。


 ガリンは、レンからみても離れ業といえるような結界を、ルルテに提案されてから用意をした。それも、たったひとりで結界を発動させたのだった。だからこその、レンが驚き、呆れたのだ。


 ルルテは、自分の部屋からテラスに出て、結界内に入ると、


 「温かいな。これは冷気を遮断しているだけなのであろう?なぜ温かく感じるのだ?」


 驚きながら、テラスの席に座ったのだった。外はまだ夜明け前で、空は深い藍色に沈み、遠くの地平だけがわずかに白み始めている。結界の外の寒さが、まるで肌で感じられるようであった。


 そして、レイレイとガリンを手招きすると、ガリンを左隣に、レイレイを右隣に座るように手で椅子を指さした。レイレイは、一瞬だけ悩んだが、ルルテの隣ではなく、ガリンの横に座ってしまった。ルルテは少し拗ねたが、これから始まる初日の出の方に気が向いたのか、そうそうにレイレイが隣に座ることは諦めたのだった。


 「ルルテ、冷気を遮断すると、その結界の中が温かく感じる理由を知りたいのですか?」


 ガリンが、ルルテに先程の疑問を確認する。


 「簡潔にな。長い説明は要らぬぞ。」


 ルルテは、そう注意を付け加えながら頷いた。


 「そうですか・・・。簡潔にですね。冷気の遮断は、温かい空気が外に逃げるのを防ぎます。また当然のことですが、冷たい空気が侵入するのも防いでくれます。これを物理的な法則で言えば、結界内の空間の熱損失を防ぐという表現になります。そしてこの結界は、食事を食べる前に張ったものであって、まだ空には陽がありました。陽光によって結界内の温度があがったものを今も維持をしているから、温かいのです。これならいかがでしょうか?」


 「・・・・。長いわ!」


 ガリンが、眉間に眉を寄せた。


 「つまりですね。えーと、そうですね・・・・。太陽の光に暖められた空気がどこにもいかず、今もこの中にあるからです。」


 「それだ!!やれば出来るではないか。」


 今度はルルテが満足したかのように、ガリンを褒めた。ルルテがガリンを褒めると、何故かレイレイもガリンに向かって手を叩いて拍手を送っているのだった。


 「レイレイ、おぬし、どこで拍手など覚えてきたのだ?」


 ルルテが尋ねると、レイレイは小さく首を傾げ、


 「ストレバウス・・・。」


 ぼそりとレイレイが言葉を発したのだ。


誤字脱字の修正。語尾の修正。初日の出の情景描写を1文追加。2026.3.23

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