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マレーン・サーガ 祝1.8万PV達成  作者: いのそらん
第14章 旅の準備
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旅の準備 その18 鱗の巫女


 2階に上がった3人が部屋に入ると、ガリンの予想とは違って、そこは宿屋の寝室ではなく小さなテーブルと椅子が数脚とソファーが置かれている、ちょっとした会議室のような部屋であった。サラは椅子を2脚並べて用意すると、


 「そちらにお座りください。」


 恭しくそう言い、自分もテーブルを挟んで腰を下ろした。ガリンとルルテは勧められるまま椅子に座り、サラと向き合うのだった。


 「それでは、何からお話しましょうか?」


 サラがガリンに問う。ガリンは、


 「まず、その尊父というのは何のことか教えてもらえますか?」


 問い返す。


 「わかりました。」


 サラは小さく頷くと、話を始めた。サラはもう一度、ガリンとルルテに視線を向け、ゆっくりと目を閉じて思い出すかのように口を開いた。


 「まず、御身を尊父と呼ぶ理由ですが・・・・。」


 サラが丁寧な言葉で順を追って話してくれたのは、ある辺境の村に伝わる予言の話だった。その予言は村に古くから伝わるもので、サラ自身も誰が残し、どうして今も語り継がれているのかもわからないものだという。また、村でサラ自身は『鱗の巫女』と呼ばれる存在であり、その巫女の一生を賭した使命が『竜の鱗を持つ存在を探すこと』だというのだ。


 ここでいう辺境とは、マレーン文明の黎明期にさまざまな人体改造の結果産みだされた存在が最終的に隠れ住む里のことであり、その里はキメラではない原種の竜族達が治めている土地と言われていた。辺境は現在、どの国とも交流はなく、以前は天災のように竜が現れては村や田畑を襲ったこともあった。そのため竜は、マレーン王国でも敵性生物であると認識されていたのだ。ただ、竜は知性が高く、無下に人を殺さないことでも有名だった。実際、田畑を襲って収穫物などを持ち去ることはあっても、人的な被害が出たことはほとんどなかったのだ。


 竜が住むとされる辺境は貴重な鉱山が多く、金や銀、鉄、銅などが採取できた。また、マレーン文明の要である水晶石の鉱脈も数多くあり、どうしても採掘目的で辺境に立ち入る輩が絶えないのだ。普段は多少の採掘ぐらいは受け入れている辺境の民たちであったが、中には妖精族などの希少種を捕獲して売るような輩もいる。そのような事件が起きると、竜が天罰を下すとされていた。


 敵性生物と認定はしているものの、人の側にも明らかな非があることは確かであった。だからこそ王国は辺境を不可侵の地としており、無駄に争うことはしてこなかった面もある。現実問題として、辺境にはどのような種が存在しているのかも不明であったし、竜1体だけを考えても、かなりの軍事力を投入しないと対抗することはできない。それも不可侵の理由の1つではあった。


 サラは、自身がそんな辺境からやってきた『鱗の巫女』であるという。しかし、どう見てもサラは人にしか見えない。ガリンもルルテもどう反応してよいのかわからず、とりあえず頷き、話を聞くしかなかった。


 サラの話は長く、そして詳細であった。現状の里では竜族だけではなく様々な種族の『種の維持』が難しい問題が深刻になっており、それぞれの種の個体数も徐々に数を減らしているとのこと。また、なによりも辺境の主である竜の番がもう長い間おらず、次代の件が懸念されている問題などだ。そうなると、辺境以外にいる竜種を探す目的も自然と見えてくる。予言というよりは、切実な子づくりの問題である。サラの話がより深いところに進んでいく中、ガリンが一旦サラの話を手で制止した。


 「ルルテ、かなり長い話になりそうですね。しかも伝承や種の維持といった難しい話になりそうです。あちらのソファで休まれてはいかがですか?」


 ルルテの左手の手の甲の上から自身の手を重ねた。ルルテは少し頬を紅くして、


 「確かに、ちょっと難しい話をしてい・・・・。」


 と返答をし終わる前に、ルルテが意識を失うかの様に頭を垂れたのだった。


 「大丈夫ですか?」


 サラがガリンに心配そうに確認をする。丁寧なのは言葉だけではなく、おそらくサラは優しい性格なのだろう。


 「大丈夫ですよ。ちょっと話が難しくなりそうなこともありますが、やはり辺境の問題については微妙な話もありそうですしね。それに、レイレイ、先程見せた鱗の持ち主はレイレイのお気に入りなのです。きな臭い話に巻き込まれるのは本意ではないでしょう。」


 ガリンの返答に、サラは、


 「わかりました。しかし、先程のカイルの斧を防いだ技といい、今の眠りの精神干渉といい、鮮やかなものですね。」


 賛辞を贈った。


 「あなたは、あれが精神干渉などと知っているのですか?」


 「はい。私は精神干渉の術が使えます。」


 「術?」


 ガリンが聞き返す。


 「術です。」


 「それは、もしかして元力石を用いない、固有種としての能力のことですか?それを使用して人の精神に干渉できるということですか?」


 「はい。」


 サラが頷く。ガリンが目を丸くする。


 「元力石の文様術以外の方法で精神干渉を・・・。それはテレパスですか?」


 今度はサラが驚く。


 「テレパスという言葉を、どうして尊父が知っておられるのです?それは我らに予言と力を残してくれた神が残した言葉と同じです!」


 「・・・。」


 ガリンが無言でサラを見つめる。サラがガリンに手を伸ばそうとすると、今度はガリンが手でサラを押し留める。


 そして、自分の腕にもたれかかって寝ているルルテを抱きかかえるようにしてソファに移動し、そこに寝かせたのだった。サラは、ガリンのその一挙手一投足を惧れを抱いた目で追っている。ガリンはゆっくりと席に戻りサラに視線をあげると、


 「わかりません。私は、自分で時々わからない知識を持っているようなのです。実際に、私は遺跡で今の養父に拾われる以前のことは記憶がありません。まあ、特にその記憶にもこだわっておりませんのでどうでもよいのですが・・・。あなたの力が直感的にテレパスであるとわかります。もちろん意味も理解していますよ。ただ、それを知っている理由は知りません。」


 淡々と答える。


 「そうですか・・・。」


 サラもそれに対する答えを持ってはいない。


 「では、ルルテはあれで大丈夫でしょう。続きをお願いします。」


 サラは少しの間、無言で淡々と話をするガリンを見つめていたが、しばらくすると頷いて話を再開するのだった。


誤字脱字、語尾の修正。2026.3.16

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