清々しいクズっぷりね
呼応はない。
「うそ……なんで?」
七号はリクコがN細胞を用いて創造した小鹿型の生命体である。元来リクコ以外の命令は受け付けないようにプログラミングされている。
街全体を通して数千体もいる七号を管理し、それぞれに適した命令を出すのは骨の折れる作業であって、平たく言えば面倒くさいのである。だから、ある程度は自動化させてはいるものの、そこに他の意志が介入する余地はなく、矢張りリクコの采配によるところが大きい。
先達てユキノの起こした事件は七号オリジンと自身をナノマシンで接続することで同期し他の七号を一時的に操っていたのであるが、かかる負担が大きいことや暴走気味のオリジンの安定化が図れなかった為頓挫したのだ。
そもそもオリジンはもう燃えてしまって居ないのだから、不可能なのである。
リクコが狼狽していると、ドクターがその疑問に応えるように愉快な声を上げた。
「君も薄々勘づいているんじゃあない? ……君にできることがぼくにできないはずがないってことにさ」
「だって、ななちゃんたちは私のーー」
「私の……何だい? そんなものは書き直せばいいだけの話さ……頭いいんだから分かるでしょ?」
ドクターが虚空に向かってそう言うと、一体の七号が降りて来、彼に頭を垂れた。忠誠の印である。
次いで跪くミレイの側面に立ち、尻を向けると後脚で彼女の脇腹を蹴り上げ、吹き飛ばした。
転げ回り吐血する彼女は苦痛に顔を歪ませながらもまた元の姿勢に戻る。
それほどまでにドクターの「命令」の効力は凄まじい。
「見てよ六号、あの無様な姿。イケてると思わない?」
「ええ、清々しいクズっぷりねドクター。マザーのところで実験だけしていればよかったのに」
ドクターがニヒルな笑みをもらす。リクコは全身に悪寒が走り、無いはずの左腕が痛くて仕様がなくなった。
「ぼくはね六号。街を管理しろとは言ったけど、好きにしてもいいなんて一言も言ってないんだよ。それを今まで不問にしてたのは、実に君の働きが有益だったからだ。でも、もう違う。君は陰でこそこそ動いてぼくの邪魔をした」
「リクコ……そいつの声に、耳を傾けちゃーー」
「喋るな畜生」
ミレイは言葉すらも剥ぎ取られ口籠しかなくなってしまった。それを見、リクコがドクターを睨め付ける。
「飼い主に牙をむく畜生は殺処分と相場が決まっているのに、友達ごっこで気を紛らわせようとしたりヘイトを自分に集めてぼくから遠ざけようとしたりさ。莫迦すぎて反吐が出る。……もうさあ、邪魔だから死んでくれないかなあ? 六号」




