じゃあ冥土の土産ってことで
「今から殺そうって相手に、朗報もなにもないでしょう」
「んー、それもそうだねえ。じゃあ冥土の土産ってことで教えてしんぜよう」
リクコは言いながら辺りをうろつき、先程ミレイが吹き飛ばされた際、巻き添えで破壊されたマネキンの一部を拾い上げ大事そうに抱えて撫で、そっと元の場所に戻した。
そして、ケラケラと笑うとミレイに背を向け、
「実はねえ、キューちゃんとノリノリの居る病院って……オクトちゃんの根城なんだよねえ」
「なっ……何言ってるのよっ! そんなはずないわ。何度も索敵は行ったし、不審な影なんて見えなかったもの」
ミレイは前のめりになってリクコに問いただした。
「でなきゃ困るよお。その為に対策したんだからさ。まあ『ミレイの居る内は絶対に寸分も動くな』っていう命令しか出してないんだけど」
不動を貫くことで生物として認識させないようにした、と簡単に言うけれども少しでも動けば即座に居場所を特定され、頓挫するのは明白だ。
リクコが余程オクトらを信用しているのが、そのことからよく窺えた。
対して、自分はまごうことなき敵として認知されているのだと結論せざるを得なく、ミレイはただそこにある現実に打ちのめされ、哀しくなりうな垂れる。
目を開けているのすら億劫になった。
暗闇の中、リクコの声が聞こえる。
「ああ、でも安心してね。オクトちゃんや従僕の二人には、客人に手を出すなって伝えてあるから」
「……人質ってワケ? 意味ないじゃない。私殺されるのに」
「あいや、全く。うっかりしてましたわ。テヒペロ。死んじゃうんだものねえミレイさんは」
どこまでもコケにしたようなリクコの言い様を聞いてミレイの中で何かが弾けた。
この愚妹にはほとほと呆れてしまった。
弱いからと斟酌して驕り高ぶったことを後悔させてやる。
ただで殺されてなんかやるものかーーずたずたに引き裂いて、切り刻んで、噛み砕いて……そうして殺してやる。
もうこの世界のことなどどうでもいい。
きっとキューやノリは既にオクトらの手によって害され殺されていることだろう。だったら私が頑張る必要なんてどこにもないじゃないか。結局贖罪は出来ず終いだ。でもそれで構わない。あの子たちの中では私は気の良いお姉さんのままでいられたのだから。
ーー私は、ただのケダモノだ。
狡猾で傲慢で、どこまでも利己的なーー。
ミレイはのそりと立ち上がる。
その双眸は真っ直ぐにリクコを捉えていた。




