自分だけは許されるなんて都合のいいこと考えてないよねえ
「あなたはキューやノリが大切じゃないの?」
「大切さ。でもそれとこれとは話が別。知っているでしょう? あの兄妹を引き剥がしたのが一体誰なのか……もしかして、自分だけは許されるなんて都合のいいこと考えてないよねえ」
リクコが完全にミレイの方に向き直って、ニヒルな笑みを浮かべ、冷たく言い放つ。
「ちがっ! 私は……私は、そんなことーー」
「どうだかねぇ? 面倒見のいい姉を演じて、教えなくてもいいことペラペラ喋って、贖罪を果たしたつもりなのミレイちゃん? 結局一番言わなきゃいけないことは自分自身に忖度して言わず終いじゃないのさ」
「うるさいっ!」
ミレイの怒号に周囲のマネキンがいっせいに振り向く。体の向きに関わらず頭部だけがギィと厭な音を立て、まるで彼女を責めるかのように、ただ無言でその感情のない双眸を一点に集めている。
「おやおや、オーディエンスの皆さんは大層ご立腹のようだね。そりゃあ、そうだ。嫌われたくないがために自分のやったことは棚に上げて知らんぷり。悪いことはドクターや私になすり付けてハイ終わり。いやあ、笑える嗤える」
リクコの目が周囲のネオンの光を反射して煌々と光る。その光が元来の紫の瞳が強調し、ある種の神々しさすら纏っていた。
見透かされている。
ミレイは一歩後退った。
「……本当は、病院でキューが起きたときに言うつもりだったわ。でも、どうしても言葉が出てこなかった。兄妹仲を引き裂き、あなたをヒトから遠ざけるその手伝いをしてしまったーーただそう言えばいいのに」
「なるほどノリノリやユキノは上手く懐柔したみたいだけど、キューちゃんはどうかなあ? キューちゃんにとっては、ミレイは悪の大幹部ということになる。憎くて憎くて仕様がないだろうね。あの子はあれで結構激情に流される質でね、いつもの親密な顔がだんだんと歪んでいって敵意と殺意に満ちるまで時間はかからないかもね」
「だったらリクコはどうなのよっ! あなただってーー」
「私? ケヒヒッ、面白いこと言うのねミレイは」
その時、漸くミレイは気付いた。
周囲一帯を囲まれているという事実にーー。
七号である。探知してみると軽く三百は居る。
七号はリクコの配下だ。一体一体は大したことはないが、数が多いのでミレイ一人で太刀打ちできるような相手ではない。その上、眼前に居るリクコをどうにかしようなどと、考えることすらおこがましい。
完全な劣勢でありながら、ミレイは爪を立て、牙を見せて威嚇していた。
ミレイのその姿勢にリクコはほう、と感心し破顔すると、やれやれといった風に首を二三度振って言った。
「私はただ、みんなと楽しく過ごせればそれでよかったのにねぇ。まあ、そうそう上手くいくもんじゃないか、残念だよ…………お姉ちゃん」




