表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マレーン・サーガ 祝1.8万PV達成  作者: いのそらん
第15章 王都出発
175/253

王都出発 その4 ルルテの新しい言葉


 レイレイが、屋敷に来てから人を名前で呼ぶのは初めてであった。


 「ガ、ガリン・・・。レイレイが人の名前を呼んだわ!」

 「そうですね。驚きました。」


 「いや、それだけではないでしょ?ストレバウスの名前を呼んだのよ?」


 ルルテの言葉が完全に素に戻っている。レイレイが、始祖ミアンの使い魔として覚醒していないときの発語はかなり珍しいので無理もないのだが、何をそんなに動揺しているのかがガリンにはわからない。


 「そうですね。ここ最近はストレバウスに剣術を教わっていたので、名前を覚えたのかもしれませんね。」


 あくまでも不思議はない、といった感じでルルテに理由を説明する。


 「いや、まずは、私の名前を呼ぶべきでしょ?」

 「あぁ・・・。」


 やっとガリンは得心がいった。


 「だって、培養している時からずっと、私は自分のことをアピールしてきたのよ?なぜ、今更ストレバウスが先なの?悔しいじゃない・・・。」


 ルルテが顔を真っ赤にして悔しがっている。


 「しかし、ルルテ。ストレバウスの訓練の時はずっと一緒に居たのに、訓練が終わるとレイレイにも構わずすぐに部屋に引きこもっていたではないですか?それでは親しみも湧かないのではないですか?」


 おおよそ『親しみ』などの概念からもっともかけ離れたガリンに、『親しみ』で指摘を受ける。ルルテは、さらに地団駄を踏んだ。


 「ルルテ。そんなことより、もしかしたら他の者の名前を呼ぶかもしれませんよ?」


 ガリンはルルテの子供っぽい仕草を無視し、建設的な提案をするのだった。


 「う、うむ。そなたの言う通りだな・・・。」


 口調が急に戻る。ガリンが、眉間に眉を寄せて苦笑いを浮かべた。


 「そなた、我を馬鹿にしておるのか?」


「いえ。そうではなく、器用だなと、感心しておりました。」


 「はぁ・・・。」


 ルルテが盛大にため息をついた。


 「まあ、良い。では、さっそく尋ねてみよう。」


 ルルテは、レイレイの正面に移動した。


 「レイレイよ。我の名前はなんだ?呼んでみよ。」


 命令口調である。レイレイは、きょとんとした顔をして、ガリンに視線を向けた。ガリンが、


 「ルルテ。そんな命令ではなくて、もっと何かないのですか?」


 またもや、いつも無礼極まりないガリンに指摘を受ける。ルルテは、少し口角をひくつかせたが、すぐに笑顔をつくり、


 「レイレイよ。我の名前をそなたの口から聞いてみたいのだ。良いか?」


 と、言い直したのだった。


 『大して変わりない』


 ガリンはそう思ったが、顔に出さずに頷いた。レイレイは、ゆっくりとルルテに視線を戻した。


 「ルルテ。」


 やはり、ぼそりと言った。


 「!!!!!」


 ルルテが、喜悦の表情で目を輝かす。


 「聞いたか?ガリンよ。我の名前も覚えておるぞ!」


 ルルテが興奮して叫ぶ。


 「そうですね。」


 ガリンもレイレイに笑みを返した。レイレイは、嬉しかったのか、ガリンを指差すと、


 「パパ!」


 と元気よく呼んだのだった。


 『またか・・・。』


 ガリンは苦笑いを浮かべるしかなかった。正直に言えば、ガリンはルルテに『パパ』と呼ばれるのが嫌なのではない。それを聞いた周囲からからかわれるのが嫌なのだ。今は、ルルテしかいないので良いが、特にレンには聞かれたくない。


 「ふむ。そなたの事は、依然パパと・・・。名前呼びの我の勝ちだな。」


 なぜか、ルルテが勝ち誇っていた。ルルテは、その後、調子にのっていろんなことをレイレイに問いかけるのだったが、それらに対しての発語はなく、ただ目の前に置かれたクッキーを口に詰め込んでいた。これを見てガリンは、


 『飲み物もなく、よく喉につまらないものですね。あ、でもクッキーの形が左右非対称ですね。焼きムラでしょうか・・・。』


 と、やはり的外れなことに気を取られていたのだった。


 そうして、ルルテからの一連の質問が終わり、そろそろ空に赤みが増してきており初日の出の時間が迫る頃・・・。ちょうどセルとジレがお茶を用意してテラスに現れたのだった。


 レイレイはジレが現れると、すぐにジレの横に移動してしまい、今度は、


 「ジレ!」


 と叫んで、ジレを驚かせるのだった。呼んだあと、レイレイは小さく首を傾げ、ジレの反応をじっと観察している。


 この新年第1日目を境に、レイレイは急に言葉を覚えていくのである。


 ルルテがお茶を持ってきたセルとジレを誘うと、2人とも少し困ったような顔を見せたが、結局、皆テラスの席についた。ストレバウスは、夜間であり既に自身の家に帰ってしまっているためここにはいなかったが、代わりの衛士が詰め所で警備に当たっている。日中よく顔を合わせ、旅にも同行するストレバウスと比べると、夜番の近衛たちはほとんど面識がないため、声は掛けなかった。


 全員が席につき、東の空をみると、ちょうど陽があがってくるのだった。ルルテは、美しい陽にその身体を染めて、うっとりするような笑顔を浮かべて空を見上げている。


 ガリンは、そんなルルテの横顔を見て、


 『今年もよろしくお願いします。』


 と、心の中で告げるのだった。


誤字脱字を修正。最新話の方では、レイレイのお馴染みの仕儀さとして「首を傾げる」を設定しているので、ここでもその仕草を追加。2026.3.23

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ