こまけぇこたぁいいんだよ
「はあ〜、しっかし酷いヤツらだねえ。幾ら七号が人語を話さないからって虐殺するかあ? フツー。血の臭いでむせ返りそうだぜ。なあ、ミーナちゃんよお。うぉぇっ!」
「デンタータ。それ、あなたが言う資格ある? 遠くで見てた時早く混ざりたいって言ってたじゃない」
「こまけぇこたぁいいんだよ!」
ミーナは額の口のお喋りしながらキューとアルの周りを円を描くように歩く。ヒールの地面を叩く音が響き、そのたびにキューの鼓動は早まった。
「ドクターの命令で私たちを始末しに来たのかし、?」
「アル様がそれを知ってどうするのですか? どうせわかっているのでしょう。違いますか、リクコ様?」
「…………」
ミーナは描く円の外に居るリクコに向かい皮肉まじりにそう言った。その呼びかけにリクコは答えなかった。
八号ーーオクトはリクコの支配下にあった。その部下であるミーナは必然的に彼女の部下でもあるのだ。それならば面識もあるだろうし、少々込み入った話もしていたであろうことは想像だに難くない。
しかし、四面楚歌の現状を鑑みるとお世辞にも忠義心に厚いとは言い難く、寧ろ能動的に背いてる節すらあるのだ。飄々としているようで、その実熟考の極みとも言えるリクコの思考の内に、反因子をむざむざ置いておくことへの忌避感は余りあるに違いない。
それが意味するものーー。
「ずっと欺き続けてきたんですか? 従順な部下としてーー」
キューの怒気をはらんだ言葉に返ってきたのは、ミーナではなくリクコの淡々とした声だった。
「違うよ、キューちゃん。私は知ってたさ。ミーナとサヤが手に負えないってことも、オクトちゃんが裏でこそこそドクターに連絡をとっていることも……。私は……親、だからね。何でも知ってるのさ」
「チッ、ほざけェェェッ!」
デンタータの叫び声とともにミーナが駆けた。リクコを背負った変態マネキンはせまってくる彼女を避けようと跳躍した。
そうしてリクコを追い跳んだミーナは、中空で横からの強烈な衝撃を受け、地面に叩きつけられた。衝撃の瞬間凄まじい反応速度で以って強襲者の姿を捉え目を見開き、顔を歪めたのだった。
鋼鉄をも砕く伸縮自在な尾が鞭のようにしなやかに宙を揺らめいては勢いをつけ、対象物を無慈悲に破壊せしめる。
破壊の権化ともいえるそれが目にも留まらぬ速さで衝突してくるのだ。ヒトであろうとバケモノであろうとひとたまりもない。
ミーナとデンタータは吐血し、そうして自分がもう長くないことを悟った。
「やるじゃ……ねぇか、ブラコンの……くせによ」




